幹枝
彼女のご両親にご飯をご馳走になった俊。数日後、美奈が腹痛を訴える。
「ドイツが降伏。これから日本はどうするのかしら。」
お義母さんが心配そうに呟いた。きっと勘付いているのだろう。負けていることに。
美奈のご両親に挨拶に行ってから数日後、彼女がお腹の痛みを訴えた。
「俊ちゃん、お医者様読んできてくれない?」
彼女は声を振り絞りながら言った。その姿が実と重なり、怖くなった俺は急いで医者を呼びに行った。
「おーい!出てきてくれー!おーい!」
今考えると無礼だと思う、だけど俺は必死だった。しばらく扉を叩いていると医者の奥さんらしき人が怪訝そうな顔をして出てきた。俺が用件を伝えると、すぐに医者と一緒に支度をして出てきた。そして俺たちは急いで美奈のところに向かった。美奈はとても苦しそうだった。
「美奈!大丈夫か?」
俺が聴くと彼女は頷いた。頷くのも精一杯のようだった。
しばらくして、部屋の中に産声が響いた。生まれたのだ。
「やったー!美奈、俺たちの子供だー!頑張ってくれてありがとう!」
俺は美奈に泣きながら抱きついた。すると彼女は笑って、
「赤ちゃんみたい」
と呟いた。赤ん坊は元気な女の子で、とても可愛かった。
「よし!決めた!名前は綾、山崎 綾だ!」
すると彼女は、うーん、と言うような顔をした。
「綾もいいけどさ、幹枝とかどうかな?可愛くない?」
確かに可愛い。名前は幹枝に決まった。
「俺がお父さんだぞー、幹枝〜」
そういう俺を見て美奈は幸せそうな笑顔で、だけどちょっと寂しそうな笑顔を浮かべていた。
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