取り戻すならば法だって犯そう
「……一番機からの通信が無い。こちらの情報がバレたかもしれん」
「例の青年の家に潜伏した同志は?」
「連絡が無い」
「ちっ、使えない……」
黒い戦闘用のジャケットを着た男たちが、そう悪態をつく。
その後ろには、気絶し、手足を縛られた因幡が寝転がっていた。
「……」
「この女にどんな価値があるんだか……用が済んだら玩具にしてもらえないかね」
「どうだろうな、申請でもすればいいんじゃないか」
「んっ……」
因幡が目を覚ます。
周囲を確認し、自分が知らない場所にいることを悟る。
「お、起きたか。中々綺麗な目してんじゃん」
「……」
特に睨むようなことはなく、人形のように無表情な顔で、目の前にいる兵士を見つめている。
「……」
「この女気持ち悪いぜ、こんなのじゃイけねえよ」
「じゃあ風俗にでも通えばいいさ」
「俺は素人っぽい子が好きなの!」
そんな低俗な会話をしていると、車の前に一体のAデバイスが降りてきた。
「ちっ、バレてたか! 010Mを出せ!」
車はその場で止まり、後ろから随伴していたトレーラーから、敵Aデバイスが出現する。
「なんだよ、特殊部隊っぽい風体な割りには安物使ってんだな」
目の前に現れたAデバイスは武弘のものだった。
その場で自らの機体「不知火」を操作し、両腕部から巨大なブレード刃を展開する。
『敵Aデバイス確認。TBR-010M「カリバーン」デス』
敵Aデバイスのカリバーンは、片刃の剣を背中から引き抜き、その場で構える。
数秒、静寂が走る。
次に音が鳴ったのは、車のトランクが破壊される音だった。
「うわぁああああ!!!」
内側で待機していた兵士からすれば、いきなり観音開きのトランクから人の腕が生えてきて、自分の顔面を掴んでいる。
そして、顔面を掴まれたまま、道路上に引きずり出された。
「随分軽いな、飯食ってるのか?」
そこに立っているのは、刀を持った相田だった。
「このアマが……!」
「52だからな。アマというよりはオバサンだよ」
「知るかよこのミソッカスが!」
兵士はナイフを取り出し、玲に切りかかる。
しかし、そのナイフは全て、肉ではなく空気を切り裂いた。
致命傷とかどころではなく、傷一つつけることもできず、兵士はいつの間にか転がされていた。
「くそっ……あ?」
ふと、自分の隣に、誰かの足があるのが見えた。
その足はよく見ると、先ほど兵士が履いていた靴を履いていた。
数秒後、生暖かい液体が自分の足を伝っていくのが分かった。
つまりは……
「あ、あぁ……」
「自分の足がいつの間にか切れてることにすら気づかんか? 超低温の刃で切ったから出血が遅れたのか……」
兵士はいつの間にか自分の股を尿で濡らし、湯気をたたせていた。
「しばらく寝てろ」
相田は兵士の頭を鷲掴みにし、魔法陣を展開する。
「あぐっ……」
脳みそに催眠効果を添加する魔法で、相手を眠らせられるのだ。
相田はそれをした後、トランクから車の中に入る。
「れ、玲さん……」
因幡はちょっと驚いたような顔をして、相田を見つめていた。
数秒見つめあっていると、運転席から兵士が飛び出し、サブマシンガンを相田に目掛けて発射する。
「ふん」
玲は刀を前に突き出し、弾丸を刀で全て切り刻む。
必要最低限の動き。それは、銃弾が向かう方向に、予め刀の刃を置いておくことで、勝手に切断されるという仕組みだ。
それを秒間20発分、つまり、一秒間に20個所へ向かう弾丸全ての射線上に刀を置かねばならない。
常人ならやったら腕がもげるところだが、相田は魔法で空気抵抗を軽減し、自分の腕の筋肉を強化することで乗り切ってしまった。
「なにっ!?」
「まぁ、よくあることだ。気にするんじゃない」
そういった瞬間、運転席にはAデバイスの足が振り下ろされる。
武弘の機体ではない。悠斗が到着したのだ。
「おぅ……」
不愛想な顔ばっかりしてる相田でも、その光景にはちょっと拒絶反応を起こしたのか、顔をゆがめた。
「悠斗君……?」
因幡は、足をどけた機体を見て、そんな声を漏らす。
「……お前、悠斗の機体分かるのか?」
「ううん、でも、悠斗君が入ってるってのは、分かる」
「……お前、一度会ったら気配だけで分かるタイプの魔法使いか」
玲は苦笑いをこぼし、悠斗の機体を見ていた。
すると、後ろからカリバーンが吹っ飛んできた。
「なんだよ!」
悠斗はコクピットでゆっくりしていたのを邪魔され、かなり間が悪かったせいでカリバーンをひたすらに殴った。
「わりぃわりぃ、キックぶち込んだら思いのほか飛んじゃって」
