第二百一話
清潔な布団に身をくるみながら見た天井。僕はこれが夢であることを瞬時に察し、上半身を起き上がらせた。見た所ここは自分の家のようだ……無駄に広い部屋の隙間には、あの父親が置いて行った「魔法」の本が埋め尽くしているだけ。僕は丸暗記した本を踏み、その上を容赦なく歩いた。
(状況を整理しよう、確か俺は泉に入って、あの剣を掴んで、それで……)
――ふと、胸に手が触れた。盛り上がった乳房に腕が当たり、何とも言えない暖かい感触と柔らかさが包んだ……さらしが巻かれていなかった。寝る時ですら外していなかった布が巻かれておらず、今気づいたが感じた事のない感覚が下半身と上半身を包んでいる……めくってみると、そこには女物の下着があった。
(……ああ、そうか)
自然と、部屋の隅に飾っていたそれに目が向いていた。近づけば近づくほど、僕は「私」の姿を凝視することになっていったのだ。肉付きの良い健康的な「女性」の体、鍛え上げられた筋肉が無く細い「女性」の体、肩まで伸びた金髪の「女性」の髪型。……ああ、何となくわかっていた、分かってはいた。でも認めたくなかったんだよ。
「うっ……ううっ」
これは、鏡の前で泣き崩れた「私」の……どうしようもない本音で、願いだ。




