第12話 職業
そして、時が過ぎ、今は春。
神託の儀までもう残り4日となった。
神託の儀はエメラス伯爵領の中央都市であるグリンロックで行われる。
俺たちが住むアレク村はエメラス伯爵領の辺境に位置していて、馬車で2日間ほどかかるため、今日はその身支度の準備をしていた。
「パパとママは神託の儀に一緒に来ないの?」
「ええ、私たちは行かないわよ、その代わりに神官のハロルドさんが一緒に行くわよ」
「なんでハロ爺?」
「これも神官の務めなのよ、神託の儀は神様から職業を与えられる儀式、だから神様と私たちを繋げる役割を持つ神官が村から同行する決まりなの、それで各々の村や町から集められた神官たち全員で神託の儀が行われるのよ」
「なるほどね〜、でもハロ爺1人じゃ道中魔物とかに襲われたら大変だよ?」
「エメラスから護衛のためにエメラスの騎士が派遣されてくるから大丈夫よ、馬車もエメラスの馬車だからすごい豪華で快適なの、ママももう一回乗りたいぐらいだわ、うふふ、まあ安心して行ってきなさい」
「うん!」
出発は明日だ、今年この村から神託の儀を受ける子どもは俺とファナ、あの3人組の他に3人いる。合わせて8人だ。
今日は明日の出発の説明を受けるためにハロ爺のところに全員集まった。同じ村にいるが3人とも初めて見る奴だったが、たぶん3人ともインドア派なのだろう。
翌日。
昼頃、騎士団が大きな馬車を連れてやってきた。
この世界の馬車を初めて見たが、馬車を轢いてる馬がまず俺が知ってるような馬じゃなかった。
前世の馬と比べると3倍ほど大きく、しかも足が6本あった。この世界に来てから5年以上経つが、魔物についての本を読んだだけで、実物はビッグカウ以外はほとんど見たことがなかった。
俺も初めて見る魔物に興奮しているが、ファナや他の子どもは魔物だけでなく、騎士や大きな馬車にも目を輝かせていた。
「これはこれは、騎士団の皆様、この辺境の村までお迎えに来てくださいましてありがとうございます。私は神官のハロルド、そしてこの7人が此度の神託の儀を受ける子ども達です。」
「私はエメラス騎士団将校のデラパルトです。グリンロックまでの道中は私たちが護衛役を務めさせていただきます。この度はどうぞよろしくお願いします。」
護衛の騎士団員は全部で8人いるが、予想に反して全員まだ若く、二十代前半あたりだろう。また騎士団はもっと偉そうな感じだろうと思ったが、そうでもないようだ。ジャンも何人かの騎士団と知り合いのようで話しているようだが、俺が知らないだけでジャンは意外とすごいのかもしれない。
この後、騎士団全員の挨拶と俺たちの挨拶が終わると早速出発する準備に入った。
「じゃあパパ、ママ行ってくるよ」
「ああ、デラパルトが一緒なら道中は安全だ、安心して行ってこい、お前の職業楽しみにして待ってるぞ」
「気をつけて行ってくるのよ、ライトならきっと良い職業がもらえるわ」
「うん、ありがとう、楽しみに待ってて!じゃあ行ってきます!」
そうして、家族に見送られ出発した。
俺が乗る馬車には俺とファナ、ハロ爺と騎士団員は将校のデラパルトさんともう1人、合わせて計5人が乗っている。騎士団の1人が御者をしているため、馬車の中は4人だ。
ジャンとデラパルトさんは知り合いのようだが、どういった経緯で知り合ったのか聞いてみようかと思った。
「あの、ジャンの息子でライトって言います、父とは知り合いのようですが、どこで知り合ったんですか?」
「ライト君はジャンと違って頭が良さそうだね、あはは、僕とジャンはエメラス学園の同級生だよ」
「えっ、父はエメラス学園に通っていたんですか?」
「ああ、そうだよ、ジャンから聞いてなかったんだね」
「はい…、まさか父がエメラス学園に通っていたなんて…、でもそれなら何故父は冒険者をやってるんでしょうか?エメラス学園に入れればエメラス騎士団にだってなれただろうに」
通常エメラス学園に通っている生徒は卒業したら大半はエメラス騎士養成学院に進級し、ゆくゆくはエメラス騎士団の騎士となる。
この世界ではエリートコースだが、ジャンはその道を捨てて冒険者をしている。騎士団員に比べ危険が多く稼ぎも安定しない冒険者を選ぶのは普通では考えられないことなのだ。
「12年前に魔王軍との4度目の戦争があったんだが、そのときにジャンの両親が戦死してね…、本来ならジャンもエメラス騎士養成学院に進学するはずだったんだけど、ジャンには弟と妹がいたんだ。だからエメラス学園を卒業したあとは2人の面倒を見るために冒険者になったんだ」
「そうだったんですか…、父に弟と妹がいるのも初めて聞きました」
「ジャンの弟と妹はジャンの故郷のコハク村にいると思うよ、機会があればジャンと会いに行ってみるといいよ」
「はい、そうします、確かに父は他の冒険者と比べるとすごく強かったです、その話を聞いて父の強さにも納得しました。」
