第13話 神託の儀
神託の儀、当日。
朝目覚めるとまだ外は薄暗く隣ではまだファナがぐっすりと寝ていた。
(早く起きすぎたなぁ、まだ朝の5時だ、昨日はいつもより早く寝たからな、ファナはまだまだ起きそうにないか。)
(2日間は馬車で野宿だったし昨日は色々歩き回ったし、疲れてたんだろう。)
(やっぱり時計があるのは便利だなぁ、買って帰りたいけど高いのかなぁ)
俺はファナを起こさないように静かに部屋を出て食堂の方に行くと、既にハロ爺がお茶を飲みながら読書をしていた。
「おや、ライト君おはよう、それにしても早いね、眠れなかったのかい?」
「ハロ爺おはよう、いや昨日は早めに寝たから早く起きちゃったんだ、ハロ爺も早起きだね」
「まあのう、朝は静かで読書に最適なんじゃ、それに今日はわしにとっても大事な日じゃからの」
「そっか、ハロ爺も神官としての責務があるんだよね」
「そうじゃ、まあ今回はライト君達がどんな職業を貰えるかの方が楽しみじゃな」
「そんなに期待しないでよ、期待はずれだったら嫌だし」
「分かっておるよ、どんな職業でも祝福するよ」
その後もハロ爺と雑談をしていると、ファナや他の子も起きてきたので、皆んなで朝食を取った。
朝食を食べ終わるとハロ爺は神託の儀の準備があるというので先に神託の儀が行われる教会
に向かうと、俺たちは神託の儀が始まる前にデラパルトさん達が迎えに来ると言っていたのでそれまでは宿屋の部屋で各自準備などをして待つことになった。
朝9時
デラパルトさん達が迎えに来て一緒に教会に向かったのだが、道中は今回の神託の儀を受ける子ども達で賑わっていて、教会の前には行列が出来ていた。
「こんなにいるんですね」
「そうだね、この領内だけでも毎年2000〜多くて2500人の子ども達が神託の儀を受けるからね」
「結構いるんですね、他の領もこのくらいいるんですか?」
「そうだね、どこの領もそんなに大差はないと思うよ」
「そうなんですねぇ」
最初はこの領内だけでこんなにもの子ども達が神託の儀を受けるのかと驚いたが、よく考えてみれば少ないのかもしれない。この国には貴族が納める領土が約200あり、どこの領土も大差がないなら今年神託の儀を受ける子どもは約40〜50万人、となるとこの国の人口は3000〜4000万人程度だと考えられる。
この国の面積は多分前世のロシア連邦より少し大きいぐらい。その大きさにも関わらずこの人口はやっぱり少ないと感じる。
「神託の儀って結構時間かかるんですか?」
「そうだね、1人ずつやるから全員終わるのは夕方かな」
「なるほど、結構かかりますね」
「でもずっと待つわけじゃないよ、流石に教会の中に全員は入れないからね、町村単位で受付して順番が来たら行くって感じだね、それまでは自由だけど呼ばれたらすぐ行けるように教会の近くにいた方がいいね」
「確かにその方がいいですね」
俺たちは受付を済ませて、順番来るまで待つことになった。幸い俺たちは早く受付をすることができたため、後1時間後くらいには神託の儀を受けられるらしい。
そして、ファナやデラパルトさんと雑談しているとすぐに順番が来てしまった。
「アレク村の方たちですね、順番は次の次になります。それまでは教会の中の待合室でお持ちください。」
「わかりました。それじゃあ僕はここまでだから、皆んなが戻ってくるまで外で待ってるよ」
「わかりました、いってきます」
俺たちは待合室に案内されそこで再び待つことになった。
「ライト、緊張してきたね」
「そうだな、かなり緊張してる」
「ライトでも緊張するんだね!」
「俺のことなんだと思ってんだよ… なんの職業貰うかで人生大きく変わるんだぞ、今まであんなに頑張ってきたのに、生産職とかだったら俺泣くぞ」
「確かにそうだよね、私もライトのおかげで強くなれたから、これからはライトの役に立てるような職業がいいな」
「ファナは拳士系の職業だと思うよ、あのEXスキル持ってるし」
「ライトだってすごいEXスキル持ってるんだから、きっとすごい職業だよ!」
「うん〜…それならいいんだけどな…」
そして、とうとう俺たちの番が来た。
神託の儀が行われる場所は最奥にある部屋。
その部屋の中に入るとその部屋はとても広く、横の壁や天井にはいろんな絵が描かれていた。天井の真ん中にはフレイの絵が描かれているので、他の人達も多分神様かあるいは天使だろうか。
そして前に進むと教壇にはたくさんの神官がいて、その奥にはフレイの大きな彫刻があった。
正直、この世界の教会がこんなに綺麗だとは思わなかった。地球の建物と遜色がないほど綺麗だ。
「私は大神官のラターシャ=メルエゴンだ。それでは君たちの神託の儀を行う。1人ずつ教壇の前に来てくれ」
「じゃあ、俺が先に行くぜ!」
1人目はジャ◯アン…じゃなくてトールが行くようだ。
「それでは始める。『汝の運命、この職業と共に。』スキル『神の啓示』」
