彼との初めての時間
本当は深夜12時というだけあって、若干の眠気はありました。
だけどかなり緊張していたこと、何よりも会いたくて仕方なかった彼と会うことが出来た喜び、それが何よりも大きかったのと、念願だった “手を繋ぐこと” それが叶ったことが嬉しくて嬉しくて、思わずポロリと涙を落としたのはここだけの話。
それからは電話の時と変わらず、今まで何度も会っていたと言わんばかりにいつも通り、なんでも話してくれる彼。
あんな事やこんなこと、終いには教えて貰った歌を歌ってまでくれました。
そして休憩が終わって、もうお別れかと、たった1時間の逢瀬かと、ちょっと落ち込み始めていたら、なんと神様か、彼は嬉しい言葉を伝えてくれた。
『もうこんな時間やし、ギリギリまでいる?』
ギリギリというのは、彼の交代要員が来られるまで。
そんな甘えたことしちゃってもいいのですか!?
なんて言いながらも、その言葉を受け取りたい私。
やっと2人きりになれてきていたはずなのに、ここへ来てまたチキンな私はこくりと頷くだけ。
そして誰もいないことをいいことに、お店のお手伝いをしてみたり、時折やってくるお客さんの接客にいちいちかっこいいなぁと、魅入ってみたり。
ここでもまた私の知らないあれこれを教えてくれる彼。
とにかく博識で情報ツウで、普通に聞けばそんなこと? って事まで話してくれるので、楽しくて仕方ない私。
あれよこれよと楽しんでいる内に、外が明るみ始め、お客さんも増え始め、そして交代の人が来た。
慌てて外へ飛び出し『また後でね』と視線を飛ばしあって、一旦最寄り駅へ戻りました。
1時間しか会えない予定が、まさかの終わりまで一緒に居られ、そんな夢みたいな事が起きるのかと夢うつつの私。
まぁ一睡もしていなかったので、本当に夢うつつだったのかもしれませんが、お花畑の私には分からないので良しとしましょう。
そしてそれから数時間後、今度はまたタクシーに飛び乗り、往復の時間。
一旦自分のホテルから必要なものを持ち出し、出発。
その後彼を指定の場所に拾いに行って、そのままラブホへ。
初めての2人きりはホテルで過ごす4時間ほど。
仕事の時とは違うプライベートな彼は、電話先と同じくかっこよくて立派な声と、ずっと見ることの出来なかった笑顔。何もかもが嬉しくて幸せで、短い時間ではありましたが、肌まで触れ合えた幸せに、お花畑急上昇中の私は幸せ絶頂でした。
『絶対、一緒になるようにするからな』
終始そう言ってくれていたから、私はそうなるものだと確信して、尚更彼のために何でもしようと心に誓ったのです。
『また逢えるかな』
ベッドで彼の腕枕でうたた寝し始めて、ふと囁いてみたら、大きな手が私の頭を撫で、また抱きしめてくれた。
『逢えるよすぐに』
そんな逢瀬もあっという間。
仕事へ行っていたていで先にタクシーから降りてしまう彼。
パタンと扉がしまった瞬間に泣いてしまって、タクシーの運転手さんに慰められながらホテルに戻ったなんて、きっと運転手さんもびっくりしただろうなぁ。
そうして私は、帰りの新幹線までまたひとり観光をして、駅弁を買い込み、結局寂しさにわんわん泣きながら帰宅したのでした。