第二十二話
会議室……そう称するには余りにも、貫禄と歴史が詰まりすぎていた。
赤いカーテンで覆われた空間の真ん中に置かれたそれは、大きな丸いテーブル、円卓だ。
白い布が敷かれた円卓の上には金の盃のような「魔法」ランプが置いてあり、円卓を囲むように十三脚の古ぼけた椅子が置いてあった。
一見すればただの汚い部屋かもしれない。だが忘れてはいけない、この『キャメロット大学』は円卓の騎士たちが「実際に」使用していた不落の牙城、『キャメロット』をそのまま学校にしたという事を。
この部屋は恐らく、実際に円卓の騎士たちが使っていた「円卓」なのだろう、遠目で視ているだけで世界が違う気がした。
(こら、挨拶)
ココアさんに小声で言われ、僕は慌てて背筋を整えて深く頭を下げ、そして一気に上げた。
「しっ……新一年生のホーエンハイムといいます! その、初日から問題を起こして申し訳ございませんでした!」
僕の視線が円卓から椅子に座る教師の方々へと移ると同時に、ココアさんはため息をついた。
「……あちゃー、これは中々面倒くさい勘違いをしてるらしいね」
僕から見て右側の女性が苦笑いした。金と白と黒の三種類の三つ編み、赤と青の瞳が輝くその表情は落ち着いていて、ちょっとした「年上」のお姉さんのような雰囲気を漂わせていた。
それに対して服装は子供臭かった。膨らみの無い胸部から足元までを包む紫色のそれはドレスのような形をしていたが、装飾は胸元の宝石だけ。あとは強い「魔女」の証である潰れた三角帽子だけしか身に着けていなかった。
「ごめんね~。このお兄さんちょ~っと、ね? 変なところあるからさ」
両手を合わせた女性が席から立ち上がり、僕の方へと近づいてきた。先ほどココアさんから貰った飲み物で元に戻った腕を揉んできて、女性独特のいい匂いと何をされるか分からないという思いがこんがらがっていた。
「……ココアくぅん?」
「言われる前に言わせてもらうよ……ごめんなさい許してくださいお願いだから君のスペシャル柔軟運動だけは勘弁してくだっざいがぁっべぇヅッ! がぁぁぁぁぁああぁぁぁ!」
ココアさんの襟首を掴んだ三つ編みの女性の動きは素早かった。ココアさんを床に投げ飛ばし、そのままそのままココアさんの足をそれぞれ逆方向に曲げ始めた。右と左の足で綺麗な直線が描かれると同時に、ココアさんの物凄い断末魔が響いた。
「……あっ、君にはしないよ? ホー……えっと」
「ホーエンハイム、です……あの、その」
あー大丈夫大丈夫、そう言って三つ編みの女性は笑った。
「こいつ、いつも私の「魔道具」持ち出していくんだよね、試作中の回復薬がいくつか無くなっていたからね、まぁ今回は君の為に使ったから軽めの罰にしといたけど」
(これで軽めなのか⁉ いや、そりゃ泥棒は良くないけど!)
こんな様子だとあいつはとんでもないことになっているだろうなぁ、そう思いながら、僕はちょっとだけあのムカつくクロウリーに同情した。




