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1話 自己紹介

ドアが開き、ベルが鳴る。

心の底から滲み出る怠さを隠そうともせずに言う。


「いらっしゃいませー」


「相変わらずだな。もう少し真面目に接客したらどうだ」


「そうは言ってもねぇ……ここは僕の店だし、接客の仕方だって僕の自由でしょ」


「そんな事だから客が少ないんだろう」


「客が少なくても生活出来るだけの収入はあるからいいんですぅー」


「品揃えだけはいいんだよな……」


「僕が優秀だからねぇー」


お客さんと適当に駄弁りながら商品をカウンターの棚に補充する。

傷薬、ポーション、保存食から魔道具まで、錬金術師が作れる基本的な物は大体高品質で揃えてある。


「今日のおススメは緑の回復ポーションだよ。色の割に効果が高い。ある程度の傷ならこれで十分さ」


「そいつはありがてえ。ならそれを10本に、いつものを……そうだな、これも10個くれ」


「ん、いつもより多いね。遠出かい?」


「ああ、護衛依頼を受けてな。リギニオまでだ」


「リギニオっていうと……えーと」


「王都の手前の村だ。確か薬草の産地だっただろ」


「あーあそこかぁ。僕あそこからは仕入れてないんだよね。はい、これ。大銀貨1枚ね。おまけしてあげたから感謝して使えよ」


緑ポーション10本と簡単野宿セット10個におまけで1個追加して入れておく。

ついでに黄色のポーションを手に取って言う。


「遠出するんだろ? なら良いポーション買って安心したくない?」


「黄色のポーションか……そうだな。確か銀貨1枚だよな?」


「2本買ってくれたら銀貨1枚と銅貨7枚にしてあげるよ?」


「ケッ、商売上手なこって。ほらよ」


「まいどあり〜!」


「いい性格してるよな、ほんと。じゃあな。また来るぜ」


からんからんという音を残してお客さんは去っていった。多分今日の客は彼で終わりだ。ウチは立地の影響もあって客はあんまり来ない。

それでも生活できる程度には稼げるし、忙しすぎることも無いのでこのくらいが丁度いいと思っている。

さて、暇になったことだし、何しようかな。なんともなしに考えていると、気持ちのいい日差しが差し込んできた。ちょうど眠気がやってきたことだし、そのままカウンターに突っ伏して寝ることにした。

何をやるにも自由があるのが個人経営のいいところだと思う。そう考えた所で本格的に眠くなって目を閉じる。

こんな日常が続けばいいな、なんて思いながら……


アルマ・ビーツ

それが僕の名前だ。今年で22になるのかな。そのぐらいの年齢。容姿は自分では評価しづらいけどまあかっこいいかダサいかで言えばかっこいい部類に入ると思う。

こんな話はどうでもいいんだ。いいんだけど、少しの間このどうでもいい話を聞いてくれると嬉しい。

この辺境の町アルティヤでしがない魔道具屋を営んでいる僕には、いくつか普通では無い秘密を抱えている。僕が転生者であるとか、金を生み出せるとか、昔錬金術師に解剖されかけたとか、そういう話だ。

順番に説明していこうか。


僕は転生者だ。前世は地球という星で生きていた普通の少年だったんだ。人並みに色々考えられて、人並みに考えなしな普通の少年、それが僕だった。

そんな少年が創作物みたいに異世界に転生して、金を生み出し操るという特別な力を持っていたのだ。それはそれは恐ろしい事が起きた。


まず調子に乗った。人の話を聞かなかった。自分なら大丈夫だと思うようになった。手に入れた力が半端に強いものだから、止められる人がいなかったのだ。そうしたら齢10になるころにはなかなかのクソガキが出来上がっていた。

そんな時に遭遇したのが錬金術師だ。錬金術師。そう、“錬金”術師。

錬金、つまり金を生み出すというのは、錬金術師の悲願というやつだった。僕が生まれた国は、その錬金術師が大きな権力を持つ国だった。

当然捕まるよね、僕。時間が経ったら消えるとは言え金を生み出せる子供が居るのだ。むしろ10歳になるまで見つからなかったことの方が奇跡みたいだ。

そこでまあ、色々と思い出したくないようなことがなんやかんやとあって、10年経った。そこでまたなんやかんやとあって国を抜け出した僕は、隣国の町であるここでしがない魔道具屋を営むことになったってワケ。


まあ、何が言いたいかって言うと、これはそんな僕の物語。

色々あって生国を抜け出して見つかりたくない僕が目立たず魔道具屋をやる物語ってことだよ。

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