第六十五話
「今日は初日なので~まずは皆さんの名前を教えて貰いながら~自己紹介をさせていただきます~」
シンさんの柔らかい声のおかげでいくらかマシになったが、まだ震えている。隣の教室の静けさを感じるたびに、オロボ先生の威圧感が蘇る。
こちらを心配そうに見てくるソロモンに会釈をしながら、僕は何となくシンさんの話を聞いていた。
「それでですね~マヨネーズに唐辛子を入れると美味しいんですよ~?」
知ってた。何となく知ってたけども。まさかマヨネーズと唐辛子、そして何故か出来立てを連想させるホッカホカのゆで卵がどっさりと教卓の上にあるとは思わないじゃん、凄いおいしそうじゃん。どっから出したん? そりゃ「魔法」で出したんだろうけども。
「すげぇ……あの先生、連続で転移系の「魔法」、それに加えて熱系の「魔法」を使った!」
「流石は世界一の「魔法」推進校……これぐらい朝飯前ってことなのね!」
皆真面目かよ。いや真面目なのかこれ、授業に堂々と遅刻してきた教師が堂々と茹で卵喰ってるこの状態を尊敬できるか? いや無理だろ何これ。
「……別の意味でヤバイな」
もうバカバカしくて考えるのがめんどくさくなってきてしまった。




