三学期
書くのは楽しいですね!そして難しい!!!
少しづつでも前進します。
※誤字を訂正しました。いくら見直しても見落としてる!恥ずかしい!!
「すずちゃん、さぁ起きて!」
ミヨちゃんの明るい声で起こされた。
昨日は「冬休み最後の夜を満喫しよう!」とお父さんが言い出して、ミヨちゃんも一緒に3人でババ抜き大会をしてから、寝た。
最後まで残っていた宿題の絵日記も仕上げたし、持ち物も揃えてある。
鈴花は完璧な登校準備に満足していた。
でもなぜか寝付けなくて、布団の中でポピーの毛皮を撫でてもぞもぞ起きていた。
だから今朝は、ちょっと寝足りない気もする。
けれど、お腹に力を入れて、えいっと起きる。
今日から、三学期が始まる。
「おはようございます!」
「はい、鈴花さん、おはようございます!」
学校の門前で迎えてくれる校長先生に、鈴花は自分から挨拶をした。
我ながら、なかなか良いスタートだ。
ちょっぴり顎を上げながら下駄箱のほうへ歩いていくと、弘人くんと、幸太郎くんがいた。
2人はいつも一緒にいる仲良しさんだ。
「おはよう!」
鈴花はさっきと同じように、自分から大きな声で挨拶した。
「おは」と答えたのは弘人くん。
そして、幸太郎くんは、ちょっと鈴花を見たけど、何も言わずにクラスの方へ行ってしまった。変だ。
弘人くんを見ると、ちょっと気まずい顔をしている。
「なに、どうしたの?」
「なんでもない」
弘人くんも廊下を走っていった。
担任の下野先生は、笑顔で教室に入ってくるなり、いつもどおり黒板に日付を書いた。
三学期、と小さく添えて。
「冬休み、楽しかったひとー?」
ぱらぱらと手が上がる。
鈴花も、少し迷ってから手を挙げた。
楽しかった。
でも、それだけじゃなかった。
「はーい、じゃあ体育館に移動しますよ」
鈴花は前のほうに座っている弘人くんの背中を見た。
何だか、うなだれているようだった。
始業式が始まった。
2限目が終わって、休み時間に声をかけたのは、鈴花からだった。
「さっきの幸太郎くん、どうしたの?」
弘人くんは、困ったように目をそらした。
「……けんかした」
「え?」
「昨日の夜」
冬休みの最後の日。
ゲームの約束をしていたのに、幸太郎くんが家に来なかった。
今朝、どうしてと聞いたら、別の子と遊んでたから、と言われた。
「先に約束したの、俺なのに」
弘人くんは、そう言って下唇を突き出した。
「え、そうなの?」
「でもさ、俺、知ってるんだ。幸太郎ん家は、小さい弟がいるだろ?」
弘人くんは、続きを言わなかった。
鈴花は、聞いたことがある。
幸太郎くんのお母さんは仕事が忙しくて、急にお仕事の日になることがある、って。
もしかしたら、弟くんのお世話をしてたのかな?
だけど、幸太郎くんが話した理由は、嘘だったから。かもしれないから。
鈴花は黙ってしまった。
「すずかは、どっちが悪いと思う?」
急に、聞かれた。
胸が、少しだけきゅっとした。
正しいこと、なら言えそうだった。
でも、それを言ったら、どちらかがもっと傷つく気がした。
「……わからない」
鈴花は、そう答えた。
弘人くんは少し驚いた顔をしたあと、
「そっか」と言って、教室を出ていった。
放課後。
家のドアを開けると、もうポピーが玄関にいた。
しっぽをふりふりと揺らし、舌を出した顔が笑っているようだ。
「おかえり、ただいま」
鈴花はポピーの代わりに言っておいた。
それからランドセルを置いて、手洗いうがいをして、ダイニングテーブルに置いてあったおやつを食べた。今日はお芋パン。給食がまだ始まってないから、本当はおやつじゃないけど、良いのだ。あと30分くらいしたら、お昼前にはミヨちゃんが帰ってきてくれる。
「今日ね」
椅子の下で何かを待っているポピーのおでこを撫でながら、話す。
「言わなかった」
ポピーは目を閉じたまま、しっぽの先を少し動かした。
「本当のこと、言えばよかったのかな」
お芋パンは、あおさ入りだ。塩気が美味しい。
「でも、言わなかった」
正解は、何だったのかな。
パンの最後の一口を食べた。
途端にポピーが、お気に入りの布団へ去っていった。
夜、お布団に入って、天井を見る。
今日もしっかり出た宿題の漢字ノートを、ミヨちゃんに言われる前にちゃんとできた。
えらい、私。
満足しながら、弘人くんとの話をゆっくり思い出す。
思ったことを言わないのは、ずるいのかな。
でもきっと、弘人くんも、幸太郎くんも、思ってることがある。
――言わないのも、ちゃんとすること?
足元でふんわり触るポピーの毛並みが気持ちよかった。
「すずちゃん、起きてー!朝ですよ」
いつの間にか寝ていたみたい。
鈴花は慌てて起きた。
「おはようございます!」
「はい、鈴花さん、おはようございます。今日も元気にね!」
校長先生に挨拶して、下駄箱へ向かう。
校庭を見ると、弘人くんと幸太郎くんが、何も無かったみたいに、
一緒にボールで遊んでいた。楽しそうだった。
鈴花は胸の奥が、少しだけあたたかくなった。
「よかった」
家に帰ってから、さっそくポピーに報告する。
おやつは焼き芋だった。
「今日はね、何もしなかった」
ポピーは、椅子の下であくびをした。
でも、そのあと、鈴花の足元にぴたりと伏せた。動かない。
鈴花は、それを見て思った。
言わないって、ずるいことじゃない。
待つって、ちゃんとすることかもしれない。
焼き芋をほおばる。甘くて美味しい。
最後の一口を食べると、ポピーが去っていった。
鈴花とポピーのキャラクターが、輪郭ができてきたように思います。
ご感想、お気づきの点がありましたら、ぜひお知らせください。




