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〜9.

 くそ! あいつらは一体何をしていたんだ!

 隙あらば片づけてやろうと考えていた今日、奴らは登校してこなかった。こうなる可能性を考えて義父から奴の住居を聞いておくべきだったんだ。馬鹿にされたようで腹が立つ。


「おい、今日はどうだったんだ。殺せてはいないようだが……」

「申し訳ございません。今日は奴らが姿を見せなかった為に接触すらままなりませんでした」

「……あまりふざけたことを言うな。で、明日は殺れそうなのか?」

「はい。義父さんが望むなら明日必ず」

「もう一度言っておくが、ただ殺すだけではいかんぞ。公に知れ渡られては困る。人気のない場所で殺し、奴の遺体も回収しろ。それとこれが奴の住む場所だ。学校に来なければここへ行って」

「承知致しました。では明日に必ず」


 義父はいつもの冷たい視線で俺を睨み、すぐに部屋を出ていった。そろそろ俺の命が危なくなってきたってことか。まぁ任務を果たせないなんてことはないさ、これが俺の生きてきた意味なんだからな。これまでの人生は、この任務を遂行する為のもの。館山ミカンの命を摘むことが、俺の生きる意味。


 ――館山ミカンを殺した後はどうなる? 俺はもう用無しか?

 いや、そんなはずはない。義父やその仲間が目論むのは日本の支配。その為に俺という兵器を惜しみなく使うに違いないだろうし、館山ミカンさえ消せば事実上俺が史上最強唯一のサイボーグだ。俺がスクラップになることはないはず。


 ……館山ミカンに負けたら? それは死を意味する。奴に殺さるか、そうでなくても義父に起爆スイッチを押されて俺は粉々に散る。なんだか、寂しいという感覚が戻ってきた気がする。


「……兄ちゃん?」

「ああ、どうした。またバスケか?」

「うん。まぁ嫌だったらいいんだけどさ」

「……いいぞ」


 万が一のことがあった場合、今日で最後かもしれないからな。別に義兄弟が愛しいわけではないが、なんとなくそういう気分なんだ。

 家から歩いて10分の場所にある公園に、すこし錆びたバスケットゴールがある。館山を追ってこの辺りに越してくる前は、もっと近い場所にゴールがあったんだがな。


「スリーポイントってさ、どうやったら上手く入るの?」

「……こうやるんだ」


 背筋を伸ばし、フォームを崩さずにシュートを打つ。俺の場合はボールが大きな弧を描いてリングへ向かっていく。このアーチの高さや角度は選手によって異なるんだよな。ほら、入った。いつしかスリーポイントも確実に決められるぐらいになっちまったが、バスケなんてやっててもしょうがねぇんだ。


「すごい! 綺麗に決まったね!」

「……まずはジャンプシュートを綺麗に決めるところからだな」


 負けたら確実に死ぬ。勝っても命の保証はない。今更未来に光なんぞ欲しいとは思わないが、せめてあと一日あれば、コイツにスリーポイントシュートをもっとしっかり教えられたのかもな。


 自分の生まれた環境を、憎んでもいいだろうか。

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