表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

明日に向かって

ようやく更新です!

お付き合いくださり、ありがとうございます。

晩酌も終わり。

雄一は使った食器を食洗機に入れ、ボタンを押す。

どこか酔い足りないような、重い気分が残っていた。

「ポピー、散歩に行くか?」

起き上がりこぼしのようにポピーが勢いよく跳ね起き、ギラリと目を輝かせた。

あまりの変わり身の速さに、雄一は思わず、小さく吹き出す。

美代子は「風邪ひかないでね」とだけ告げて、仕事部屋へ入っていった。


1人と1匹で、いつもの定番コースを歩くことにした。

冬の冷たい空気が、鼻から脳へ刺さるようだ。

勢いよく歩くポピーに引っ張られながら、住宅街を抜け、少し小高い丘の上にある公園を目指す。

すれ違う人もおらず、窓の明かりが少なく見える。

静かだ。


……数か月前にアサインされていたプロジェクト。

揉めた時の景色や言葉が、もう何度も頭の中で再生されていた。

たまたま視察に来ていた古参の役員の前で、責任者の後藤部長に食って掛かったのだ。

きっかけは、部下の些細なデータ不備。

でも、もう限界だった。

「私たちは、ただ、本来の仕事をしたいだけなんだ」。

自分が代表するわけでもないのに、余計なことを言った、という反省はある。

黙っていれば、こうして筋の通らない責任を背負わされることも、無かっただろう。


 たどり着いた真夜中の公園は、曇った外灯に照らされたブランコと滑り台だけが、静かに佇んでいた。

ポピーが自由に動けるよう、リール式のワイヤーリードを長く伸ばすと、隅のほうにある草むらに鼻面を突っ込みながら、丁寧に臭いを嗅ぎ取っていく。

 ほろ酔い気分で改めて見渡せば、まるでゲームの世界にでも迷い込んだ気になってくる。

「定番は、ここからゾンビが襲ってくるか。それとも幽霊かな」

 こんなことを言い出そうものなら、美代子なら間違いなく、ただちに帰ると騒ぐだろう。

 鈴花はどうかな。案外、一緒に楽しんでくれるかもしれない。想像力の豊かな優しい子だ。


 しかし、最後に、この公園に一緒に来たのは、いつだっただろう。

最近はあまり構ってやれていなかった。

小さな背が、見るたびに伸びているのに。

そのうち、気づいた時には、俺の方が構ってもらえなくなるのだろうか。


 生まれた時は、あんなに小さかったのに。

初めて見たくしゃくしゃな鈴花の顔と一緒によぎる、懐かしい声。

…いかん、いかん。君の声を思い出すのは、気持ちが弱っている証拠だ。

鼻息を荒く吹き出して、雄一は手早くリードを手繰り寄せた。


 公園を後にして、家路へと急ぐ。

冷え込んできたから、近道にしよう。

住宅街へと続く裏道をたどると、旧街道が横たわっている。

そのまま渡ろうとするポピーを引っ張って押さえ、小さな横断歩道の前で足踏みして待つ。


 ポピーと出会ったのは、3年ほど前だったか。

あれから毎日、眺めているわけだが、毎日、いちいち可愛い。

これは一体どういう仕組みなのだろうか。

何か、おかしな成分でも発散していないか。

丸い頭、黒い三角耳、茶色いマロ眉と、つぶらな瞳。黒く揺れる背中、先が白いしっぽ。

「今日も可愛いな、ポピー」

思わず声に出すと、可愛いの塊が「そんなことは当然です」とでも言わんばかりに、また引っ張った。


 そういえば、まだ信号は変わらない。

「長いな」

辺りをよく見れば、押ボタン式だったようだ。

ボタンを押そうと体の向きを変えたとき、しびれを切らしたポピーが道沿いに走り出した。

思い切り引っ張られた雄一は、そのまま連れていかれる。

渡ろうと思っていた横断歩道から、歩道沿いに離れていく。

あっちの道の方が良いと思ったんだが。

ま、この先の交差点でもいいか。


ポピーは、リードを引っ張り続ける。

前へ、前へ。

「おいおい、どこに行くのか分かってるのかい、ポピー?」

問いかける雄一に、ポピーは当然、答えたりはしなかった。

しかし、たどり着く先は変わらないことを、雄一は知っている。

大切な家族が暮らす、あの家だ。


「そうだな。なるように、なる。……かなぁ」

雄一は速度を速め、ポピーと並んで小走りし始めた。

吐く息が、白くなってきた。


お父さんが、しっかり出てくる回です。

伏線というほどではないのですが、少しづつ、背景という感じも出していきます。

もちろん、ポピー大活躍の回も書いていきますね。

ぜひまた、お越しくださいませ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