第三十六話
廊下の方から足音が聞こえ、見覚えのある金・白・黒の三色が混じった髪色の女性がやってきた、手元には強い「魔女」の証である潰れた三角帽子が乗せてあった。
「あっ、ルナ先生だ」
「うわすっげぇまな板……ってなんだホーエンハイム、知り合いなのか?」
とんでもなく失礼なことを言うソロモン、そろそろ彼がこういう人間だという事がなんとなく分かってきたところで、僕は答えた。
「ちょっと呼ばれたんだよね……あっ、特に悪いことはしてないよ」
「朝の騒ぎだろ? お前も根性あるよなぁ、仮にも「円卓」の合格者の「魔法」を、素手で受けるだなんてよー」
見られていたことに少し恥ずかしさを覚えた。僕は不愛想に黒板の方を向き、そのまま片手でソロモンとの会話を終了させた。
気を取り直して授業開始のチャイムが鳴り響く、一斉に号令が行われ、教卓に立つルナさんが大きく息を吸って。
「皆さんこんにちは! 僕はルナ・ムガルカルラ、この学校で「数学」と「魔法式・術式」の教師をさせてもらってる!」
初対面の時と同じように明るい口調、おもに女子生徒から親しげな声、男子生徒はソロモンも含め、鼻の下を伸ばしまくっている。
「自己紹介代わりと言っては何だが、今回は僕の「魔法」をお見せしようと思う!」
急な展開に教室中がざわつく、もちろん僕も驚いていた。
普通、魔術師は自分の「魔法」をひけらかしたり、見せびらかしたり出し物にするようなことはしない、自分の手の内が知られれば逆算され、無効化されるからだ。
それでも、僕は興味があった、「魔術師」が使う「魔法」を、世界最高峰の学校の教師を務めるルナさんの、「魔法」どんなものかを。




