幽子の冒険
その惑星のとある大陸の片隅に広がる王国、ミステリア・キングダム。
石でできた五芒星の城壁に囲まれた首都・エンチャント・シティ。
その更に真ん中の、王城の目の前に建てられたスタジアムの真ん中に、私は立っていた。
私の周りをぐるりと囲む観客席には、わあわあと歓声を上げる民衆たちが私へ視線を向けている。
星のエネルギーを源に起動する拡声魔法越しに、実況が私の名を呼ぶ。
「さあ今週も始まりました! 血湧き肉躍る命がけの一騎打ち! 最初の挑戦者はまたまたやってきたこの女! 何度負けてもへこたれない、若干18歳の若き魔法使い、ユーコ・サイネン!」
私の名前は西念幽子。けれどもこの国の人は名前と苗字をあべこべにして私を呼ぶ。それがこの国の名前の呼び方だからだ。
実況の声はまだ続く。私は目の前に対峙する相手を見上げた。
「対する相手は皆さんおなじみ! 孤高にして最強の竜、彼の負け姿は誰も知らない! 今日も圧倒的な力を見せてくれ! インペリアル・ドラゴン!!」
人語を解する程の知性はないはずなのに、実況の声に応じるように目の前の巨大な生物が咆哮を上げた。30メートルはあろうかという巨大な身体と、その倍はありそうな大きな翼を広げて、自分の力を誇示している。
青い鱗と鈍色の皮膚。黄金の瞳に睨まれて、私の身長150センチメートルの身体が竦んだ。ショートカットの銀髪が飾る額に冷や汗が滲んで、魔法杖・セレスティアルスタッフを握る力に力がこもった。
それでも逃げたりしない……、退いたりなんてしない! 私は赤と青のオッドアイの眼光で、相手を睨み返した。
ドラゴンの首には、特注の鎖で繋がれた首輪が嵌められている。樹齢1000年の大木くらいありそうなその鎖の太さが、彼の危険性を物語っていた。
「それでは第一回戦まいりましょう! 5、4、3、2、1…」
ショーのカウントダウンが始まると、私の逸る鼓動音が耳に届くくらい観客が静まり返った。
バンッ!
そして号砲。爆発するように再び湧き起こる歓声。
「やああああ!!!」
私は背中を押されたように走り出した。目の前には姿勢を低くして攻撃態勢に入るドラゴン。彼は両の脚で突進してきた。
「そんな攻撃は読んでるのよ!」
だって何度も受けてきたから! という言葉は飲み込んで、私は魔法杖を振った。杖に装飾された数々の宝石の内の一つが光り輝いて、星の軌跡を描く。それは私を導くレールになるのだ。
「スターサークル!」
魔法の名前を叫ぶと、光のレールが私を空へ導いて、身体を宙へ飛び上がらせた。華麗にドラゴンの突進を回避すると、空中でもう一度杖を振った。
昼間の青空の向こう側で輝く星の光の力を借りて、再び杖の先の宝石が輝く。
「シックルスターチェインッ!」
これは私が編み出したオリジナル魔法の新作! 杖を振ると、物質化した光の鎖鎌が現れて、ドラゴンの首元に飛来した。突進が外れて私の姿を見失ったドラゴンはきょろきょろと首を振っていて、大きな隙を見せている。
「捕らえた!」
ドラゴンの首に鎖鎌が巻きつくのを見て、私はそう叫んだ。やった! 今回の魔法は大成功だ!
私は鎖鎌を引き寄せながら右手で拳を作って魔力を込める。そのまま落下しながらドラゴンに距離を詰めて、拳を大きく振りかぶった。
今日こそ勝てる! 私はそう確信して、魔法を叫んだ。
「スターシャイン!!」
叫び、ドラゴンの首元にパンチを繰り出した。ドラゴンの鱗に触れた途端、星の光が放射されて、重たい衝撃を与えた。強い光のせいで手元が見えないが、その固い鱗を砕き貫いたに違いない。
ああ、私を称賛する観客たちの姿が脳裏に浮かぶ…。おもわずにやけていると、やがて魔法の光が収まって、ドラゴンの鱗が見えてきた。さあ、その無残な負け姿を見せてみなさい!
