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第二話
「……あっ、来た!」
僕が部屋に戻ろうとした瞬間に母親の声が聞こえ、振り返ると……なんと母親はベランダから身を投げ出していた!
「っっ!」思わず走り出して硝子の窓を開けるが、冷たい空気で頭が冷やされたのか、心配する必要が無い事に気づいた。
ベランダの下から爆風が吹き荒れ、冷たい空気が一気に部屋の中に入り込んだ。
母親が「魔法」を使ったのだろう、今頃爆風を従えながら着地して、引き気味の郵便局員から目当ての手紙をぶんどっているだろう。
「パラケルスス……パラケルスス―!」
下の階からドアが開く音が聞こえると同時に母親が二階へ上がってきた。荒い息を吐く母親の手には一通の手紙が、目からはぽろぽろと、涙が溢れかえっていた。
「……合格、おめでとう」
差し出された手紙に実感が持てないまま、僕は母親に抱き締められた。
「魔法」の使えない僕が、「魔法」を勉強する為だけの学校に合格した。
手紙の中には、生徒の印である「枯れない楽園花」のバッジと、「キャメロット大学」の制服を受け取るための許可証が入っていた。