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思い出話  作者: いつかの彼女
変化
6/15

都合のいい人?

 そうして会話が増える内に、互いの好みの話で盛り上がるようになり、ある日食事に誘っていただいた。


 そんな時になって、大好きな彼の周りにも若い女の子が働き始めたらしく、電話の度にその子たちの話を聞かされ、けれど大好きだと話され、何が言いたくて何を言われてるのか、吐くほどに悩む日々が続いて、落ちる日々が続く中、誘われた食事会の日になった。



 その方はとてもグルメで、私の好きな物も気にかけてくれる。

 居酒屋メニューが食べてみたいと話していたことを覚えててくださり、本格的なそこへ連れてってくださり、たらふく美味しいものを食べさせてくれた。


 コーヒーが好きだといえば、素敵なカフェにつれてって下さったり、素敵な景色が好きだといえば、海や山に連れてって下さったり。

 大好きな彼に行きたいところや好みを話しても、いつか未来に必ずと言い、なかなか叶えて貰えないことばかりをいとも容易く叶えてくれて、私はとうとうその方の前で大号泣してしまったのだった。


 お付き合いしてる人ということは伏せ、死ぬほど大切な人がいて、その人のためなら命を賭けられるほどに好き。相手もそう言ってくださるのに、我慢ばかりで辛いです。でも優しくしてくれるし話も聞いてくれますが、私の都合では何もしてくれません。

 でもとてもとてもとても、大切な人なのです。



 そう話してみると、不意にその方が首を傾げて呟きました。



『それって都合のいい人にされてるだけじゃあないの?』



 大好きな彼に限ってそんなことは無い。そう信じつ続けていたから、それだけは私も少しばかり怒ってしまい、その日はお茶してお別れさせて頂きました。



 家に帰ってからお付き合いを始めた頃から今に至るまで、私は彼とどんなお付き合いをしていたかなと、振り返る時間を作り、ふと気づいたことがありました。


 そういえば、私は彼になにか頂いたことはあっただろうか?


 会いに行った時に、職場に売っている羊羹や唐揚げをご馳走してくださったことがあった。

 お恥ずかしながら私はその羊羹を未だに大切に持っている。

 お誕生日に何かあっただろうか?

 とても長く素敵な言葉が綴られたメールを頂いた。

 だけどものは無理だと断られた。


 半年に1度会うその時、1度でもご飯に行けただろうか、ホテル代は? 旅費は?


 考えてみれば全ての費用を私が持ち、計算すればその時点でもうウン十万もの投資をしていた。


 確かに私は、都合のいい人になりつつあったのかもしれない。


 そう思い始めた頃、初めて彼が私にプレゼントをくれた。



『これで好きなプレゼント買って』



 それは銀行に振り込まれた5000円。

 嬉しかった、けど悲しかった。


 好きなものを買って。


 私はそういうのではなくて、同じものを一緒に悩んで選んで買いたかった。


 羊羹のように、1つ100円とかそんなもので十分なのだ。


 ただただ私は、彼の言う世界一大切な人だと思わせて貰えるものが欲しかった。


 彼の周りに現れた彼女たちにご馳走するお金や時間のように、また、私の傍に来た瓜二つの彼のように、私にお金を使うのではなく、時間を使って欲しかった。


 ただただ、それだけの事が彼は私に無くなってしまっていたのだ。




 そこで私はストンと何かが落ちて、もうダメなんだと気付いて、私から距離を取らないといけないと思った。

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