表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚され損ねたこの世界で、ありのままに生きてみる  作者: オオマンティス
迷宮都市ランパード編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/113

二人と一匹の迷宮散歩(改稿済)

上書きするはずのepを消してしまい……

新規ep更新通知として届いたと思いますが、先日周知していた既存epの改稿になります。

申し訳ございません。

それと、改稿前のエピソードを気に入っていた方にも、申し訳ないです。

地底湖のほとりで、私たちはしばらくの間、言葉もなく、ただ静かに足を水に浸していた。

天井から滴り落ちる水滴が、湖面に小さな波紋を作る音だけが、洞窟の中に優しく響いている。

ピヨはすっかりこの場所が気に入ったらしく、時折、気持ちよさそうに水浴びをしていた。


「……ふぅ。生き返るわね」


隣に座るエリスさんが、満足げな息を吐いた。

彼女の横顔は、戦闘中の険しさが嘘のように、穏やかだ。


「ええ。こんな場所があるなんて、知りませんでした」


「でしょう? ここは、私の秘密の場所だったのだけれど……まあ、あなたなら特別よ」


彼女はそう言って、悪戯っぽく笑う。

私もつられて、小さく笑みを返した。


「それにしても」


エリスさんは、水面を眺めながら、ぽつりと呟いた。


「あなたのそのグリフォン……ピヨ、だったかしら。本当に、よく懐いているのね。グリフォンは気性が荒くて、人に懐くなんて話、聞いたことがないわ」


「彼とは、少しだけ特別な出会い方をしましたので。ね、ピヨ」


私の言葉に、ピヨが「キェェ!」と嬉しそうに一声鳴く。


私たちがそんな軽口を叩き合っていると、ふと、エリスさんが真剣な顔でこちらを向いた。


「リィア」


彼女が、私の名を呼ぶ。その声は、静かだが、不思議なほどよく通った。


「あなた、この先どうするの? まさか、このまま一人で深層を目指すつもりじゃないでしょうね」


その問いは、もっともだった。

ゴールドランクとはいえ、ソロでの迷宮攻略は無謀を通り越して自殺行為だ。私自身、そのつもりはなかった。


ガルドランで情報を集め、必要とあらば信頼できる仲間を探す。それが、私の元々の計画だった。


「ええ。ひとまずは、第十五階層にあるという中継都市を目指すつもりです。そこで、今後のことを考えようかと」


「ガルドランか……。なら、ちょうどいいわ」


エリスさんは、湖面に視線を落としながら、少しだけ躊躇うように、しかしはっきりと続けた。


「……もし、あなたが良ければ。私と一緒に来てくれないかしら」


それは、あまりにも唐突な誘いだった。

私は、驚いて彼女の顔を見つめ返す。


「一緒に……ですか?」


「ええ。見ての通り、私は一人よ。あなたも一人。……それに、あなたのその剣技と知識、私の剣と経験。二人で組めば、この迷宮でもっと上を目指せるはずだわ」


彼女の言葉に、嘘はなかった。

悪い話ではない。むしろ、これ以上ないほどの提案だったかもしれない。


「お誘いは、光栄です。ですが……少しだけ、よろしいですか」


「何?」


「私の旅の目的は、ただ迷宮を攻略することではないんです。この迷宮にある、まだ誰も知らないことを見つけたい。なので……足手まといになるかもしれません」


私のその、どこか自分本位ともとれる言葉。


エリスさんは、きょとんとした顔で私を見つめ、やがて、楽しそうにふっと笑った。


「……あなた、本当に面白いことを言うのね。冒険者なんて、みんなそんなものでしょう?」


「え?」


「誰だって、自分の目的のために迷宮に潜るのよ。金のため、名声のため……あるいは、あなたみたいに、まだ見ぬ何かを求めてね。目的が違うからこそ、組む意味があるんじゃないかしら」


彼女のその、あまりにもあっけらかんとした言葉に、私は少しだけ、意表を突かれた。


(……そう、ですね。そうかもしれません)


「どうかしら? 少なくとも、ガルドランまでは。退屈はさせない、と約束するわ」


彼女はそう言って、悪戯っぽく笑いながら、私に手を差し出した。


私は、その手を見つめ、そして、これまでで一番素直な笑顔で、その手を握り返した。


「決まりね。じゃあ、これからはよろしく、リィア」


「ええ。……こちらこそ、よろしくお願いします。エリスさん」


私たちは、どちらからともなく顔を見合わせ、笑った。

先ほどまでの緊張感が嘘のように、洞窟の中は穏やかな空気に満ちている。


「さて、と」


エリスさんは立ち上がると、濡れた足を器用にブーツに収めた。


「感傷に浸るのはこれくらいにして、そろそろ行きましょうか。まずは情報収集よ。ガルドランに行くにしても、今の深層の状況を知っておくに越したことはないわ」


「賛成です。何か、心当たりでも?」


「ええ。この近くに、腕利きの情報屋がいるの。少し偏屈だけど、腕は確かよ。あなたも、紹介しておくわ」


彼女のその手際の良さに、私は感心する。


「ピヨ、行きますよ」


私が声をかけると、水浴びを終えたピヨが、翼を広げて私たちの隣に舞い降りる。

その巨体と、風圧に、エリスさんが少しだけ目を丸くした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
不快なゴミが居なくなってすっきりしました。こちらの方が断然面白い。これからも楽しみ
勇者君たちが無かった事になってる??
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