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第2話 異世界転生

夏のある日、真夜中に一つの産声が鳴り響いた。


「頑張れルミエ、あと少しだぞ!」



「ええ……んぐっ…あああああっ」



「ふぎゃぁあああ!んぎゃああああ!んぎゃああああ!」



「よく頑張ったな、ルミエ」



「ええ、あなた…」



「男の子だぞ!ルミエ!ほら、抱っこしてやれ」



「とても可愛くて、温かいわ。大事に育てていきましょうね。あなた…」



「ああ、そうだな…」



「それでこの子の名前は考えてあるの?」



「ああ!もちろん考えてあるぞ!名前は『ライト』だ!」



「あら、いい名前ね。でもいろいろ考えていたようだけどその名前は初めて聞いたわ。」



「確かにそうだったな。いろいろ候補はあったんだが、いきなりこの名前が思い浮かんでな。何故かこれしかないって思ったんだ。」






ーーーーーーーーーーー




(んっ、ん〜〜〜…ここは何処だ…?)



(てか目が見えねーし体もあんま動かね〜…布か何かに包まれてる感じだな、でも耳は聞こえるぞ、女の人と…男の人の声も聞こえるな…



 なんとなく転生したのは分かったが、どんな状況なのかまではよく分からなかった。



(んっ、急に眠気が…また、起きてから考えよう……)







 それから1ヶ月が過ぎた。どうやら男の子の赤ん坊に転生したらしい。しかも名前は前世と同じ『ライト』だ。この世界の言葉は日本語のようだが、漢字などがあるかどうかは分からない。呼び方が同じなのは神様達が何かしたのか、それとも偶然なのか。とりあえず名前が変わるのは紛らわしいので結果オーライである。

  



「ライト〜、おっぱいの時間でちゅよ〜」




 そして、目があまり見えない状態でも綺麗だとわかるこの女性が俺の母親でルミエという。

 

 水色の髪を紐で縛って腰まで伸ばし、青色の眼をしている。



 ルミエはまだ18歳で、前世の俺の年齢とそう変わらない。同年代のおっぱいを飲むと思うと少し興奮してしまうかと思ったが、そんなことは全くなく、まるで賢者にでもなったようである。



 ルミエはいつも布や糸を織ったり編んだりして服を作っている。初めて見たときは、凄まじい速度で出来上がっていく服を見てめちゃくちゃ驚いた。




「ライト、ルミエ今帰ったぞ〜」



 今帰ってきたのが俺の父親のジャンだ。赤色の髪で、体格もよく、筋肉質である。ワイルドイケメンといった感じだ。歳は19歳で前世の俺と同い年である。



 ジャンはいつも夕方頃に帰ってくる。仲間たちと冒険者をやっており、6日に 1度帰って来ない日があるが、その次の日は6日分の食べ物を持って帰ってくる。多分遠くの街に買い出しに行っているのかもしれない。仲間の中にも1人妻子持ちがいて今年子どもが生まれたようだ。つまり俺と同い年である。その子は女の子らしく、大きくなったら守ってやれとジャンからよく言われるが、生後1ヶ月の俺に言ってどうするんだと思う。



「今からご飯にするわね」



「ああ、ありがとう、今日は肉の他にも栄養のあるものを沢山買ってきたからいっぱい食べてくれ、いいお乳を出すためにも大事だからな」



「ありがとう、あなた、でもこんなに沢山は食べられないわよ」



「それもそうだな」



「「あはははははは」」



(この2人はとても仲が良いよな〜、ラブラブだし、今はまだ3人だけどいつか弟か妹ができるかもな)



(そんなことよりいいお乳を出すことはとても大事だ、俺の計画にも関わってくることだからな)



 ライトは転生した時、せめて3歳あたりに転生させてくれと愚痴っていたが、今はこれで良かったと思っている。なぜなら身長を伸ばせるからだ。ライトは前世あまり身長が大きくなかったこともあり、身長を伸ばすために何ができるか調べた際、身長を伸ばすために1番重要な時期、それは0歳から1歳までの第一次成長期であることを知っている。この時期は食べれば食べるほど横ではなく縦に伸びるのだ。



 だからライトはたくさん栄養を摂ることを心がけている。この世界に粉ミルクのようなものがあるかわからないので、飲み過ぎてお乳が出なくなったらどうしようかと思ったが、幸いルミエのおっぱいも大きく、お乳も枯渇することがなかったのでよかった。



(てか飲み過ぎた〜、うぷっ…これも背を伸ばすためだ…)


(こんなに飲んでるのにまだまだおっぱい出そうだぞ…、まさかこれでも足りないのか……)



(まあこれは俺がどれだけ飲めるかだからなぁ、とにかく全力を尽くすしかない……、それよりも問題はあれだよな〜…)



