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無の魔術師  作者: キリン
【第一期】第一章 キャメロット大学
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第二十話

「同じ『円卓』の合格者、だと?」


 ざわめく生徒たちのざわめきさえも搔き消し、クロウリーは高笑いした。


「馬鹿かお前? 俺とお前が同じ? 俺と同じ天才が、この学校だけで13人もいるだと? ……女。俺はお前らと違う、円卓の騎士如きに収まる器じゃないんだよ、俺は」


 クロウリーは会話をしていなかった。先ほどから自分の欲の事しか口に出していない、決して自分を曲げず、相手を捻じ曲げようとするその思考が、この場にいる全員に理解ができなかった。


 杖を突きつけている少女はため息をついた。


「なぜ学長が貴様に『円卓』の称号を与えたのか理解ができない、そもそも、貴様が本当にこの名誉ある学び舎に合格したことすら、私は信じがたい」

「あー、バレちゃったか~」


 わざとなのだろうか、とても大きな声で手を挙げ、ココアは金色の杖をクロウリーに向けた。


「合格させたのは僕だよ、「魔法」も勉強も面接も、全てが自分勝手で礼儀知らず、お灸をすえてやらなきゃ何をするか分からないからね。こうして「補導」って形でお説教してる訳さ」


 舌をぺろりと出し、ココアは金色の杖を懐にしまう。そのままパラケルススの隣に座ったかと思えば、大きな声でこう言った。


「パーシヴァル! いい機会だ、皆にまともな『円卓』の合格者ってやつを見せてやりなさい!」


 まるで新聞でも見るかのようにお気楽に拍手をする、自分を殺す気満々の狂人の目の前ですることではなかった。


「……」


 それに反応するように少女は……パーシヴァルは頷いた。改めてクロウリーの方を向き、杖を構える。


「本来、『円卓』同士の戦いは全力で行うものですが、貴方は円卓どころか合格者ですらありません。――『ロンギヌス』は使わないであげます、かかってきなさい」


 艶やかな唇から放たれたその言葉により、クロウリーは発狂した。罵詈荘厳の中に呪文が織り交ぜられ、少女へと火球や衝撃球が向かう。


「【跳ね返れ】」


 一言、杖を大きく振ると同時に、火と衝撃の塊はクロウリーの方へと向かって行った。


「あぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?」


 鈍い音と共に「魔法」は術者であるクロウリーの顔面に直撃し、白目を向き、鼻血を吹き散らしながら膝から崩れ落ちて行った。


 杖を懐に仕舞い、パーシヴァルは律儀にお辞儀をした。


「それから余談ですが、性別で人を差別する人間が私は大嫌いです」


 次の瞬間、まばらだった拍手が一気に拡散し、その場にいた全員が歓声を上げた。


 その中でココアさんは、鼻で笑って言った。


「やれやれ愚かだ、実に。同じ『男性』として恥ずかしいよ(笑)」


誰にも、誰にも聞こえない声だった。



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