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第十二話
二階から降りて来た僕を見ると、母は何ともいえない表情になった。
何故素直に喜んでくれないのかと疑問が浮いてきたが、それはすぐに沈んだ。――父の姿を重ねたのだろう、母から見れば僕は若い頃の父に似ていて、父の卒業した大学もまた、同じ『キャメロット大学』だったのだから。
「……大きくなったね、そっか、もう十七歳だもんね」
僕が握っている皿とフォークを受け取り、代わりに母は僕に、重厚感のある何かを渡してきた。
「貴方が、魔法大学に行きたいって言い出した時は不安だったけど、貴方はもう子供じゃないものね」
渡された物が「枯れない楽園花」のバッジだと気づき、僕は母の言葉と共にバッジを握りしめた。
「……行ってきます」
「行ってらっしゃい、優しい優しい、「無の魔術師」さん?」
皮肉も籠ったジョーク、笑うかどうか迷って、僕は笑った。




