〜18.
視界が悪いのは豪雨だけのせいではない。公園の中央からたかが蹴り一発で敷地の端まで飛ばされ、酷いダメージを負わされた。館山ミカンの能力……恐ろしい力が覚醒しちまったもんだな。
とはいえ俺に勝ち目がないわけではない。例えどんな打撃を避けられようとも、光速を超えることだけは絶対にできん。このレーザーが奴の体を貫けば、俺の勝ちだ。――仕方がない、体に負荷がかかることになるがレーザーの出力を最大にしておこう。最大威力のコイツを喰らえば確実に息の根を止めることができるだろうからな。
立ち上がり、辺りを見渡してみるが人気がない。奴が追撃に現れなかったことを考えると、さしずめ2人を安全な場所へ運んだというところだろう。舐め腐った野郎だ。
「おい」
「!!」
――どこだ! どこにいやがる!!
「とっとと勝敗つけようじゃねぇか。武内ヤナギさんよ」
「……いい度胸じゃねぇか。白星は譲らんがな!」
俺自身の体力のことを考えると、できれば一撃で沈めたい。奴が動きを止めた瞬間がチャンスだ。打ち損じのないように。
館山は静かにこちらに寄ってくる。余裕そうな表情を浮かべたその二重人格者からは警戒心が感じられない。無警戒ということはないはずだが……。
「おいヤナギ、俺が持ってる力について教えてやろうか」
「喋りたいなら勝手に喋ってろ。すぐに殺す」
「俺は大気を操ることができる」
大気。雨雲が集まってきたのも風が巻き起こったのもそのせいか。しかしこちらの準備は整った。あとはこれで奴を撃ち抜き、殺すだけだ。
「ああ、雨が段々強くなってきたなぁ」
「クク。そろそろ死んでもらおうか」
「……なぁ」
「死ね! 館山ぁ!!」
「……レーザー誘雷って知ってるか?」
館山が高くジャンプしたところだけ見えた。しかし、次の瞬間に目の前が真っ白になり、体が一気に熱くなったかと思うとみるみるうちに力が抜けていった。落雷、か。
「お前相手に7分は長すぎる。じゃあな」
「……」
大粒の雨を感じなくなり、すぐに意識が遠のいていった。