「……って、あれ…?」
目の前の結果を見て、私は愕然とした。だって、ドラゴンの鱗はまるで脱皮したてのように傷一つついていなかったから。
しん、と静まり返る空気。おそるおそる視線を横に向けると、ドラゴンの目が、自分の背中に立っている私のことを憎たらしそうに睨みつけていた。
「ひぅ...! いやぁ~あの~…ははは」
親にいたずらを見つかった子供のように背筋が凍って、私はごまかすような愛想笑いを浮かべた。
「す…、すまんかった…?」
直後、ドラゴンの身体が大きく揺れ動いて、空中に投げ飛ばされた私の身体に彼の首が直撃した。
「ぬわぁあああああああ~~~!!!」
スタジアムを大きく超えて吹っ飛ばされる私の身体。風切り音の合間から、私を嘲笑する観客たちの笑い声が聞こえた。
防御魔法・コンステーションシールドを発動させながら私は叫んだ。
「くっそ~! 今後こそ!!」
首都・エンチャントシティの外れの海沿いの町に、私の家兼魔法研究所がある。
昨日のインペリアル・ドラゴンとの戦いの疲れが残っているのも構わず、私は魔法の研究にとりかかっていた。
何週間も掃除が出来てなくて、埃っぽい研究所の中には、今までの研究の成果が足の踏み場もないくらい至る所に転がっている。
手狭な部屋の奥の、天体望遠鏡の側に設置している保管箱を開けた私は、眉をひそめた。
「…ない」
そう呟いたタイミングで、家の玄関をノックする音が響いた。
「ユーコ、いるんでしょう? 入るわよ」
返事をする間もなく扉が開くと、朝日を背中に長身の少女が一人で立っていた。
オレンジ色の長髪を縦に巻いた髪型のその魔法使いの少女を、私は知っていた。
「あら、リア、おはよう。朝早くから何か用事?」
彼女の名前はアストラリア・セテスティア。私が首都の外へ冒険に出るときによく協力するパーティメンバーだ。
彼女は指先で自分の髪をいじりながら、ため息交じりに答えた。
「どうもこうもないわよ。また昨日もスタジアムで戦ってきたって聞いたから心配して様子を見に来てあげたんじゃない。……昨日もどうせ負けたんでしょ?」
胡乱な目でこちらを睨む彼女に、私はたはは~と笑って見せる。
「いや~、いいとこまで行ったと思ったんだけどね~…、残念残念」
軽く笑い飛ばしたつもりだったのに、リアはぴくりとも一緒に笑ってくれなかった。
「そもそもあんな怪物に誰も勝てるわけがないのよ。主催してる王族も趣味が悪いわ。……ユーコ、もう出るのやめなさいよ。別に誰かに強制されてるわけでもないんでしょ?」
真剣なまなざしでそう言う彼女に、私は首を横に振った。
「ごめん、それは出来ない」
「…どうして?」
問いかける彼女に、私は答えた。
「みんなに知って欲しいから、私の魔法研究の成果を」
「…そう」
彼女はそれ以上聞いてこなかった。
だから私はぱんっ、と手を合わせて話題を変える。
「それよりもリア! ちょうどいいところに来てくれたわ! また星の円盤を切らしちゃったから、調達に付き合ってくれない?」
「えぇ~? また~?」
心底呆れた様子のリアは、それでも「いいわよ」と短く答えてくれた。
エンチャントシティから東へ数日歩いた密林の中に、太古の昔に造られた遺跡が遺っている。岩を削って組まれた入り口は地下に続く階段になっていて、蔦がびっしりと覆っていた。
「ねえ、本当にこんな所にあるの? 星の円盤が」
少し青ざめた顔でリアが言った。手に持ったスタッフの先が少し震えている。
「星の封印前の文献にはそう書いているわ。……私たちより前に誰かが取っていなければだけど…」
「それは大丈夫でしょ。ユーコ以外に星の円盤なんか欲しがる人いないんだから。…あんな珍しいだけで大して使い道のない魔道具なんて」
「星の円盤には無限の可能性が詰まってるんだよ!」
私の抗議にリアは「どうだか」と肩を竦めた。
遺跡の入り口に立って、私は手をかざした。
