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27.一矢報いて


「話し合いは、済んだのか?」


 シュクルは八人が仕掛けてくるのを待つ。


「いくぞっ!」

「「「はいっ!」」」


 ローミッドの合図により、一斉に動き出す。

 ほぼ同時、少年がシュクルの背後から斬りかかるが、シュクルはこれを易々と躱す。


「いくぜぇ!」


 そこへ、シュクルの体勢が正面から見て僅かに左へずれたところに烈志が仕掛けにいく。


「剣・擬技! ― (うつろ) ―」


 素早くシュクルの懐に潜った烈志はその場で居合の構えを取る。


「遅い」


 そこへ素早くシュクルが烈志の頭上目掛けて剣を振るう。 しかし。


「っ!」


 シュクルの剣が烈志の頭上に当たろうとした時、突如として目の前にいたはずの烈志の姿が消え、剣は虚しく空を切る。


「こっちだよ!」


 刹那、シュクルの頭上に姿を現した烈志が剣を振り下ろす。


「なるほど、面白い。だが」

「っ!? どひゃぁ!!」

「甘い」


 シュクルの不意を突き、仕留めたと思った烈志だったが、自身の剣はシュクルにより受け止められ、そのまま身体ごと空中へと大きく弾かれる。


「ひゃー! これでもダメか!」

「十分だっ!」


 そこへ彩楓が技を発動させる。


「魔・擬技!」


 彩楓のエレマ体から放たれたマナがシュクルの足元に円を描くように集まる。


「― 砂塵嵐(さじんあらし) ―!」


 それらは螺旋を描く風となり、地面から多量の砂と塵が空中高く吹き上げられ、シュクルを覆う。


「…………」


 激しく吹き荒れる風が自身を襲う中、砂塵の隙間から外を覗くシュクル。

 その先では攻撃を仕掛ける準備を行っているオーロとローミッドがいた。


「あれは……」


 シュクルは目を凝らすと、ローミッドが構える剣にオーロの召喚獣であるフェニクスの炎が螺旋状に絡み、そこにオーロがありったけのマナを送り続けていた。


「なるほど」

「っ!」


 シュクルはそう言うと、彩楓が発生させた砂塵の嵐の中から強引に抜け出し、オーロとローミッドの下へと走り出す。


 シュクルに狙われた二人。

 そこへ。


「そう来ると思ってたよ!」


 シュクルの動きを予め想定していたルーナが横からギリギリのタイミングで二人とシュクルの間に入り、技を発動させる。


「盾技! ” לפוצץ(レフォツェーツ) ” ― 弾けろ ―!」

「っ!!」


 その瞬間、ルーナの黄蘗色の楯から衝撃波の塊が放たれ、シュクルを大きく吹き飛ばす。


「おいっ! クソ野郎!!」

「黙れクソちびっ!! 俺に指図するな!」


 シュクルが飛ばされてすぐにルーナに呼ばれた護が文句を言うと。


「盾・擬技。 ― 取り囲め ―」


 攻めの流れを切らさないよう技を発動させる。

 護が着るエレマ体のコアから放たれるマナがシュクルの周りを覆うと、それらは複数の楯へと姿を変え、切頂(せっちょう)二十面体の形となってシュクルを囲う。


「今です!!」

「ありがとうっ!」


 そして、オーロが叫んだと同時、ローミッドが護の楯により囲われたシュクル目掛けて走り出す。

 それに合わせて烈志とペーラも動き出す。


「こざかしい」


 すぐに楯を破壊したシュクルは、三方向から来る面々をそれぞれ一瞥する。

 

 右からは烈志。

 左からはペーラ。

 そして、正面からは高密度のマナを含んだ紅蓮の炎を纏う剣を持つローミッド。


(左右はただの陽動だろう。無視したところでこいつらの攻撃は私の身体を傷つけることなど出来ない。ならば)


