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イージス学院

「最後がここ、俺たちの部屋」


約1時間かけ丁寧に学院を案内してもらったが、全くもって覚えていない。これだけ広いと場所を覚えるのに相当時間がかかりそうだ。


「もともとレンと生活してた部屋だけど行方不明だし、他に部屋も空いてないみたいだから。ハクはこっちのスペース使って」


レンが使ってたスペースはとても綺麗に片付いていた。机の上には俺とラン、そしてレンの家族写真が置いてある。3人とも楽しそうに笑っていてとても幸せそうだ。


「その写真レンが来たときからずっと飾ってあるんだよ。なんでもそれが一番お気に入りなんだと」


この写真はレンがここに来る前に撮っておこうとランが言い出して撮った、3人で写っている一番最後の写真だ


「それにしても、双子がいるのは知ってたけど間近で見るとほんとにレンを見てるみたいだ。ほんとにレンじゃないのか?」


「違うよ。そんなことより俺はこれからここで何をすればいいんだ? 訓練がなんとかって言ってたけど。そもそもこの学院ってなんなんだ?」


普通の学校ではないことはわかるがそれ以外何もわからない。


「そうだな。今日は休みだし特別に俺様が学院について教えてやる! まずはなにから聞きたい?」


聞きたいことは山程あるが、中でも一番気になっていたことがある。


「ここに来る時通ったあのドアはなんだ。どうしてドアを通り抜けた瞬間学院が目の前にあったんだよ」

「あれはハクがもといた場所とこの世界を繋ぐ唯一のものだ。あの扉を通らないとこの世界には来れないし、逆に帰ることも出来ない」

「この世界?」

「そう。ハクがいた場所とこの世界は全くの別物。簡単に言えば異世界だな」

「異世界!?」


突然の事実に驚きを隠せない。別の国とかではなく全く異なった世界に俺はいるのか?

じゃあ今までレンは俺たちが住んでいた世界にはいなくて、1人この世界にいたってことか? 考えれば考えるほど訳がわからない。


「訳わかんないって顔だな。まぁいきなりこんなこと言われても信じられないわな」


俺の反応を予想していたのか愉しそうに笑っている。


「異世界って言われても、俺は別に転生してきた訳でもないし、ただ扉をくぐってきただけだぞ。それにもしここが異世界って言うならなんで違う世界の学校がもといた世界でも知られてるんだよ」 

「そりゃあ、卒業生がいるからだろ」

「卒業生?」

「学校なんだから卒業生がいて当たり前だろう」

「いや、そういうことじゃなくて……」


こいつの言っていることが全くもってわからない。こんなに説明が下手くそなやつがあるか。聞けば聞くほど訳がわからなくなっていく。


「ここに来るとき何もなかったところから扉が現れただろ? それにリクさんの魔法見てねぇのか?」

「魔法って……」


魔法……。たしかにここに来る前は信じられないことが色々起こった。扉は現れるし人は浮くし。


「見たけど、それがなんだって言うんだよ」

「お前がいた世界でもあー言ったことが当たり前のように起こってたか?」

「いや」

「つまりそう言うことだよ」


どや顔でそんなこと言われても1つもわからない。本当に説明が下手くそだ。


「お前説明へったくそだな」

「なんだよ! 人が折角教えてやろうとしてるのに、そんな言い方しなくてもいいだろ!!」

「だって本当に下手くそなんだから」

「お前、ムカつくなー! 顔はそっくりだけど性格は全然レンと似てねぇな!」


顔を真っ赤にして怒るルイが面白くてつい笑ってしまう。たしかにレンと俺は顔こそ同じものの、性格は全くといっていいほど似ていなかった。自分本意で大抵人の言うことを聞かない俺に比べて、レンは落ち着きがあるしなにより相手のことをよく考える奴だ。


「じゃあリクさんのとこ行くか」

「え?」

「俺の説明じゃ不満なんだろ。今の時間なら多分図書館にいると思うし」


不満げにも拗ねているようにも見える顔をしてルイは図書館に向かっていく。ルイの後ろ姿を追いながら少し言い過ぎてしまったかと心の中で反省した。




図書館には勉強している生徒、本を読んでいる生徒、昼寝をしている生徒など様々な生徒たちがいた。その生徒たちの横を通り過ぎて奥まで進んでいくと、大きな机に沢山の本や資料を広げたリクがいた。


