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異世界アイドル始めました  作者: フォクシー
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6 転移後の生存戦略

 三人からの辛辣な非難をグラビスは俯き加減で黙って聞いていた。三人はひとしきり文句を言うと言葉が出なくなり、互いに顔を見合わせた。

「どうする?」

「どうするって言っても転移は確定なんだったらグラビスニアに行ってから少しでも生きのびやすくするためのことを考えないとだよね。」

「そうだよね。」


 言うだけ言って吐き出すものがなくなると、三人ともこれ以上この状況を嘆いても仕方がない、と割り切った。さすがはZ世代である。知らんけど。

 今後の話をしようと気持ちを切り替えたティアが聞く。

「ええと、ねえ、グラビスさん。いきなり転移させられたら、わたしたちそもそも長くは生きられないように思うんだけど。わたしたちステージからそのまま来ちゃってるからステージ衣装しか持ってないし。」


 ようやく自分への轟轟たる非難が止んで安心したのか、グラビスは先ほどよりはかなり明るい表情になって答えた。

「転移先で当座生きていくための配慮は致します。具体的な方法としては二つ考えられます。一つ目は数か月分程度の生活費をお渡しすることです。転移先の現地でそのお金で当座をしのぎながら収入源を確保することになります。」


「二つ目は、当座の面倒を見てくれそうな人に拾ってもらえるような状況に転移させることです。その人に拾ってもらって当座の暮らしを送りながら生活基盤を整えるということです。」

 グラビスは良さげに話しているが、聞けば聞くほど三人の不安は増すばかりだった。


 三人はグラビスから少し離れて輪になり、頭を突き合わせて相談モードに入った。

「二つ挙げてもらったけどさ、なんかどっちも不安しかないんだけど。」

「お金をもらう場合は、しばらくの間生活できることは確実だろうけど、お金がなくなる前に収入減を確保しないといけないよね。」

「面倒見てくれそうな人に拾ってもらえるような状況っていうのがよくわかんないね。拾ってもらえるのかも拾ってもらえたとしてその後面倒見てくれるかも不確定だし。」


 そこまで話したところでカノンが提案した。

「そしたら確実なお金のほうがいっか。」

 ティアは反論する。

「いや、それよりも「面倒見てくれそうな人」が面倒見てくれる確率と拾ってもらえる確率を上げるように交渉すべきじゃない。」

「交渉って誰と?」

「グラビスに決まってるじゃない。」


 この提案に疑問を持ったフウカがティアに聞いた。

「でもグラビスはそういう「介入」はできないんじゃないの?」

 ティアは答えた。

「「確率を上げる」っていう「介入」はできないでしょうね。でも「面倒を見てくれそうな人に拾ってもらえるような状況に転移させる」っていうからには「面倒を見てくれそうな人」とか「拾ってもらえるような状況」っていうのを見極めることはできるってことでしょ?だったらグラビスの中でその確率が一番高い人と状況を見極めてそこに転移させろ、って言ってみようと思うの。」


 確かに面白い考えだが可能なのだろうか。

「そんなの受け容れるかな。」

「「介入」には、転移した後のわたくしたちの生存を脅かさないために必要な最小限の措置を講じることを含むって言ってたじゃん。その上で「面倒を見てくれそうな人に拾ってもらえるような状況に転移させる」っていうんだから受け容れると思うよ。グラビスの都合、っていうかグラビスが「楽しくない」っていう身勝手な理由で転移させられるんだし、そのことを申し訳なさそうに思ってる様子だったから強気に出るべきだよ。何としてでもうんと言わせるよ。」

 ティアの声には自信が窺える。

「なるほどね。じゃあ交渉はティアにお願いしていい?」

「任せて。」


 三人の話し合いは終わり、ティアがグラビスに交渉を持ち掛けることにした。三人は再びグラビスの方に向き直った。

「グラビスさん、さっき聞いた二つのうちだったら、わたしたちとしては「当座の面倒を見てくれそうな人に拾ってもらえるような状況に転移させる」っていう方にしようかと思ってます。」


 それを聞いたグラビスは、「そうですか、それじゃあ早速…」と動き始めようとするので、ティアは押しとどめた。

「話は最後まで聞いてください。そちらにしようかとは思っているのですけれど、「面倒を見てくれそう」っていうところと「拾ってもらえるような」っていうところが不安なんです。だから、グラビスニアに今生存している人の中で「わたしたちの面倒を見てくれる可能性が一番高い人」がわたしたちを「拾ってあげよう」と思う可能性が一番高い状況に転移させるようにしてください。」


 ティアの突きつけた要求を聞いたグラビスは苦い表情になり、「そこまでは…」と明確な回答を躊躇った。

「まさかそんなこともできないの?今回の転移って、話を聞く限りグラビスさんにとってもモンドスさんって造物主にとっても別に必要性のないことですよね?あなたがモンドスニアを見てグラビスニアにエンタメがないのを不満で悔しく思って、その不満と悔しさを解消するためにわたしたちは転移させられるんじゃないの。要するにあなたのわがままでわたしたちは理不尽極まりない不利益を受けるわけなんだから、あなたはわたしたちに最大限の配慮をすべきなんじゃないですか?」

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