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妙メモリー

お母さんをなくした話

作者: みょめも

小学生の頃、お母さんをなくした事があった。


学校が休みの日に公園で友達と遊んで、夕方に帰ったのだが、家に入ろうとしたときに気付いた。


我が家は共働きだったので、僕は常にお母さんを携帯している、俗に言う『ママっ子』というやつだった。

それがポケットの中にお母さんがいない。

反対のポケットにも手を突っ込んでみたが何も触れない。

その時点で僕はかなり焦った。

これでは家に入れない。





ひとまず来た道を探しながら、遊んでいた公園に戻ることにした。

家から公園まではそう距離はなく、探しながら歩いていたとはいえ、あっという間に着いてしまった。

公園内も思い当たる場所は探したが見つからない。

ブランコの下、すべり台、土管の中など探したが、お母さんは出てくる気配がない。

砂場の中に埋まっているかもしれないと思ったが探しきれなかった。

フェンスに引っ掛かっていないかと確認したがやはりいなかった。

そうこうしているうちに、あたりは薄暗くなってきており、それ以上探すのは難しくなった。

帰っても家の中に入れないのでどうしようもないが、他に行くあてもなかったので帰る以外なかった。



帰り道、お母さんがこのまま見つからなかったらどうしようか、不安でいっぱいだった。

朝遅刻しないように起こしてくれたり、毎日ご飯をつくってくれたり、時々怒ることもあるけど、大好きなお母さん。


冷たい風が頬をさす。

自然と涙がこぼれたその時、「ただいま」と後ろから声がした。

振り返ると父が立っていた。

父の顔をみた瞬間一気に感情が溢れた。


「お、お、お母さんが、いいいなくなっっっちゃったぁー」


父は突然のことに怯むことなく、しがみつく僕の頭を撫で「そっか、父さんが残業じゃなくてよかったな。」と言ってくれた。

そして「それじゃあ、ちょっと暗いけどもう1回一緒に探そうか。」と慰めてくれた。





僕らは来た道をもう1度だけ歩き始めた。

刻一刻と暗闇が迫る中、父は思いの外懸命に捜索してくれた。

一目もはばからず「鍵代ぉー!鍵代ぉー!」とお母さんの名を呼んでいた。

きっと父も相当心配だったに違いない。


「そういえば帰る途中、自動販売機に行った!」


僕が思い出すと「よし!行ってみよう!」と走り出した。


「お母さーん!お母さーん!」


すっかり暗くなり、自動販売機の明かりは遠くからでも分かった。

そしてその明かりに照らされた地べたに、お母さんは落ちていた。


「お母さんっ!」


僕は冷たい風にさらされたお母さんを拾った。

父も安堵したようで、どすんと座り込んだ。


「見つかってよかったね。」


お母さんは言った。




それ以来、お母さんには鈴のキーホルダーをつけている。

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