「スターシャイン」
「でた、クソ雑魚パンチ」
「うるさいっ!」
本来は攻撃魔法のスターシャインは手に光を留めれば照明としても使える。その明かりを頼りに、私とリアは遺跡の中へ足を踏み入れた。
「ねぇ、今更だけど、他のメンバーは誘わなくてよかったの?」
遺跡に入って最初の階層に達した頃、リアは私に問うてきた。
「う~ん、本当は誘いたいんだけどね…、あいにく他のみんなは今忙しいらしいから」
逆に私も彼女に問う。
「リアこそ、急に誘っちゃったけど大丈夫だった? …というか、いつもどれだけ急に声かけても必ずリアだけは乗ってくれるのはどうして?」
その問いかけに、リアは指先を顎に当てて「う~ん…」と唸ってから口を開いた。
「ユーコにはスタジアムに出場しているおかげで幽星団ってファンクラブがあるでしょ」
「う、うん」
その存在と名前は少し恥ずかしいけど…。
「それで、その幽星団の人たちから差し入れにハンバーガーを貰ったとする」
「うん」
「そのハンバーガーにピクルスが入っていてもユーコは必ず食べるじゃない? ピクルスが苦手なのに」
「もちろん」
「そういうとこよ」
「…うん?」
言ってる意味がわからずに首をかしげると、リアはおかしそうに吹き出して笑った。
その笑い声は、遺跡の中で反響して奥深くまで渡っていった。
「……なにも出ないわね」
文献に残っている限り最後の改装にたどり着いても、私たちを襲う脅威は現れなかった。
リアは口元に手を当てて怪訝な表情を浮かべた。
「こんな遺跡、星の解放時代以降人間は誰も踏み入っていなさそうなのに…、一匹も魔物がいないなんて…」
「きっと私たちが来るのを察ししてビビッて逃げたのよ!」
カンラカンラと楽観的に笑う私とは対照的に、リアの表情は相変わらず晴れない。
リアに先行してずんずん進んでいくと、私のローファが何かを蹴った。
「ん? なんだこれ」
手をかざして光を当て、蹴った物を観察する。
それは、何かの魔物の死骸の欠片だった。
……それも随分と新鮮な。
「……まさか」
リアと私は息を呑んだ。そしてリアは震える口を開いた。
「ユーコ、やっぱり引き返―――」
彼女の提案は遮られた。岩を連続で打ち鳴らすような魔物の鳴き声によって。
「ひっ!」
「ひぅっ!」
その声に二人そろって背筋を伸ばして、二人そろって背後を振り返ると、人間なんて一口で丸のみできそうなくらいに大きな蜘蛛の魔物が、八つの目でこちらを見つめていた。
「…知ってる? ユーコ」
蛇に睨まれた蛙のように蜘蛛から目を逸らせないまま、リアが声をかける。
「蜘蛛って、周りの獲物を全部食い殺すまでその場に留まるそうよ。……そして、皆殺しにするまで他の場所へ移動しない」
「…つまり?」
「状況から考えて、こいつがこの遺跡の中の獲物を全部食い尽くして、ちょうど腹を空かせたっていう最悪のタイミングで私たちは入っちゃったってこと!」
言うが早いか、大蜘蛛が糸を吐きつけてきた。私とリアは二手に分かれて散開した。
「ステラズランス!」
リアがスタッフを大蜘蛛へ振る。星座の力を借りたその魔法は鋭い閃光になって、闇を貫く。しかしその先が蜘蛛の身体を貫くことはなかった。四対の脚を跳ねさせた蜘蛛がその身を壁面に接地させて躱したのだ。
「ユーコ! どうにかアイツの隙を作って一旦退こう!」
彼女のその提案に私は大きく首を横に振った。
「まだ星の円盤を見つけてない! あれがないと研究が出来ない!」
私の声に、リアが声を荒げた。
「研究なんかどうでもいいでしょ!」
少し怯んだ私に構わず、リアは感情任せに言葉を続ける。
「スタジアムなんかにも出て欲しくない! ユーコが負けて傷ついて、観客たちに嗤われて、私がどんな思いでいるかをわかってよ!」
「……っ」
知らなかった、リアが私のことをそこまで想っていてくれたなんて。
でも、それでも…!