「「っ!?」」


 迫り来る三人に対しシュクルは烈志とペーラを完全に無視すると、ローミッドに向かって真っすぐ突進する。


「剣技っ!」


 途轍もない速さで自身に向かってくるシュクルに対し、ローミッドが技を繰り出そうとする。

 だが、それよりも早く。


「遅い」


 シュクルの剣がローミッドの剣に迫る。

 虚しくもローミッドの一撃が防がれそうになる。


 その時。


「魔・擬技! ― 封 ―」

「っ!」


 突如として紫色の鎖が現れ、その鎖はローミッドが握っていた剣に絡むと、そのままローミッドの手から剣を奪い取る。


 一瞬何が起こったか分からなかったシュクル。

 しかし、目の前にいるローミッドは微かに笑い。


「少年!!」


 シュクルの後ろを見て叫んだ。

 シュクルは空を切る剣を握りながら後ろを振り返ると。


「これは……」


 そこにはシュクルの背後を斬りかかろうとする少年の姿があった。

 少年が握る剣には先ほどローミッドから剣を奪ったものと同じ、二本目となる紫色の鎖が絡みついていた。


 鎖が少年の剣を奪う。 そして。


「受け取れ!!」


 ローミッドの声と同時、ローミッドから剣を奪った一本目の鎖が少年に剣を渡す。

 少年が灼熱に燃える剣を掴む。


「そうか、初めからこれを」


 シュクルがローミッド達の意図に気付く。


* * *


 作戦決行前。


「考え?」

「はい。まず、アマシタさんとサクモさんのお二人で出来る限り敵を足止めしてください。その間に私とローミッドさんが攻撃の準備を行います。仮に敵がこちらに向かってきた場合は、ルーナさんとイワガミさんで護衛をお願いします」


 オーロが自身の考えを皆に説明する。


「そして準備が出来たタイミングで、ローミッドさん、ツヨシさん、ペーラさんの三人は、後方以外の三方向から敵を追い込んでください」

「後方以外……? 何故だ」


 オーロの説明に対しペーラが怪訝そうに訊く。


「先ほど私が少年の事を呼んだ時……。彼は確実に意識を以って反応していました。これまでの闘いを見て、彼が敵の後方を攻める可能性は十分に考えられます。そして、この戦場にいる中で、敵に対して一番勝てる可能性があるのは、彼だけです。なので」


 オーロは再び少年を見る。


「ローミッドさんが技を繰り出す直前に、サクモさんが出す鎖でローミッドさんと少年の持つ剣を入れ替え……。一撃を、彼に託してください」


* * *


 少年がローミッドの剣を掴む。

 灼熱に燃える剣が、凄まじい勢いで振り下ろされる。


「させん」


 だがシュクルは咄嗟に振り返り、少年の剣を弾こうと剣を振ろうとする。


 そこに。


「やらせるか!!」

「っ!!」


 三本目の鎖が、振り下ろさんとするシュクルの腕に絡みつく。


「しつこいぞ!」


 シュクルがすぐに鎖をほどく。


 しかし。僅か一瞬。


「しまっ!」


 その一瞬が。


「みんなを……守るんだ」


 勝敗を分けた。


 シュクルから、()()()()()が飛び散った。


* * *


 エレマ隊基地本部制御室。


「どういうこと、だ……」


 目の前のメインモニターで戦況を見つめていた井後。

 今まさにレグノ王国軍の各部隊長とエレマ隊の四将の連携によって敵将を追い詰めた。


 はずだった。


「エンジニア! 今すぐ奴のリンクを調べろ!!」


 だが。


「そ、総隊長! リンク先が……どこにも見当たりません!」


 一撃を喰らい、纏っていたフードが破れた後に見せた敵将の姿は。


「何故……やつらが……」


 胸に赤黒いコアが埋め込まれた、銀のエレマ体だった。


ここまで読んでくださりありがとうございます

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