第二百二話
リュウ=アルビオンは剣を握りしめ、全方位の空気という空気を睨みつけていた。
(懐かしいな、ここは)
そう、ここで初めて戦ったんだ。あいつに……パーシヴァルに「決闘」を申し込まれ、その次に激昂したホーエンハイムに「決闘」を申し込まれた。恐ろしい拳と攻撃だった、あれだけ「気功の魔法」を使い、全神経を集中させたのは初めてだった……だが、俺が心配していたのはそこではない。
(あいつの拳は、迷いが無かった)
きっとテンションが上がっていたのもあるだろうが、それだけでは説明がつかない程狂気に満ちていた。俺はあいつから……本気の殺意と云う物を感じたのだ、本気で殺す、殺す! 無意識なんだろうが、口からそんな言葉が聞こえることもしばしばあった。同時にあいつは笑っていたのだ、ずっと……優越感と正義感に満ちた笑みで、俺を殴り続けていた。あのまま戦っていれば、彼は戻れなくなっていただろう。
「どうした? 滅茶苦茶考え込んでるような顔して」
「……アキレスか、持ち場はどうした?」
「大丈夫、今それどころじゃないのが向かってきてるからな」
無言のまま、アキレスは顎で俺を誘った。手伝え、と言う事らしい……俺は初めてこいつに助けを求められたことへの高揚感を感じ始めていた。
「……敵の数は?」
「三人だな、ホーエンハイムも呼ぼうとしたんだが……様子がおかしかったから無理そうだった」
少し不安になる気持ちもあるが、俺はその敵とやらを優先することにした。どれだけの実力なのか……マーリン学長とクロウリーのいない隙を狙うという事は、情報が漏れていると言う事だろうか? どちらにせよ排除しなければいけないだろう。
「油断するなよ」
「安心しろ、勝つさ。……今日は、晴れそうだし」
そう言って俺は風の「魔法」を体に纏わせ、アキレスはそのまま地面を走り……キャメロット大学の結界の外へと飛び出していった。




