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無の魔術師  作者: キリン
開幕
9/229

第九話

 家に帰ると母親から滅茶苦茶怒られた。

 そりゃそうだ、言い訳に「雪遊び」を使ったのだから。ココアさんの「魔法」が籠った飲み物を飲んでいなければ、玄関で震えながら怒られるところだった。


 そんな訳で今僕は風呂に入っている、石を削った湯船に肩まで浸かり、冷え切った体をゆっくりと温めている。


(今日は良いことと悪いことが、バランスよく釣り合ってるなぁ)


 そんな事を考えていたが、風呂の温かさといろいろなことがありすぎて、だんだんと眠くなってきた。


(いけない、寝るならベッドで寝なきゃ……)


 睡魔をいったん退け、僕は風呂から上がった。風呂と下着のある洗面所を繋ぐドアを開け、僕はタオルを取って体の水分を拭う。パンツを履き、長袖のシャツに袖を通す。


「あれ、鏡になんか付いてる」


 置手紙のような物が貼ってあった、「鏡を掃除しておいてくれ」と書いてある。

 溜息をつき、僕はタオルで鏡を軽めに拭いた。

 ぼやけていた鏡に映る物や、棚が鮮明に映った。


「……ほんと、なんでなんだろ」


 でも、僕だけが、鏡の中に写る僕の顔だけに、目や鼻と言った顔のパーツは無かった。

 母さんの顔は写すのだ、僕の顔だけが写らない。

 この鏡だけではない、少なくとも僕の人生の17年間、僕は自分の顔を見たことが無い。

 だから自分が不細工なのか、それともハンサムなのか分からないため、服はいつも母親に選んでもらっている。


「……なぁ、お前はどんな顔してるんだ?」


 答えるはずもない平らな何もない肉の面は、ただただ鏡の中で揺れていた。



「魔法世界の鏡」

現実とは違い、水の入った硝子の中に魔法が掛かっており、鏡から見える世界がそっくりそのまま映し出される

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公の顔が映らない。今後錬金術を生み出していくうえでどのように関わっていくのか気になります。
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