表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/17

第7話 日本語

突然フレイの声が聞こえたので、びっくりして叫びそうになったが、なんとか堪えることができた。

 



(「あはははは!びっくりしすぎだよ〜」)



(「いや、そりゃあびっくりしますよ…。それでいきなりどうしたんですか…」)



(「いや〜、僕が下界に干渉できる日は1年で今日しかないんだよ〜」)




 フレイの話では、新年の始まりの日に神官と天空の樹を通じて人々の信仰心を集め、その信仰心を力に変えることで世界の均衡を保っているという。

 

 つまりは信仰心がフレイの力になるということだろう。その際に下界と神界が一時的に繋がるので、俺と話すこともできるらしい。木が大きくなったのは集めた力が漏れ出しその影響で大きくなるが、ある程度まで大きくなると止まるという。



(「それで概ねその話は分かりましたが、俺に話しかけた理由はなんですか?」)



(「うん〜…、元気にしてるかなと思ってね…」)



(「うん?本当ですか?何か隠してるような気がするんですけど」)



(「あまり詳しい事は言えないんだけど……。ライト君はこれから本当に大変かもしれないけど、どうにか頑張ってね!それとごめんなさい!それじゃあまたね!」)



(「え、どういう事ですか!教えてくださいよ!おいっ!フレイ!!」)




 その言葉を残し、フレイとの通信は切れた。なんのことだか全然分からないけど神様が直に謝るほど大変という事は相当やばいんだと思った。魔王関係の話かと思うけど今さら考えたところで何かが分かるわけでもないので、いつも通り過ごすことにした。




 夜は大きな焚き火を作り、村中の人達でバーベキューなどをして盛り上がった。


 ジャンはゴルドさんなどの仲間達とお酒を飲み交わし、ルミエはクリスさんと楽しそうに話していた。

 ファナもだいぶ大きくなったが、1歳なので会話などはまだ出来ない。俺とファナの他にも子どもがいたが、皆同じような年頃なので俺としては会話もできず、少々退屈であった。


 そして、時間は過ぎ、宴も滞りなく終わった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 それから数ヶ月が過ぎた。



 

 俺はその日以降ルミエとジャンと積極的に話すようになり、2人とも前より元気になったような気がする。ルミエとも毎日走る練習を続け、ステータスもだいぶ伸びた。



 そして、俺は強くなるために魔力増強とステータスの底上げ以外に、新たなスキルの獲得を目指していた。



 まず、ジャンが剣術スキルを持っていたので教えてもらおうとしたが、危ないからまだダメだと言われてしまった。

 


 次に前世で野球をやっていたこともあり、投げる練習をしてスキルを手に入れようかと思った。そこで、手頃な大きさの石を探し、投げる練習をしようとしたのだが、投げられる場所がなかった。予定ではその辺にある木に向かって投げようと思っていたのだが、村の中には木が生えていなかった。石垣に向かって投げようかとも思ったけど、それもダメだと言われてしまった。




 俺は諦めて家の中で出来るものにした。


 

 それはゾーンに入る練習である。



 ゾーンとは究極の集中状態のことを言い、その状態になると感覚が研ぎ澄まされ、相手の動きがゆっくりに見えるようになったりするという。


 ゾーンに入ることが出来れば、戦闘の時にも大いに役立つと思ったのだ。ゾーンに入るためによく行う練習は座禅を組み、瞑想することだ。


 瞑想とは無心になり、想念を集中させること。


 その行為がゾーンに入る事と似ているという事らしい。



 それから俺は、毎日1時間ほど座禅を組み瞑想をしている。だが、出来ている時と出来ていない時の差が明確には分からないので、回数も数えることが出来ない。ゾーンのスキルを得るのは相当難しいと思った。ひょっとしたら一生このスキルは得られない可能性もあるが、取り敢えず毎日続けていこうと思う。






 そして、俺は2歳になった。


 去年と同じように誕生日会をしてもらった。今年はお肉料理がたくさんあった。どのお肉も美味しかったが、特に美味しかったのはワイバーンの肉だ。ジャンが少量だが、今日のために買ってきてくれたらしい。前世で特上カルビを初めて食べた時も衝撃を受けたが、ワイバーンの肉は比較にならない程旨かった。



 肉の余韻に浸りつつも魔力増強は忘れずにやった。現時点でのステータスはこんな感じだ。





【名前】ライト   【年齢】2歳

【レベル】1 【職業】無し

  

 HP : 61 MP : 304


【体力】20 【筋力】18

【速度】21 【耐久力】12

【器用】15 【知能】122


[ユニークスキル]

 静電気Lv6


[スキル]

 痛覚耐性Lv1


[職業専用スキル]

 無し


[EXスキル]

 最強道LvMax


[ユニークスキル]

 静電気Lv6 299,404/1,000,000

 微弱な静電気を起こすスキル。

      消費MP1 クールタイム0,8秒 




 魔力は言うまでもないが、他のステータスも順調に向上している。HPに関しては他のステータスよりも格段に伸びがいい。HPは前世での知識と同じように生命力そのものだ。HPが0になれば死ぬ。生命力の鍛え方なんか正直分からないが今のところ他のステータスを鍛えることによって伸びている。