「そうだね、ジャンの職業は剣士で戦闘職の中では平凡な部類に入っているけど、ジャンは負けず嫌いでね、誰よりも努力していたよ。当時はジャンと何度も模擬戦をしてお互いに勝ち負けを繰り返していたよ」
「将校のデラパルトさんと互角だなんて、父は本当にすごかったんですね、ちなみにデラパルトさんの職業って何なんですか?」
「僕は双剣士、中級職だ。低級職の剣士よりも上位の職業とされているけどジャンとは互角だったよ」
「双剣士ってかっこいいですね、僕も強くてかっこいい職業がいいですね、職業の種類って他にはどんなものがあるんですか?調べてきたんですけど、職業についての本はあまりなくて…」
そうして、デラパルトさんにはたくさんの職業を教えてもらった。主に戦闘職について教えてもらったが、俺が思っている以上にたくさんの種類があるようだ。
俺が唯一知っていた職業は伝説の物語に出てくる七人の英雄の職業だ。『剣、槍、弓、盾、拳、魔導、聖』に王と名のつく職業。この七人は何百年も前にこの星を滅ぼそうとした魔神を倒し英雄となり、今でも本で語り継がれている伝説の職業だ。
それ以降はその職業を持った人は現れていないらしい。現在強いとされる職業といえば『剣聖』や『大魔導士』、『聖騎士』などがある。
拳士系で強いのは『魔闘士』や『拳聖』だという。多分ファナは拳士系の職業だろう。
俺はできれば魔力量を活かせる魔法使い系がいいが、今まで剣もやってきたので魔法と剣をどちらも活かせる『魔剣士』でもいいと思った。ただ、今まで言った職業は全て上級職、1000人に1人といった割合だろう。それに、戦闘職が与えられるのは全体の3、4割であるため、上級職を与えられるのはほんのひと握りだ。
確かに神託の儀でどのような職業が与えられるかは今後の人生にとって重要だ。
しかし、この世界はデラパルトさんとジャンが互角だったように職業だけで強さが決まるわけではない。
ユニークスキルが良ければ職業の差も覆せる可能性もあるが、このケースは本当に稀である。デラパルトさんの話で王国騎士団は精鋭揃いであるがその中にも上級職でないにも関わらずユニークスキルやその他のスキル等を鍛え騎士団員や副団長にまで成り上がった者も少なからずいるらしい。
だから俺も平凡な職業を与えられたとしても強くなることは諦めないつもりだ。て言うか今まであんなに魔力上げやステータス上げを頑張ってきたのに今更諦めきれない。それにまだ5歳だ、まだまだ可能性は無限大だと俺は思う。
そのあとも騎士団のことや学校のこと、魔物と戦うことなどいろんな話をした。
そして、2日間程馬車に揺られようやくグリンロックに到着した。
やはりアレク村と違い想像以上に街が発展している。大きな建物もあり、窓ガラスや時計などもあるようだ。他のみんなは初めて見る建物や屋台、人の多さに興奮しているようだ。
神託の儀は明日なので今日1日は自由だ。けど子どもだけだと危ないので、騎士団の人が付いてくれている。
俺とファナは街を散策してお土産や初めて見る食べ物など屋台で買ったりしていた。ファナは馬車での移動中から人見知りの影響であまり元気がなく、街の散策中も人の多さに圧倒されていたので、今日は早めに宿で休むことにした。
「ファナ、大丈夫か?」
「うん…、もう大丈夫だよ、私のせいであんまり街周れなくてごめんね…」
「大丈夫、俺もファナが元気じゃないとやだし、それに明日も街を散策する時間ぐらいはあるよ」
「そっかぁ、ライトありがとう」
「うん…… 明日は早いからもう寝るか」
「分かった…… 明日ライトはすごい職業を貰えるんだね」
「多分ファナの方がすごいと思うぞ」
「ライトの方がすごいよ、ライトがどんな職業貰えるか楽しみだなぁ」
「なんで俺の職業の方が楽しみなんだよ…、まぁいいか、もう灯り消すぞ」
「待って、私もライトと同じベッドで寝たい…」
「え、でもせっかく2人用の部屋使わせてもらってるんだし、それにこのベッド2人で寝るには狭いと思うんだけど…」
「…………。」
「もう…、わかったよ…」
「やったあぁ!!」
「今度こそ灯り消すぞ、じゃあおやすみファナ」
「おやすみ、ライト」
(はぁ、ファナもまだまだ子どもだな)
(明日かぁ、どんな職業が貰えるか楽しみだな)
【名前】ライト 【年齢】5歳
【レベル】1 【職業】無し
HP : 372 MP : 975
【体力】130 【筋力】128
【速度】125 【耐久力】165
【器用】136 【知能】256
[ユニークスキル]
静電気Lv7
[スキル]
痛覚耐性Lv3 投擲Lv2 剣術Lv3 格闘術Lv2
[職業専用スキル]
無し
[EXスキル]
最強道LvMax
[ユニークスキル]
静電気Lv7 4,591,990/5,000,000
・微弱な静電気を起こす。
消費MP1 クールタイム0,6秒




