第六十八話
「何故体に魔力が無くても「魔法」を行使できるのか。私の体が特殊なだけかもしれませんし、「記憶の魔法」自体が誰にでも使えるバリアフリーな仕組みの物なのかもしれません~。でももしも後者なら。それこそ、誰でも使える「基本の魔法」ですら使えない……体に魔力が流れていない人間でも使えるような、夢の「魔法」ですよね~ロマンチックです~」
僕も後者であってほしいなと思った。触れるだけで「魔法」が使える……魔力が無くても才能が無くても。いくら覚えても意味の無かった呪文や、いくら鍛えても岩を砕けないでいる体なんかよりも……僕は今初めて、大嫌いな「魔法」という概念に期待を抱いた。
「ですが、この「記憶の魔法」はまだまだ謎が多いんですよ~。世界にいる私も含めた三人の「魔法」の発動条件もバラバラで、効果も微妙に違うんです。そもそも魔力が体の何処から発生して、どうやって「魔法」という現象に昇華されるのか。そう言ったことがまだまだ分かってないんです」
抱いた期待が形を崩して落ちて行く。いやだ、まだ行くな。何も持っていないなんてもういやなんだ。
「だから、この「魔法」はまず誰でも使える「魔法」なのか、適性が無いと使えない超特異な「魔法」なのか。それを調べなければいけませんね~」
僕の手からこぼれ落ちた希望は、ひと欠片も残ってはいなかった。
授業終了のチャイムが鳴った。




