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Re: sender ~銀河シナリオセンダー太陽系支部よりお届けします~  作者: N/A


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Re:005 上司ガチャとか言われるような



 扉の外には、いたって普通の通路が広がっていた。まあ、ちょっとだけ近未来? SFっぽいような、映画で見るような宇宙船の通路って感じがする。白を基調としていて、ところどころ淡く光っているところや、文字が書いてある。一瞬知らない文字で書いてあると思ったのに、瞬きをしたら英字表記に変わった気がする。見間違いかもしれないけれど。


「ふふ~みまちがいじゃないですよ~。ここはいろんなほしからきてるかたがおおいので、じどうでほんやくできるようになってるんです~」

 よくわからないけど、きっと不思議な力が働いてるんだろうなぁ。それとも、私の目とか脳とかに何か仕込まれてたり……!?


「あはは~そこまではさすがにないですよ~」

「で、ですよね~」

「こっちのぎんがでそういうのは、はんざいになるので~」

「あっ、そうなんですね」


 ……犯罪じゃなければやるのかな。ふと考えてしまう。ふと彼と目が合うとニコリと笑った。なんか笑顔が怖いとかは思っちゃダメなんだろうな。たぶん。


 白い通路はどこまでも続いているようにも見える。まっすぐな通路かと思っていたが、ゆるくカーブを描いているようで、通路の先が見えそうで見えない。足音だけが響く無音かと思ったが、小さく空調か何かの音がしているし、思ったほど足音も響かない。固すぎず、やわらかすぎず……なんだろう、何かを思い出すような感覚がある。

 彼は私の前を歩いている。機嫌がいいのかわからないが、鼻歌のようなものが聞こえてくる。これもまたどこかで聞いたようなメロディーで……なんだろう、パスタが食べたくなるような、なのにホラー映画でも見ているように追い立てられている感覚になるような……。

 ちらっと彼を見ても、ただ前を向いて鼻歌を続けるばかり。

 あ~、なんだっけこれ~……!


 そんな鼻歌を聞きながら結構通路を歩いたと思うのに、まったく景色が変わらない。どれくらい進んでいるのか、それともまったく進んでいないのか。なんの判別ができないというのもちょっと怖い気がする。

 しかし、終わりなき通路にも終わりは訪れた。


「あ~!! やっと見つけました~!!」


 女性が泣きながらこちらに飛んできた。


「――!?」

「あら~、みつかってしまいましたね~」


 のほほんと返す彼の元へ、文字通り飛んできた彼女。

 扉が開いたと思ったら、距離を一瞬で詰めてきた。驚きすぎると人は声を失うのだなと実感した。驚きと、それと恐怖。

 そういえばこの場所は最初から人ならざるモノたちの集まる場所なのかもしれない。黒もやスーツさんたちに、指を鳴らすだけで不可思議なことを起こせる銀髪の彼。そして、獲物を狩る猛禽類のごとく、とんでもないスピードで私たちのところに飛んできた羽の生えた女性。その姿は……まるで……。


「天使だ!」

「違いますよぉ! ベルをあんなやつらと一緒にしないでくださいっ!」


 なんか怒られた。


「ほら~。そのみためだと、ちきゅうのかたにぜったいかんちがいされますよ~っていったじゃないですか~」

「だって、便利なんです! 移動とかっ! 歩くより早いし!」


 それはなんとなくわかる。めっちゃ早かったし。それに空を飛ぶのってやっぱ人類にとっては憧れじゃない? 翼あったら飛んでみたいよね~!


「まあできなくもないですが……なれるまでじかんがかかりますし」

「慣れたらいけるもんなんですかっ!?」

「じっさいにできるひともいますからね~。けど、そのぶんおかねはかかりますよ~」


 え。そうなんだ……やっぱ人体改造? 手術? とかだからかな。


「いえ、アタッチメントなので、しようしゃにあわせてオーダーになっちゃうので~。しゅみもでますし、きほんみなさんごとのとくちゅうってやつですね~」

「……なるほど」


 装備品の扱いなのか。

 フルオーダーがあるなら、セミオーダーで安く抑えられるパターンもあるのでは。


「それより、はやく仕事にもどってくださいよ~! カミさま~!」

「やっぱり神様なんですね!」


 わかってたけど。わかってたけども!


「ごかいです~……ん~、せいかくにはちがうんですよ~。ぼくは――」


 彼が何か言いかけた途端、工事現場のような大音量が耳元で突然響いた。


「いっ……!?」


 ガンガンゴンゴン、ぎぃ――――んと、私の耳の中に工事現場が突然現れたよう。かと思えば、ピアノの鍵盤を乱雑に叩いたような音に変わったり、不協ともいいがたい絶妙にずれた和音のような音が続いていく。両手で耳を塞いでもまったく変化がない。

 ……なんか、MRIの音に似てる気がする。それよりもっとうるさい音だけれど。

 彼を見るとまだ何かを呟いているようだった。この音にかき消されて何も聞こえないけれど。

 ぱちっと目が合って、彼は「あっ」と何かを思い出したようだった。それから、むむむと困ったように眉を寄せた。整っている顔というのは何をしていても絵になるものなんだなぁ。なんて考えていたら音が止んでいた。


「というわけで、カミさまの名前を省略しているので、カミさまなんです!」

「ん?」

「え?」


 まるで天使な女性はきょとんとしてこっちを見た。私が何もわかっていない様子だと気付くと、困った顔で神様? を見る。


「いまからユウさんを『じごく』までおくりとどけるところなんです~。じゃましないでくださいね~。すぐおわれば、ぼくだってはやくもどれるんですから~!」

「…………嘘ですね」

「ぎく」


 ぎく?


