第9話 飛竜の翼膜
ワイバーンは真っ直ぐに俺達に向けて突っ込んでくる。
俺の身体は瞬間的に反応しワイバーンの頭を殴りつける。拳がワイバーンの頭にめり込み、ワイバーンの頭が破裂をする。
そして、ドーンという衝撃音とともにワイバーン身体が吹っ飛ぶ。
振り返ってシェリルさんに声を掛ける。
「シェリルさん怪我は?」
「え、ええ、大丈夫です」
何が起こったのかシェリルさんは理解出来ていない様子。
「アイゼンくん。君の力も大概だな! あの鉄と同じ硬さを持つワイバーンの外皮をぶち破るとは」
教授は興奮している。
ニーナちゃんが空を指し「まだいるよ」と呟く。
空を見上げるとワイバーン4、5匹が輪になって飛んでいる。
仲間がやられたことに気が付いたのか、ギャーギャーと鳴き声が聞こえてくる。
輪を外れたワイバーンの1匹が俺たちに向けて火球を吐きだす。
「任せて下さい! 精霊よ我らを護りたまえ!」
シェリルさんがそう言うと、光の膜のが俺たちを包み込む。
火球はその膜に当たり消滅をする。
「あの程度なら私の力でなんとかなります!」
火球が効かないと知った5匹のワイバーンは輪になったままその高度を下げてくる。
俺の身体が発光する。教授が親指を立てて俺を見ている。
「アイゼンくん。君の素早さを上げた今の君の身体は羽の様に軽い」
うんと頷く。
脚に力入れ空から舞い降りてくるワイバーンに向けて一気に間合いを詰める。
教授の言う通り身体が軽い。これなら空を舞うワイバーンだって捉えることができそう。
瞬時に間合いを詰められたワイバーン。しかし空中で体勢を変え俺の一撃をかわそうとする。
ワイバーンが体勢を変えようとしたその時、ワイバーンは何かに身体を抑えつけられるように一瞬動きが鈍くなる。
ニーナちゃんだ。ニーナちゃんがワイバーンに速度低下のデバフを掛けたのだ。
そのおかげでワイバーンに隙ができた。
それを見逃さず、ワイバーンの胸を貫く俺の拳。
墜落するワイバーン。ほぽ同時に着地するともう1度跳びあがり2匹目の頭を粉砕する。
ワイバーンにしてみれば瞬時のことで何が起こったかわからないはず。そのまま同じ動作を繰り返してものの数十秒でワイバーン5体を倒す。
「これで終わりかな」
3人が俺の側にやってくる。
「さっすっがアイゼンさん。あっという間に終わりですね」
俺は首を横に振る。
「みんなのおかげですよ。バフにデバフにバリアが無かったらもう少し倒すのに手間取ったかも」
教授がツッコミを入れてくる。
「やめたまえ、謙虚に見せかけて自分の強さをひけらかすのはやめたまえよ」
「でもほんとに助かったよ。みんなありがとう」
シェリルさんがワイバーンを指差してこう言った。
「あれってワイバーンですよね? そしたらワイバーンから取れる貴重な素材が……」
「「「「飛竜の翼膜!!」」」」
4人で口を揃える。
鉄並みに硬いワイバーンの皮膚。翼の薄い皮も同様の硬さがあり、その薄さと硬さから鎧の部品に重宝され、高値で売買されておりギルド管理組合に渡せばそれなりの金額で買い取ってくれる。
4人で手分けをして翼膜を剥ぎ取り、リュックサックに巻いて詰め込む。
「これで全部ですね。あとは絶景を見て薬草を集めて帰りましょう!」
こうして快晴になった天気の下、頂上まで上る。
「……この景色は確かに凄いね……」
目の前に広がる景色に圧倒される。遥か遠くまで見渡せ、王都の街並みが遠くに見える。反対側は雲海が広がりまるで天国にいるような錯覚すら覚える。
「あーーーー来てよかったですね! 途中どうなることかと思いましたが、みなさんのおかげでここまでくることができました」
「いやシェリルさんが引っ張ってくれたからですよ。それに晴れ女ですしね」
俺がそういうと教授とニーナちゃんはうんうんと頷く。
そして薬草も集めて、山を降りた。
――翌日。
クエスト完了の報告にギルド管理組合にやってくる。
シェリルさんが受付のお姉さんに薬草を渡す。
「これ雪割薬草です」
すると驚きの表情を見せこういった。
「あ……よくご無事でもどられましたね」
「は、はい……あとこれ飛竜の翼膜です」
「え? もしかしてワイバーンを退治されたのですか?」
「はい! ちょうど現れたので6匹ほどやっつけました」
「クルルス山のワイバーンは緊急クエストとして追加されたので、あなた達にそのクエスト報酬が渡ることになります」
『緊急クエスト、ワイバーン討伐』と書かれた紙を俺たちに見せる。
「雪割薬草のクエスト報酬とワイバーン討伐のクエスト報酬それに翼膜のお金ももらえるってことですか?」
受付のお姉さんはコクリと頷くとドンとその紙に済というハンコを押した。
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