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無の魔術師  作者: キリン
開幕
7/229

第七話

 男性にしてはやけに白く華奢。クロウリーの情けない背中を茫然と見つめている僕は、数十秒経ってからようやく自分の状況を理解した。


「あっ、あの……ありがとうござ

「ふはっはっはっはっ! 礼などいいさ! 僕がやりたいからやったわけだし!」


 爽やかな笑顔を浮かべて僕の方を見てくるこの人は、冷静な目で視るととてもきれいな人だった。

 白狼を連想させる美しく白い短髪、澄んだ湖のような色をした瞳、男性にしては華奢なほうで、革靴を履き、青や水色がベースで銀の刺繍が入ったローブを着ていた。

 美しい見た目とは裏腹に、声は中々に低く、それが余計に魅力を深めているのも事実だった。


「僕はシガルレット・ココア、さっきのいじめっ子が言うとおり、「基本の魔術師」って呼ばれてる人種のうち一人さ、君の名前は?」

「ココアさん、ですね。僕はパラケルスス・ホーエンハイムです」


 ココアと名乗った男はにんまりと、ちょっと気持ち悪いぐらいに、笑い。僕に握手を求めてきた。


「ここであったのも何かの縁だ、記念に握手でもしておこう」

「えっ? あっ、はい……」


 恩人とはいえ初対面の他人なので、いきなり握手を求められて内心びっくりしている、そういえば、こうやって他人と握手をするのは、何時ぶりだろうか。

 意外と大きな手だという事が手袋越しでも分かった、右手と左手、左手と右手で一回ずつ握手をした後、僕は改めてお辞儀をした。


「本当に危ない所をありがとうございます……よければ家に来ませんか? 今日はいろいろあって、たくさん料理が出される予定なので……」

「だから、ただあのクソガキがムカつくからやったわけで、君を助けたわけじゃないんだけどなぁ」


 まぁいいか。ため息とともに頭をぼりぼりと掻いた。


「食事は遠慮しておくよ。昔から疑り深い性格なものでね、他人の家で食事はしない事にしているんだ」


ココアさんは僕の事をじっと見つめた。


「……君、いじめっ子には逆らっちゃいけないとか、やり返した方が負けとか、そんな甘い考えだと死んじゃうよ?」


 少し苛ついたような声だった、僕は慌てて弁解しようとするが、ココアさんは。


「なーんてね☆ まぁ、運が悪かったね今日は、今度は上手く逃げるんだよ?」


 僕の肩をポンポンと叩いた後、「縁があったらまた会うかもね~」と言いながら、ココアさんは僕に背中を向けて去って行った。


「……」


 僕はもう一度頭を深く下げてから、本来の目的地へと足を進め直した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公や他のキャラクターの立ち位置、及び個性ですね。その点に関してはしっかりと確立して書けていますね。馴染みやすく読んでいて面白いです。クロウリーに関してもちゃんと嫌われ役を演じきれていま…
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