第二十五話
「あとはマーリン学長だけ、と言いたいところなんだけど……」
ルナさんが自分のこめかみに指を当てながら言う、マイペースに金平糖を食べているシンさん以外が、僕も含めルナさんへと視線を向ける。
「どうやら今日は『アヴァロン』から出られないらしいんだよね。やる事がある、とか」
その単語を聞いた時、僕は世界でも有名なお話の一部分を思い出した。
「魔術師」マーリン……当時のブリテン島はおろか、世界でもトップクラスの「魔術師」として名をはせた淫魔。それを倒すことは愚か、動きを封じることでさえも難しいと言われており、歴史上最強と呼ばれていた「円卓の騎士」の王である、アーサー王と互角の力を持つとされている。
だがブリテン島はもう一人、世界に通用する「魔術師」を生み出していた。
モルガン・ル・フェイ……マーリンと実力はほぼ互角であり「滅亡を呼ぶ女」と呼ばれ、かつての「円卓の騎士」を内側から破滅させた策士でもあった。
アーサー王伝説には、この二人に関する重要な話がある。
モルガン・ル・フェイはマーリンと互角だった。気まぐれとはいえ、「円卓の騎士」を守っている彼女が、モルガンにとっては邪魔だった。
だがマーリンは死なない性質を持つ淫魔の血を引いていた、死なない性質を持っているモルガンにとって、一対一で殺し合おうが得意の黒魔術で呪い殺そうが、時間が経てば蘇る……完全な泥試合だった。
そこでモルガンは考えた、殺さなくとも何もできないようにする方法……つまり、閉じ込めるという方法を。




