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無の魔術師  作者: キリン
【第一期】第五章 ココア奪還作戦
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第百五十九話

 どうやら僕は三日間、大学の保健室で寝ていたらしい。


「……」


 家路に付きながら、アヤマ先生と交わした会話を全て思い出した。この三日間の間でいろんなことが起きた……件の襲撃による「キャメロット大学」の長期臨時休校。「不滅の魔術師」マーリン及び教師陣の説明責任は山ほどあり、無事だった先生方は対応に追われているそうだ。


 それだけではない。今回の襲撃の主犯格が、なんとあのアーサー・ペンドラゴン……生きていたことも驚きだが、まさか自分の古巣を襲撃してこんな騒ぎを起こした。伝説に語られる正義の王とはまるで違う。

 そして協力者、あるいは初めからこういう計画だったのか? シン・ディザスター改め、災厄の魔猫キャスパリーグ。彼は「血界」を容易く破り、僕の腕を吹っ飛ばした……らしい。ある瞬間からあまり覚えていないのだ。


 ……最後に、ココアさん。

 腹をシンに貫かれ、意識を失った状態のまま「瞬間移動」の「魔法」で消えたんだとか。正確な安否は不明だが、アヤマ先生の見立てでは「絶望的」だそうだ。


(……僕のせいだ……僕が、もっとシンに目を付けていれば……)


 悔やむ事ばかり頭の中にあった。『幽霊車』がやってきても、僕は上を向くことができなかった。


『クソ塗りたくったような顔だな』

「……」


 フロッツさんは中々に厳しい顔をしていた。何か言おうとして……でも、やっぱり飲み込んで、いつも通りニッコリ笑って。


『よぅしわかった! 喜べ「無の魔術師」、今日はお前を素敵な場所に連れてってやる!

 お前の友達も一緒になぁ‼」


 いきなり高いテンションで喋りかけられても困る……軽い会釈の後、僕は奥の座席に向かった……あれ?


「パーシヴァル……さん?」

「良かった……目が覚めたんですね!」


 ホッと胸を撫でおろすパーシヴァルさん。いかんいかん、けしからん目線を向けては……咳払いしてから横を見ると、そこにも見覚えのある二人がいた。


「……無事で何よりだ」

「よぉ、腕はちゃんと治ったか? よしよし……」


 アキレスとリュウが座っていた。あれ? 学校は休みのはず……ってか、二人が乗る『幽霊車』の運転手はフロッツさんじゃなかったような。


「えっと、あはは……もしかしてみんなでお見舞いに来てくれたの?」

「それはついでだ。……とにかく座れ、病人が立ち話をするな」


 やけに棘のある親切をリュウから受け取り、僕は苦笑いのままパーシヴァルさんの席の隣に座った……あれ、何で僕、隣に座った? 汗かいてないよね……?


『うっし、皆座ったな? ――お嬢ちゃん、本当にいいんだね?』

「もう覚悟は決めました」


 フロッツさんの厳しくも、「分かった」という深い頷き。直後『幽霊車』は動き出し、景色は一気に様変わりしていった……なんだかみんな張り詰めた感じだ。


「……ねぇ、フロッツさんが言ってた素敵な場所って……」

「そうそう、大事なことを言うのを忘れていました。今回私たちは遠足に行きます」


 は、はぁ。遠足……。何となく会話をちょん切られた感じがするがまぁいい、パーシヴァルさんの話は続いた。


「持ち物は食料、水、適当な「魔具」……あと、杖と武器ですね」

「????? あの、行き先は……?」


 パーシヴァルさんはここぞと言わんばかりに両腕を広げた。リュウとアキレスはため息をつきながら、それでも厳しい顔で目を逸らしていた。


「この『幽霊車』の行き先は『アヴァロン』の裏側。そして遠足の最終目的……いいや作戦。その名も『ココア奪還作戦』です!」




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