 他の【体力】【筋力】【速度】の伸びは良いが、【耐久力】【器用】【知能】の伸びは良くない。




 【耐久力】の鍛え方は自分を痛めつけることだと思うが、2歳児の身体では少しきついような気がするので、後回しにしている。それに毎日傷だらけになってたら、ルミエとジャンに心配されてしまうし、最悪の場合外に出させて貰えなくなるかもしれない。




 【器用】の伸ばし方は今のところよく分からない。最初は細かい作業をすれば、上がると思ってルミエに教わりながら編み物をしていたのだが、一向に上がる気配が無いので、やめてしまった。

 

 もしかしたら、戦闘職における【器用】と生産職における【器用】はそれぞれ違う器用さなのかもしれない。毎日走ってるけど、それだけでも【器用】が上がっているので、取り敢えず、本格的に調べるのはもっと身体を動かせるようになってからでも遅くはないと思った。




 そして、最後は【知能】である。


 【知能】は現段階でも他のステータスに比べれば十分高い。だが、2歳になるまでに【知能】は”2”しか上昇してないし、将又、何故”2”上昇しているのか。そういうこともあり、【知能】の上げ方を知っておいても損はないので調べておきたいと思った。



 前世では魔法使い限定だが、【知能】が高いほど強力な魔法が放てるのは定番だったので、この世界でもそれを期待している。正直、転生される前にエレノア様が職業はランダムで決まると言っていたし、いつ職業が貰えるのかも分からないので、【知能】を上げるのはもっと後回しでもいいような気もするが、万が一魔法使いになった時に後悔するので出来る事は早めにやっておきたい。


 


 そんなこんなで、時間だけが過ぎていき、一向に【知能】の上げ方は分からないままである。気付いたらあれから既に3ヶ月が経ってしまった。


 11月になり少し肌寒くなってきたが、今日もルミエと一緒に走る練習をしていると、また、ハロ爺が来た。


 ハロ爺は天空の樹を植え、皆んなで祈りを捧げる時に前に出ていた神官である。名前がハロルドと言うので、ハロ爺と呼んでいる。ハロ爺は元々毎日村の中を散歩するのが日課だったが、最近では俺と走るのが日課になっている。多分暇なのだろう。



「ライト君、今日の走りにはあまり気合が見られんようじゃが、何か考え事でもしてるのかい?」



「いや〜、大したことはないけど…。」



「そうには見えんのじゃが………。今日はこの辺で終わりにしよう。何か悩みがあるなら言ってみるのじゃ」



「いや、いいって…」



「じゃあ気晴らしにわしの家に来ないか?て言っても家には本ぐらいしか無いんじゃがな……」




(本…、本!!今まで知識量を増やせば【知能】が伸びると思っていたんだが、そもそも知識量を増やす手段が無かった、だけど、本があるならそれも出来るかもしれない!)


 


「行く!本読みたい!」




「お、おお……。この歳で本に興味があるとは…。まぁ今まで見ててもとても2歳児には見えんかったしな…。あ、お母さんも宜しければご一緒にどうぞ、」



「あ、はい、すみません、ありがとうございます…。」





 そうして、ハロ爺の家に行くことになった。 




 家に着くとハロ爺の奥さんのアーリエさんが出迎えてくれた。


 家にはたくさんの本が置いてあり、すぐに見てみたかったが、お茶やお菓子を出して貰ったのでまずは頂くことにした。


 その際、ハロ爺と話していたが、ハロ爺とアーリエさんは元々王都で暮らしていて、ハロ爺は教会に所属しながら学校で先生をしていたらしい。老後は静かに田舎で暮らすと決めていたのが、中々引っ越すチャンスがなかった。新しく出来た村には神官を派遣しなければならない決まりがあるのだが、アレク村が出来た際に立候補して、この村に来たという。




「学校の先生だったなら僕にも色々教えて欲しいな〜」



「勿論、構わんが、まずは字を覚えることが先じゃな」



(あ、そういえばこの世界の字知らないわ。ステータスの字は日本語だったけど、あれは魔法かなんかで読めるようになってるのかもしれないな)



「分かった!じゃあ字教えて!」



「じゃあ、早速だが、これを覚えて貰おう」




 そう言って出された紙に書かれていた字はめちゃくちゃ読み慣れたあの字だった。



(え。平仮名やんけ!この世界は日本語なのか!いいところに転生させてもらったな〜、待てよ…。だから俺の知能は生まれつき高いのかもしれないな。ルミエは読み書きはあまり出来ないって言ってたし。)



(あ…。全部覚えてんだけど、2歳児が知ってるわけもないし…、でも演技するのも時間の無駄だなぁ。ここは天才児の振りしとくか…)




「覚えた!」



「いやいやいやいやもっとちゃんと覚えよう…」




 この後、ハロ爺は驚き過ぎて腰を抜かすのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