「だって今日はカミさまの好きなサンデーワンホリックの新メニューが出る日じゃないですか……! ぜったいぜったい、このまま字国を抜けて行きますよね。食べに」

「……そんなことは~」

「行きますよね、食べに」

「…………しかたないのであなたのぶんもおごります」

「買ったら食べながらでいいんで書類片付けてくださいよ! じゃないとしばらく謹慎だしてもらうよう陳情します」

「ちゃんとしますってば~」


 本当にこの人が神様だとしたら、この天使のような女性はいったいどんな立ち位置の人なんだろうか。


「あ、遅れてごめんなさい。私は電子局の局長補佐をしてるベルフェリーヴェルよ。気軽にベルって呼んでね」

「あ、初めまして。私は――」


 手を差し出されて握手をしようとしたところを神様がやんわりと止めた。


「ユウさん、だまされてはだめですよ~じんちくむがいなかおをして、あちこちでいろんなことをおこすトラブルメーカーなんです、このひとは。まきこまれたらたいへんです」

「ちょっと、誰がトラブルメーカーですかぁ!」

「あなたですぅ~」

「どっちかって言ったら、ベルよりカミさまのほうがトラブルメーカーじゃないですか!」

「あ~、いいんですか~そういうこといっちゃって~しごとさぼってりょこうとかいっちゃいますよ~。にはくみっかとかじゃなく、バカンスいっちゃいますよ~」

「ふーん! どうせ行けないくせに~! 強がっちゃって~!」

「い~け~ま~す~ぅ~! なんならサンデーワンぜんてんぽまわるまでかえってこないたび~とかしちゃってもいいんですよ~?」

「なんです、脅しですか~? カミさまともあろうお方がそんなこと言っちゃっていいんですか~?」


 二人がぎゃいぎゃい騒ぎ出したカオス空間で私は完全に置いてきぼりだった。この人たちのこと何も知らないけど、下手に手を出して面倒ごとに巻き込まれたくないなぁの気持ちでいっぱいだった。

 けど、そんな二人の小学生のような喧嘩も長く続きはしなかった。


 シュンッと音がして勢いよく扉が開いたと同時に、二人はピタッと固まった。


「お前らなぁ……」


 わざと聞こえるようにしているのだろう大きな溜息。トーンからにじみ出る不機嫌さ。


「人の仕事場の前でギャーギャーピーピーうるせぇんだよ! てめぇの部屋でやれ!」


 美形、美人と来て次に目の前に現れたのは強面のおじさまでございました。

 不精髭に目の下にはくま。怒りのあまり噛み潰してしまいそうな咥え煙草。ボサボサの寝ぐせ。不健康そうな要素があるにも関わらず、筋骨隆々で喧嘩など負け知らずとでも言いそうな逞しすぎる腕! パツパツのシャツ! 胸筋! 首元から見えるそれはもしやタトゥーというかアレではなかろうか。

 明らかに怒らせてはいけない人を怒らせてしまったのでは……!?


「…………誰だぁ、そいつ」


 銀髪と翼がしゅんとして小さくなったことで、二人の後ろにいた私と目が合った。


「まえにいっていたから、つれてきましたよ」

「は?」


 ギロリと神様を睨むおじさま。眼光も鋭すぎる。堅気の人じゃないような雰囲気がしてちょっと怖い。


「ひとでぶそくだっていってましたから~。じんいんほじゅうってやつです~」

「は?」


 今度は私のほうをジロリと見てきた。ものすご~~~~~~~~く目を細めて、品定めでもされているようで落ち着かない。


「……こちら、アイシャ・ユウさん。きょうからあなたのチームのぶかになるかたです」

「は?」

「そしてこちらのがらのわるいかたは~『じごく』のとうかつしゃ、『じごくのばんにん』ことイセイさんです~! はいはくしゅ~」


 ぺちぺちぺち、と神様の拍手だけが通路に吸い込まれていった。

 そしてこのものすごく怖い顔の上司に「あとはよろしく~」と言い残して、神様はベルさんとともに去っていった。風のような速さで。


「…………はぁ」


 あっという間に見えなくなった二人と、残された二人。

 私の上司になるらしい方は横で盛大に溜息を吐く。めちゃくちゃ怒ってる。

 横で挙動不審になっていたからか、上司はじぃっとこちらを睨むように見つめてくる。

「す、すみません」

「あ? なんで謝るんだよ。謝ることしたのか?」

「いえ、してないです……たぶん」


 そうしてまた溜息を吐いて、上司は頭をガリガリかいた。


「ったく…………あーなんだ、とりあえず着いてこい」

「…………はぁ」

「あ?」

「いえっ、なんでもないですっ!」


 私の再就職、もしかしなくても前途多難かもしれない。




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