「お前さぁ……」
どうやら武弘が不知火でキックをかましたら、カリバーンが軽量すぎたせいで、予想より飛んでしまったようだ。
カリバーンは殴られたせいで顔面がボコボコになり、さながら顔にラッシュを叩き込まれたボクシング選手のようだった。
「どれ、因幡を連れ去った理由は知らんが……」
「会って半日とはいえ、友人を攫われたんだからよ……」
不知火はブレード同士をこすりつけ、火花を散らす。
ブロードソードは背中からカリバーンと同型のブレードを引き抜き、目の前に突き出す。
『落とし前をつけてもらわねぇとなぁ?』
まるで一昔前の仁義切ってる方々のように、前後からじりじりと迫る。
怯え切ってしまったのか、変形しその場から逃げようとする……
「おいおいちょっと待てよ、どこにも行けねえぜ」
武弘が不知火のブレードで脚部を切り裂く。
残った脚部は悠斗のブロードソードが掴み、道路に叩きつける。
逃げることはできず、二体のAデバイスに睨みつけられている状況で、遂に心が折れたのか、コクピットが開く。
物凄い泣き顔の兵士が、両手を上げて降伏の意志を示している。
不知火とブロードソードは顔を合わせ、どうしようものかとでも言いたげな雰囲気を醸し出していた。
すると、カリバーンが不意打ちでブロードソードのコクピットめがけて拳を放つ。
「悠斗君!」
因幡が叫ぶ。
ブロードソードはカリバーンの拳がギリギリ届かない部分まで引き下がり、その伸びきった腕を足でけり上げる。
すると、横からレーザーが飛んできて、その腕を消し飛ばす。
それに乗じるかのように、武弘が機体のカリバーンの上半身を滅多切りにし、鉄くずのそうめんを作り上げた。
「いやぁすまんすまん、ダミーの部隊にてこずらされてさ」
祐奈の声が聞こえてきた。
レーザーの飛んできた方向を見ると、巨大な砲身を背中にくっつけた、ブロードソードの倍はある巨大なAデバイスがいた。
あれこそが祐奈のAデバイス、TBR-009K「カノープス」だ。
Aデバイスが変形すると、悠斗らのブロードソードと比べるのもおこがましいほどにマッシブで、バケツ型の頭をしている、力士のような体系の人型となった。
「ダミーの部隊って、追ってた連中ダミーだったんですか?」
「ああ。しかもAデバイスが5体もいたよ。全部処分したがね」
カノープスが右腕に取り付けられている巨大な砲身をぽんぽんと叩く。
数秒後、遠くからサイレンが聞こえてきた。
救急車のものではなく、どう聞いても警察のものだ。
「そこにいる者全員動くなー!」
大量の警察機が押し寄せ、悠斗たちを囲む。
「……」
「……」
「……逃げよう」
悠斗たちは機体を変形させ、逃亡する。
「しっかり捕まってろ!」
「え? ちょ、待っ……!」
因幡は相田に抱え上げられ、悠斗たちの後を追った。
「まてぇ!」
悠斗たちを追いかけるため、数体の警察機が動き出す。
数時間、警察は彼らを追いかけたらしいが、誰一人捕まえられなかったという。
こんちわっす、軽沢えのきでごぜぇます。
ちょっと更新をストップさせていただきます。
あまり信用はないかもしれませんが、戻ってきます。
それでは、また。
登場機体
TBR-010M
「簡易量産機」
開発コードは「カリバーン」。
TBR-010A「エクスカリバー」の量産計画において発足した機体。TBR-010N「カレトヴルッフ」とは、次期主力量産機コンペディションで競い合った関係を持つ。
人間の脳回路を基にして開発された「バイオコンピュータ」を搭載、各部を簡略化したことで量産に成功した機体。
徹底的な簡略化、並びに改良を加えることで、大量生産を可能にしたうえ、高い性能をそこそこに維持できた。
基の機体が量産機としてはややオーバースペック気味だったのもあり、いい塩梅に調整されたと好評。
通常兵装:メガ・レール・マシンキャノン
殲滅砲:2Way殲滅砲
サヴェージ:ノーマル・サヴェージM
近接兵装:片刃式ヒートソード
TBR-009K
「超高出力殲滅砲連射型」
開発コードは「カノープス」。
巨大な殲滅砲用の砲身を、一発一発が致命的な威力を持つ殲滅砲を連射するために搭載した機体。
砲身の追加により連射力やエネルギーの収束量が増加し、実質的な殲滅砲の連射が可能である。
通常のAデバイスよりも巨大であり、人型形態時のサイズは25メートルである(通常、大体は12メートル前後)。
通常兵装:ショット・パルスキャノン
殲滅砲:超高出力殲滅砲
サヴェージ:ハイレーザー・サヴェージ
近接兵装:ビーム・ダガー