「ごめん、リア。それでも私は諦められない。冒険も、研究も、挑戦も。だって私には使命があるから」
「使命…? なにそれ」
「それは……」
私は少し口をつぐんでから、決心して彼女に明かした。この惑星の誰にも伝えていない私の秘密を。
「私はね、リア。星の向こうからこの惑星に来たのよ」
「星の向こう…?」
彼女にはふざけているように聞こえるだろう。でも彼女は私の話を真剣なまなざしで聞いてくれた。
「私はこの宇宙の果てにある惑星からある使命を与えられてやってきたのよ。その使命とは『この惑星の人々に挑戦することの楽しさを思い出させること』」
蜘蛛の攻撃をかわし、距離を取りながら私は話を続ける。
「この惑星の人々には大昔に星々が乱れ混乱をもたらした歴史があるでしょ。その時に星々の力を封印して、平和を取り戻した後にその力は解放されたけど、混乱の恐怖から人々は挑戦を恐れるようになって、この惑星の文明は停滞している」
そこまで言って、リアは口を挟んだ。
「それが何だって言うのよ。私だって冒険者だけど、誰かが傷つくくらいなら平和でいるほうがずっといいじゃない」
私は首を横に振った。
「私たちは平和よりも、挑戦することの楽しさを知って欲しいのよ! そして挑戦し続けた先で……」
私はそこで一旦言葉を区切って、にやりと笑った。
「遠い未来の果てで、私たちの星とあなた達の星がつながれたら、最っ高に面白いじゃない!」
私は全力で走り出して、大蜘蛛に立ち向かった。
「いや~、死ぬかと思ったわね!」
エンチャントシティまでの帰り道を歩きながら私はけらけらと笑った。
そんな私の手には星の円盤が握られている。
それは手のひら大の大きさで、黄色い輪の中に三芒星が象られたような形をしていた。
「笑い事じゃないわよ!」
「そうは言うけど、リアだって冒険者でいるからにはこういうのも悪くないって思っているんでしょう?」
「……まあね、ホント言うと、ユーコの使命ってやつも、半分くらいは共感できるかも」
リアは居心地が悪そうにはにかんだ。
そんな様子を見て、私もにひひと笑った。
首都の城壁に近づいてきたころ、私は声を上げた。
「さあ! 帰ったらまた研究するわよ!」
「いいけど、その前にあのごちゃごちゃの部屋を片付けなさいな」
軽口を叩き合っていると、城壁の向こうから悲鳴が聞こえた。それも、何十、何百という数の。
「一体何が…」
ただならぬものを感じ、私たちは走って城壁の中へ向かった。
城壁の衛兵に何があったのかを聞くと、彼は血相を変えて答えた。
「スタジアムのインペリアル・ドラゴンが逃げだしたんだ!」
それを聞いて、私とリアはスタジアムへ駆けだした。
人混みをかき分けて進むと、スタジアムの外壁の向こうにドラゴンの頭が覗いているのが見えた。
民衆の中の誰かの声がきこえる。
「まずいぞ、スタジアムの外に出られたら手が付けられなくなる!」
考えるよりも先にスタジアムの中へ向かおうとするのを止める手があった。
振り返ると、リアが私の手を掴んでいた。
「待って、ユーコ」
リアは私を引き留めるだろうか。そんな考えが過って、彼女の次の言葉を待った。
「……、私も行くわ」
少し意外な言葉に、けれども胸の奥が熱くなって、私たちは再び走り出した。
スタジアムの中に入った私たち。ドラゴンの背中を見上げながら、リアは私に聞いてきた。
「とはいっても、あんな怪物どうするのよ。ましてや万年負け越し中なのに…。何か策はあるんでしょうね…?」
彼女の問いに私は答える。
「実は…、ある!」
「あるの!?」
驚いて聞き返すリアに、私は手に入れたばかりの星の円盤を握りながら補足した。
