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〜14.


 一瞬気を失って倒れこむ程の攻撃をもらい、意識が朦朧(もうろう)とする。情けないものだ。生身の人間とサイボーグの差がここまでだとは、正直自分を過信していたようだ。

 視界に映った武内スイレンは腹部を抑えながら横たわっている。まだ死んではいないと思うが、もろにレーザーを受けたことは確認できた。


「スイレン君!」

「館山ミカン。そろそろ死んでもらうぞ」

「ぐ……」


 まずい。打撃ならばともかく、あのレーザーをかわす力はミカンには備わっていない……。ミカンを、守らねば……。


「……俺がまだ、死んでいないだろうが……」


 私が立ち上がる前に、ボロボロになったスイレンが立ち上がった。腹部は赤く染まり、全身が少し震えている。奴も限界なのか……。


「勘違いすんなよ。殺さずにいてやったんだ」

「……情に邪魔でもされたか?」

「ふざけるな!!」


 武内ヤナギの手のひらが赤く光る。あそこからレーザーが……。


「スイレン君逃げて!!」


 ほとんど身動きのとれないスイレンがミカンの声で光線をかわせるはずもなく、至近距離で太ももを撃ち抜かれる。


「スイレン。お前が俺に敵うはずがない。いくらお前が自分の手で体を改造しようとも、義父の技術を超えられない。この戦いにおいての技術は戦力。付け焼刃の知識で出来たサイボーグなんてもんはガラクタなんだよ!!」

「……命を盾にとられてる兄ちゃんを責めることはできない。だから……助けたかった」

「生まれた環境が全てだ。ただの人間でいられたにも関わらず、わざわざサイボーグになんてなる馬鹿がいるか。余計なことをしたばかりにこうしてお前は死ぬ」

「……どうして……兄弟で殺しあわなくちゃいけないんだ……」

「血が繋がっていないだけありがたく思え。自分以外の人間は所詮他人だ」


 生まれた環境。それはイコール親のことだろう。自分の生まれた環境を恨むということは親を恨むことに繋がり、打破するためには親の元を離れるしかない。命を握られたヤナギは、逃げられない場所でただひたすら生きようともがいている。

 会話が途切れると、ヤナギはスイレンの胸倉を掴み、左拳で顔面を殴った。地面に叩きつけられたスイレンは、動かなくなった。


「ナズナ……」


 なんだ? 体が痛むから会話は控えたいのだが。


「僕、間違ってた……」


 ――どういうことだ?


「僕はどうして普通の人間じゃなかったんだろうとか、なんで改造なんかされたんだとか……。自分がサイボーグだって知ってから、どうしてこんな風に生まれちゃったんだろうって、ずっと恨んでた……嫌で嫌で仕方なかった……」

「……」

「だけど……僕は愛を受けて育ってきた……。だから幸せな思い出だってたくさんあるし、自由もある」

「……そうだな」

「でも、ヤナギは生まれてからずっと自由も愛もなくて……。スイレン君は大切な人を助ける為に自分から進んで人間として生きる道を捨てた……。僕は……ただの弱虫だ……!」


 すまぬ、ミカン。今日までにお前を戦える状態に仕上げられなかった私の責任だ。もしこのまま死んでしまったら……私が悪い。このままじゃいけない。ミカンをキクオ殿に……もう一度会わせてやらねば。


「ナズナ、立つな! 敵う訳ないよ!!」

「ミカン……逃げろ」

「嫌だ! 逃げるくらいなら、死んででも戦う!」

「貴様が死んだら困るのだ!!」


 私はまだ2、3発しか攻撃を受けていない。かなりきつい攻撃ではあったが、臨戦態勢をとれば時間くらいは稼げるはず。使いたくはなかったが……武器を使うしかない。


「……ハンドガンか。お前の腕が良ければ俺の動きを止めることぐらいはできそうだな」

「無論、死んでいただくがな」


 ――ためらいなんてものは、もはや持ち合わせてはいない!

 迷うことなく引き金を引き、発砲音が響き渡る。ここが都会ならば、すぐさま警察が駆けてくるとこだな。

 かわす様子を見せなかったヤナギのもとに、弾丸が走る。

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