第百六十八話
衝撃の余波は、遠くで剣を交える草薙達の元まで届いていた。
「――ルナ!」
「キャスパリーグだ! 範囲が広すぎる、相殺するしかない!」
最早剣を交えるクロウリーのことなど眼中に無かった。長刀を担ぐように構え、魔力全てを刀の切っ先に集中させる。――放つは一点、衝撃の壁に穴を開ける!
「これぞ八神の神髄、八首の大厄災を滅ぼす一撃である! ――『酒羅・素戔嗚』!」
辺り一帯を苦く甘い酒の匂いが包み込む……衝撃がほんの少し大人しくなり、次の瞬間さらに大きな衝撃により吹き飛ばされる。しかし衝撃全てが無くなるわけではなく、不完全な衝撃が迫る。
見た所あの一撃は、魔力を圧縮した状態から爆発させたもの……常人がやれば打撃程度で済む物だが、キャスパリーグの様な無尽蔵の魔力を持つ存在が行えば、一撃で国を滅ぼすことができるレベルの一撃となる。――だが、所詮は魔力。
「――『裂魔』!!!」
あるだけ魔力を絞り出し、なるべく広範囲に魔力を打ち消す。まるで鉛筆で汚された板の上に消しゴムを滑らせるように、大地を抉る衝撃は消え去った。自分が立つ大地だけが
、無傷のまま存在していた。
「一体……何が……」
ルナの声と同時に俺は崩れ落ちた。魔力の使い過ぎ、しばらくは動けそうもなかった。
 




