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第五十四話
意を決して言葉を出す。
「パーシヴァルさん、僕「魔法」使えないからさ……調理担当やっていいかな?」
「いいですよ?」
親指を上にしたグーを出された、相変わらず無表情だったが、ほんの少しだけ表情が緩んでいる気がした。ノリノリの即答に僕は一瞬戸惑ったが、見なかったことにした。
取り合えず手を洗うべく廊下へと向かう、水桶と石鹸が一つで二つ……全部で三つ廊下には並べてあった。
僕は桶の中に手を突っ込み、石鹸を手の隅々まで擦りつけ、水で落とした。
適当に手に付いた水滴を吹き飛ばしながら、僕は教室に戻って行った。他の班は既に調理を始めていたので、少しだけ焦った。
教室に戻ると、ソロモンが椅子に座っていた。
「材料と調理器具は持ってきたが……ホーエンハイム、流石に使い方分かるよな?」
「いや流石に分かるよ……」
ニヤニヤしながら僕の肩に手を置いたソロモン、一気に親しくなった気がして、僕はちょっと嬉しくなった。
だが。
「……」
やっぱりパーシヴァルさんが睨んできている、ってか、さっきよりも怖い。