「リクさーん」

「ん? ルイにハク。こんなところでどうしたの?」

「聞いてくださいよ。ハクにイージス学院のことを教えてやろうとしたら、こいつ俺の説明が下手くそだって文句言い出したんですよ」 


ルイは近くにあった椅子に腰掛けここに来た経緯を説明する。


「そんなに不満ならリクさんに話を聞けばいいんじゃないかと思って」

「まぁルイは説明下手くそだもんね」

「ちょ、リクさん!」


ほらやっぱり、下手くそなんじゃないか。さっき反省したことがバカらしくなってくる。


「それで? 学院の何を聞きたいの?」

「全部だよ。ここに来るまでにあったことから全部」

「ここに来るまでって、あの扉のこと?」

「あぁ。さっきルイに聞いたけどいまいちよくわかんねぇ。行き来できる唯一のものとか、ここが異世界だとか」

「そうだよ」


そうだよって……。


「まぁもう少し細かく言うならここは裏の世界」

「裏?」

「ハクがもといた世界を表だとしたらここは裏。存在している次元は違うけど根本は同じ。まぁ雑に例えると双子と同じだよ」

「双子?」

「それぞれ別の人間として存在しているけど、それを構成しているものは同じでしょ?」

「たしかに」


理解できるできないは別として、ルイの説明よりよっぽどわかりやすい。


「この世界と向こうの世界は表裏一体。だからお互い影響し合うんだ。この世界で何か起これば向こうでも何かが起こる。この学院はその何かが起こらないようにするために作られたんだよ。レンもそれを知ってここに入学することを決めたんだから」

「レンが?」

「そう。ここに入学する人たちはみんな同じような目的を持ってる」

「目的って?」

「なんだと思う?」


急に答えをくれなくなったことに違和感を覚えながらも、レンがここに残った理由を自分なりに考えようとした。この世界で起こる何か。それを止めるために設立された学院。


「そもそも何かってなんなんだ? 具体的にはここで何をしてるんだよ」

「指輪を探してるんだよ」

「指輪?」

「この世界のどこかに存在する指輪。それぞれに特殊な力が込められていてそれを全部手に入れた者には絶大な力が手に入ると言う。この世界を一瞬で壊すこともできる力がね」


その青い瞳に陰りを混ぜながらそう言ったリクの顔はどことなく辛そうだった。


「世界を壊すって……。じゃあさっき言ってたお互い影響し合うってのが本当なら、この世界が消えたらもといた世界も……」

「消えるね」


声に出すことを躊躇っていた言葉を代弁するかのように、リクはなんの感情も込めず淡々とした口調で言った。


「そうならないためにこの学院は作られて学生たちは日々訓練しているわけだよ」

「じゃあレンももといた世界を守るために……」

「レンの場合は世界をと言うより家族を守るためにだったんじゃないかな」


俺たちを守るために1人この世界で生きてきたレンを想像すると、今まで自分が能天気に生きてきたことが急に恥ずかしくなった。


「指輪を全部探すことが守ることに繋がるのか?」

「少なくとも指輪関連ではね。指輪の数は全部で5個。そのうち3つは学院にある」

「そうなのか?」

「ルイに説明されなかった?」


そんなことを言っていたような言っていないような。これだけ広い学院のことを一気に教えられたから、なにを聞いてなにを聞いていないかあまり覚えていない。


「俺はちゃんと説明しましたよ! 資料館にも連れていきましたし。まぁ、実物は見せれてないですけど、俺じゃ開けられないし」


リクに突然視線を向けられたルイは、最後声が小さくなりながらも自分の無罪を主張した。


「どうせさらっとしか教えてないんでしょ、まったく。じゃあ行くよ」

「行くってどこへ?」

「指輪を見に」


未だに自分が呆れられていることに納得していないルイを無視して図書館を出ていこうとするリク。俺も同じようにルイを無視して後を追った。


「おい! 俺を置いていくなよ!!」

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