スキルを発動するとトールの下に魔法陣が浮かび上がり、教壇にある水晶が光り輝いた。
「君の職業は『狂戦士』だ、中級職とされている。君には是非エメラス学園に来てもらいたい。強制はしないが、ここを出たら係りの者に説明を受けてもらう」
「へっ、やったぜ!」
中級職も100人に1人といった割合だが、トールがそのような職業になるとは正直驚いた。
そのあとも着々と進み、ヒョロガリのレミールが呪術士、栗頭のナッシュが斥候、他の3人はそれぞれ商人、農家、建築士と生産職であった。
そして次はファナの番だ。
「じゃあ、先行ってくるね!」
「うん、期待してるよ」
同じように大神官がスキルを発動すると、ファナの下に魔法陣が浮かび上がり、水晶が光り輝き、水晶を見た大神官は驚きの表情を浮かべていた。
「ま、魔拳聖……、まさか最上級職が出るとは…」
そう大神官が呟くと周りにいる神官も騒ぎ出し慌て始めた。
「これはすぐに領主様にお伝えするんだ!」
「君の職業は現在この国に3人しかいない最上級職。君で4人目だ。今日だけでは説明しきれないものもある、後日君の家に領主様の代理人が説明しに行くようにするからそれまで待っていて欲しい」
「は、はい…」
皆んな慌てているようだけど、ファナを知っている俺から見れば当然の結果だと思う。ファナの才能とEXスキルを見れば、この結果以外あり得ないだろう。
まぁ上級職の上に最上級職なんてものがあったのは驚いたけど…
ようやく俺の番が来た。先程、ファナがすごい職業を出してしまったのでおまけ感は否めないが俺にとってはとても重要だ。
少し急かすようにスキルを発動し、俺の神託の儀は終わった。後はなんの職業か聞くだけなのだが、大神官が唖然として答えようとしない。俺もすごい職業かと期待したが、反応がどうにも違う。ファナの時とは違い、何か怖がっているような気もする。
長い沈黙が終わるとようやく大神官の口が開いた。
「君の職業は… ね、ネクロ、マンサー…だ」
(ネクロマンサーか、確か前世の知識だと死体とかを操って戦う職業だよな、うん〜…ゾンビとかちょっと気持ち悪いけどとりあえず強ければいいや、てかなんでそんなに怖がってるんだろう…)
「ネクロマンサーだって!大神官様どうすれば!」
周りの神官がファナの時以上に慌てふためいている。
「皆のもの鎮まれ!彼はまだ子どもだろう、しかもあの事件が起きたのはもう100年以上も前のことだ、彼をあの大罪人と同じ目で見るのは御門違いだ!」
何かよく分からないけど、俺の職業が何か問題があるらしいことはわかった。
「君にはわしから説明するから、君だけここに残っておれ」
「はい…、わかりました…」
そうして、全員の神託の儀が終わると、俺以外の村のみんなも出ていき、大神官以外の神官も皆部屋を出て、2人きりで話すことになった。
「何から話すべきか…、君が与えられたネクロマンサーという職業はこの国では禁忌の職業とされておる。そして、これは100年以上も前のことだが……」
大神官の話ではこうだ。
100年以上前、ネクロマンサーという職業が与えられた1人の男がいた。その男もまた騎士を目指し日々精進していた。
努力家で剣の才能もあったが、ネクロマンサーという職業は全く使えず最弱の魔物であるゴブリンにすら勝てない。周りからは最弱の職業として馬鹿にされていた。
生産職でもない彼に残された道は冒険者しかなかったのだが、魔物1匹にすら勝てない彼を入れてくれるパーティーは無かった。
回復薬の素材である植物などを集めて生活していたが、冒険者の中では無能呼ばわりされ、時には他の冒険者から殴る蹴るなどの暴力を受けていたという。
彼はこの人生に絶望し、また復讐することを決めたのだ。
彼は暴力を受けた冒険者を闇討ちし、殺すとその死体を操れることを知った。
それからはその死体を操り何人、何十人、何百人と殺していった。
その死体は闇の中に溶け込みいきなり現れるため、その噂が広まると皆夜の間は眠れずに怯えていた。
そして、その被害は村だけではなく大きな街にも及び、遂には王都にまで被害が及んだ。そして、最終的には国王まで暗殺されてしまったという。
最後は王都の騎士団によってその男は捕まり、処刑となったが、5年間にも及ぶ暗殺に次ぐ暗殺で被害を被った人数は一万人にもなったという。
その男が操る死体は何度でも蘇り倒すことは困難だったとされている。
「とまぁこういうことがあった…ネクロマンサーはその男がなってからそれ以降は出なかったのだが、君が2人目ということだ。君には約束してほしい。こういうことにはならないと…。」
「このことは親御さんにも知ってもらう必要がある。後日君の家に私自ら説明しに行くから、詳しい話はその時にしよう…、それと君の処遇について領主様と話し合い色々賛否両論出ると思うが私がなんとかするから安心してほしい……」
「…………。わかりました…… 」




