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元凶どものしたこと

 事の発端がなんだったのかは分からない。

 真の支配者である彼等だが、巨大な組織の末端での出来事の全てを把握してるわけではない。

 いかに有能であろうと、それは人の身に余る事だ。

 だが、思い返せば組織の末端が機能不全になり始めた頃。

 そこから全てが悪くなっていったと思える。

 大問題は小さなほころびから発生するという。

 そんな格言を今更ながらに思い浮かべていく。



 もっとも、末端において何らかの問題が起こるのは珍しくもない。

 その対処に一々頂点に立つ者が乗り出したりはしない。

 可能なら現地で対処させる。

 上に立つ者達が得るのは、何かが起こってるという報告だけ。

 通常は、何かが起こったという事と、それは既に解決したというものだけになる。

 実際、組織全体で対処せねばならないほどの大事はほとんど存在しない。



 しかし、今回の出来事はそうではなかった。

 末端で起こった事の報告が無かった。

 あっても遅れて到着する事が増えた。

 多少手間取ってるのだろうとは思った。

 それでも、遅れは問題なので、詳細を調べさせていった。



 その結果は、「問題なし」というもの。

 派遣した調査員や該当地域を預かる者達からの報告はこの一点だけだった。

 具体的な調査報告もあげられていて、特に不審な点もなかった。

 強いていうなら、多少規模が大きな問題が発生したので対処に手間取ったこと。

 報告が遅れたのはその為だということ。

 良くはないが仕方ない事だった。

 注意も糾弾も必要の無いことだ。



 実際、それ以降はおかしな事はおこらなくなった。

 組織は問題なく動き、利益を生み出していく。

 その事に頂点に立つ者達は満足していった。

 様々な形で己の邪な願望を満たしながら。



 なのだが、それが崩れた。

 ある日、一斉に様々な場所で告発が行われたのだ。

 組織に所属していた者達が証拠と共に全てを国内に暴露していったのだ。

 末端のチンピラから、組織中枢の幹部に至るまで。

 それこそ、頂点に立つ元締めや教皇、王女の直属の部下だった者達まで。

 その全てがあらゆる悪事を白日の下にさらした。



 地位や立場を得るために行った暴行・強迫・暗殺から。

 金銭などの横領、権限の濫用。

 対立する組織の破壊や吸収。

 酒・博打・売春といった悪い遊びにはめこんであらゆる人間を破産させてきた事。

 不審に思った司法関係者や有志を失墜させ、殺してきた事。

 大小様々な悪事が証拠と共にあらゆるところで叫ばれていった。



 慌てて頂点に立つ者達は事態の収拾をはかった。

 しかし、その全ては阻まれた。

 部下だった者達によって、良識を残していた者達によって。

 何より彼等自身が己の心身の自由を奪われた。

 束縛されたわけではない。

 だが、決して抵抗できない強い意志が彼等を制御した。



 それは彼らの身のうちから湧き出てくる衝動だった。

 そうしてはいけない、こうしなければならないという。

 それが彼らの思考や言動、行動を縛っていく。

 おかげで裁きの場にて彼らは包み隠さず全てを暴露する事になった。

 やってきた悪事の全てを、真実を伝えねばならないという己のものではない意思によって。



 なぜそうなってるのか本人も分からなかった。

 だが、拒みがたい意思が身のうちから、心の奥からわいてくる。

 それに逆らう事ができなかった。

 それが事の元凶たる者達に自分達の凶行を語らせていく。

 本人の望みとは裏腹に。

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