心臓と血液
身体の中の魚。
泳いで、うねり、消えて、生まれる。
誰も見れないはずだろう。
もやのかかった硝子窓。
流される、ひとつ、うねり、流される。
そこから見えたモノ忘れない。
切り開かないで、
僕に形なんてありませんから。
あなたは眠りに尽きません。
ずっと、ずっと、ずっと、働きます。
幾十年、その後は休みましょうかね。
あなたが止まったら僕は此処にいるだけ。
知らなかった、ずっと、あなたの音と一緒だった。
だから、独りがこんなに静かだったとは。
燃やしてください。
一滴残らず、空に消えうせましょう。
心は人に残りましょう。
君は苦しいのでしょうか、かなしいでしょうか。
血は人に残りましょうか?
その鼓動、響き渡るのは、
「あなた様のおかげです」
忘れないで、忘れないで下さいね?
ただ、感謝してます。
ありがとう、何年も、ありがとうございます。
君の音が、ゆっくり空耳で聞こえる。
とん、とん、とん。
それに合わせて、うねり、泳ぐ。
僕、醜いのでしょうか。
綺麗な赤のはず、なのに、黒くて冷たいの。
もう、泳げない。
凍て付く、消える、火葬。
赤い海はさよなら、僕、空へ泳ぐ。
青い空、ねずみ色の雲。
長い、遠い、燃えてゆく。
僕、灰だけど、空に少し腰掛ける。
幾十年、お世話様。
とん、とん、とん……。
薄明かり影へ旅立ちました。
君は夢を見れたかな。
僕、硝子窓の外へ。
あの時みた、青の欠片。
「……のおかげです」
空耳で聞こえる二つの鼓動。