 ライトは転生したときの定番中の定番、魔力の増強を試みているのだが、まず自分に魔力があるのかどうかさえ判らない。



 前世の知識を使ってあらゆることを試している。 



(くっそ〜、イメージだけじゃ魔法でねーのかなぁ、とりあえず魔力があるのかだけでも調べる方法ねぇかなぁ。やっぱり詠唱が必要なのかな……、早く喋れるようになりてぇ〜)



(これができなきゃ魔王なんか倒せねーぞ)


 

 まだ、生後1ヶ月のためまだ動けず、調べる方法を探すことさえできなかった。



(おっぱい飲んだら眠くなってきた……、背を伸ばすには寝ることも大事だからな…今日は諦めて寝よ。)


 疲れたのか分からないが一瞬で眠りにつくのであった。



 翌日。今日もいつも通りの1日を過ごし、夕方になってジャンの帰宅を待っていた。

 


「ライト、ルミエただいま!!」



「あら、あなた、おかえりなさい。それにしてもそんなに興奮してどうしたの?」



「今日は皆んなで大物を倒したんだ!!少し見にきてくれ!」




(お、なんだなんだ、そんなにすごい奴を討伐したのか。もしかして初めて外に出られるかも!)





「でもあなた、ライトも一緒で大丈夫なの?」




「ああ、少しぐらいなら大丈夫だろ。俺がいるんだし危ないことにはならないさ!」




(初めての外だ!家にも窓はあるけどそこまで行けないしな)




 外に出てみると夕焼けが差し綺麗であった。自分の家の周りにも家は結構な数があり、ざっと30軒ぐらいはあるだろう。でも街というよりは村である。どの家もあまり大きくはないが、ほとんど新築である。うちの家もまだ新しい感じがしたが、もしかしたらこの村は最近できたのかもしれない。




 しばらく進むと巨大な何かが見えてきた。





「今日捕まえたのはビッグカウの中でもとびっきり大きいやつだ!!どうだライト!すごく大きいだろう、父さんも頑張ったんだぞ!」




(え。でかすぎじゃね?これ牛なの?)




 そこら辺の家が一階建で高さ3メートルくらいあるが、そこに倒れてるビッグカウは横は6メートル程あり、縦は家と同じぐらいある。立った状態だともっとでかいのだろう。




「おう!ジャン来たか!」




「おう!ゴルド、ルミエと息子のライトも一緒だ」




(ゴルドって人めちゃゴツいな、顔もだけど身体もすげー、ジャンよりも腕まわり太いぞ)




「ルミエさんは相変わらず綺麗だな〜」




「お久しぶりです。ゴルドさん、いつも夫がお世話になっております。」




「いやいや、世話になってるのはこっちの方ですよ、ジャンにはいつも助けられてばかりで〜、今日はライトも一緒なんだな初めて見たけど珍しい髪色してんだな、まだ生後1ヶ月か?」




「そうだ、とても可愛いだろ〜ほらライト挨拶できるか?」



「生後1ヶ月じゃできるわけねーだろ、たまにお前も冗談言うんだな」




(喋れないからな〜とりあえず手挙げるか、よっ!的な感じで。)




「おお!!手挙げたけどこれ挨拶なのか?」




「ライトもう一回挨拶できるか?」



(よっ!)



「お前の息子すげーな!天才じゃねーのか?」




「当たり前だろ、俺の息子だからな」




(まあ見た目は赤ん坊でも中身は19歳だしな、てか俺の髪色は珍しい色なのか?そういえば生まれてから自分の顔も見てねーな、今度見てみてーな)




「ああそうだ、今日は俺の家内のクリスと娘のファナも連れてきたんだ」




(クリスさんは綺麗なんだな、髪色も金髪だし、ファナちゃんも金髪だ、この子がジャンがいつも言ってる同い年の子かな?)




「どうも、妻のクリスと娘のファナです。うちの夫がいつもお世話になっております。」




「クリスさんもお久しぶりです。ゴルドとは幼い頃からの親友でお互い助け合っています。今日の狩りの時も助けられましたよ。」




「ファナちゃんもだいぶ大きくなったな〜生後何ヶ月だ?」




「生後4ヶ月だな、ほらファナも挨拶できるか?」




「………。」




「流石にまだ無理か〜、お前の息子すごすぎだろ」




「まあな!」



「ライト、この子がいつも言ってる女の子だ!ちゃんと守ってあげるんだぞ!」




(やっぱりこの子がそうか。てかいつも言ってる自覚はあったのね…)




「おいおい、ファナだって俺の子だからな!絶対そこらの男より強くなるぞ!」




(まぁ、たしかにこのゴルドって人に似たらめちゃくちゃ強くなりそうだな…)




「あ、そうだビッグカウをこれから解体すっからあそこの広場まで運こぶの手伝ってくれねーか?」



「ああ、任せろ!」



 そう言うとジャンはライトをルミエに預け、ビッグカウの方に近づいていく。少し屈伸をしてビッグカウの中央に位置どった。




(ん?ジャンは何をするつもりなんだ?)




 黙って見てるとあろうことか家よりも巨大なビッグカウを1人で持ち上げたのだった。

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