「あるけど、この魔法を使うには詠唱を唱える時間が必要なの。1対1ではその時間が稼げないから、一騎打ちでは使えなかった…」
「そう、なら…」
リアは一歩踏み出して私より前に立った。
「私が時間を稼ぐ! ユーコはその隙にその詠唱を唱えて」
「リア…、いいの…?」
「それしかないじゃない」
リアはそう答えてから、こちらを振り返って付け足した。
「それに、これもあなたの言う『挑戦』でしょ?」
そして私たちは息を合わせたように頷き合った。
「ステラズランス!」
リアの放った魔法がドラゴンの背中に当たった。その魔法で傷つけることは出来ないが、注意をこちらに向けることは出来た。
ドラゴンが羽ばたいて観客席の下に降りてくる。リアはスターサークルで飛び上がると、ドラゴンを挑発するように8の字に飛ぶ。
私は心と星の力の波長を合わせて、魔法杖に魔力を込めていく。
静かな声色で唱える。
「回転する黄金の星、吹き降りる均衡の風」
私の周りに光の魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣は青空の向こうから雨のように降り注ぐ無数の星の力を取り込んでいく。
「幾億の光の加護、唯一つの我が刃」
魔法杖が今までにないほど輝くと、ドラゴンがこちらを向いた。何かを感じ取ったのかドラゴンが標的をこちらに定め、大きく羽ばたいた。強風が私のスカートを翻した。
「アンタの相手は私よッ!」
リアがドラゴンの前に躍り出て、攻撃魔法を放つ。しかし彼女の攻撃はドラゴンを怯ませることさえ出来ず、ドラゴンの頭突きが彼女の身体を大きく後ろへ…、私の目の前の地面へ叩きつけた。
「ッ!」
思わずリアの名を呼ぼうとして、それは彼女自身の眼光で遮られた。ここで彼女の名を呼んだら、詠唱が失敗してしまう。
「閃く一条の光芒、倒壊する灰色の塔」
ドラゴンがその爪で私に襲い掛かる。頭から血を流しているリアは防御魔法・コンステレーションシールドを展開して、私を護る壁になった。
ドラゴンの動きを止めることは出来たが、その強大な物量は展開された魔法壁に容易くヒビを入れた。
数秒もしないうちにその壁は砕けてしまう。それでも私は詠唱を続けた。この魔法を放つまで、きっとリアは耐えてくれると信じていたから。
そして私は最後の詠唱を唱えた。
「静寂と騒乱。夜を穿つ旋律よ、我が世界に革命を!」
私はその魔法を叫んだ。
「セレスティアルバースト!!」
瞬間、魔法杖から巨大な光の矢が放たれて、退避するリアを躱してドラゴンに直撃した。巨大なドラゴンの身体はその力の奔流に耐えきれずに押されていく。
そして光はドラゴンの身体を包み込み、雲よりも高い空の向こうまで吹っ飛ばして轟音と共に大きく大きく爆発した。
そして私はあらん限りの声でこう叫ぶのだ。
「勝ったぁあああああ!!!」
そんなこんなで私とリアは救国の英雄になってしまった。
一躍時の人となった私を嘲笑う人はもういない。
けれど私にはそんなことどうでもよくて、大きな問題に直面していた。
そう、研究結果を発表する場が失われてしまったのである。
「いいじゃない。国から使いきれないほどの報奨金ももらえたし、ユーコの活躍を見て気持ちに変化を起こした人も大勢いるんだから。あなたの使命も果たせたでしょ?」
なんてリアは言うが、いやいやまだ足りない。この国には、この惑星にはまだ大勢の人がいるんだから。この惑星中の人に私の挑戦を見てもらえるようになるまで、私の使命は果たせたとは言えないのだから。
だから私はリアや他の仲間たちを集めてこう誘うのだ。
「冒険しましょう! まだ誰も足を踏み入れたこともない、遠い遠い世界の果てへ!」
完




