第4話 力持ち
はっとした顔をするシェリルさん。
「……そういえばこのギルドハウス部屋が3つしかないんでした……」
するとニーナちゃんがシェリルさんの肩をちょんちょんと叩く。
「……屋根裏……」
「そっか! 屋根裏部屋がありましたね! それじゃ私が屋根裏部屋に行きますね!」
ルンルンでシェリルさんはその場を離れようとする。
「いやいやちょっと待ってください。俺が屋根裏行きますから。シェリルさんは今の部屋使ってて」
シェリルさんは首を横に振る。
「それはいけません。せっかくうちのギルドに入ってくれたのに屋根裏部屋に放り込むだなんてとてもできません」
「大丈夫ですよ。むしろ女の子でギルドリーダーを屋根裏部屋に行かせる新参者の方が問題ですよ。こういう時は一番下っ端が行くものです」
教授がボソッと口を開く。
「今から屋根裏部屋を片付けて、シェリルくんの部屋の荷物をまとめて引っ越しかぁあんまり効率的とはいえんね」
「ほら教授さんもそういってますし」
「……分かりました。じゃあ今からみんなで屋根裏部屋のお片付けですね」
ということで蜘蛛の巣と埃まみれの屋根裏部屋の掃除を4人で行った。
掃除が終わるとちょうど夕飯の時間あたりになる。
またシェリルさんが申し訳なさそうな顔で話けてくる。
「……実は今、うちのギルド金欠でして……今晩アイゼンさんの歓迎会ができないんです……」
「そんなに気を遣わなくてもいいですよ」
「いえいえ、そういうわけには行けません。明日早速ギルド管理組合に行ってクエストを受注しましょう」
◇◆◇
日が登る前の薄暗いなか目が覚める。
道着に着替えるとギルドハウスの庭にでて軽く身体を動かす。
そしてふーっとひと息をつき、
「ふん! ふん!」
俺は正拳突きを一発、一発気合を込めて繰り出す。
気配を感じギルドハウスの方を見るとシェリルさんが立っており目が合う。
「おはようございます……すいません……やっぱり眠れなかったですよね……」
「全然快適です。昨日みんなで掃除して綺麗になりましたし。すいません。朝からこんなことして起きちゃいますよね。これ日課なんで」
「そうなんですね。さすが格闘士さんです。私も朝の支度で起きたので気にしなくていいですよ」
そう言って手に持っているバケツを見せる。
俺は正拳突きをする手を止めてシェリルさんが持つバケツを握る。
「いいですよ。訓練続けてください」
「これも訓練です。重いものを持つっていうね」
「ありがとうございます。それじゃ私、朝ごはんの支度しますね」
井戸で水を汲みギルドハウスの台所にもっていく3往復ほどで水ガメがいっぱいになる。
そうしているうちに朝食ができ、俺は屋根裏部屋に上がって道着から着替える。
眠そうな顔のニーナちゃんと寝ぐせで髪が爆発し眼鏡がずれている教授が食卓に着いている。
パンや目玉焼きがテーブルの上に置かれ、中央には蓋のしまった瓶が置かれている。
教授が口を開く。
「この瓶の蓋にかけられた呪いは強烈でな。私たち3人の力をもってしてもビクともせなんだ。男の君ならその呪いに打ち勝ち瓶の中のジャムを解放することができるはず」
「そうなんですよ。その中のジャム美味しいですけど、蓋が開かなくなっちゃって」
とシェリルさんが教授の言葉を翻訳する。
「任せてください」
男で格闘士である俺がこの蓋を開けられなかったら一体誰が開けられるというんだ。
瓶をもって蓋を触る……
3人の視線が俺の手元に集まっているのが分かる。そして3人は「ゴクリ」と息を吞む。
触った瞬間に分かる蓋の硬さ
この蓋……なかなかやりおる……
3年前の俺なら開けられるかどうかギリギリだったかもしれない。しかし拳聖トン・デ・ボンの元で3年間修業してきた俺なら開けられる。
「むん!」
手に力を入れてグリっと蓋を回す。
蓋はシュルンと瓶の上を滑って回る。
瓶の蓋が開かれ、ジャムの甘い匂いが漂ってくる。
シェリルさんは大きな目を見開いて感嘆の声を上げる。
「さすがです!!」
教授はうんうんと頷き
「ヒト科のオスの筋力をもってすれば蓋の呪いを解くことも容易か」
ニーナちゃんはパチパチパチと手を叩いて賞賛をしてくれた。
朝食をとりながらシェリルさんが話をし始める。
「今晩、歓迎会をするので皆さんでギルド管理組合に行きましょう」
「みんなで行くんですか?」
「はい。うちのギルドはみんながいいと思ったクエストを行うんですよ」
「へぇぇ珍しいですね」
「クエストもみんなで楽しくクリアしたいですからね」
教授が口を開く。
「それなら次のクエストは頭脳労働にしてくれたまえ」
「教授さんが気にいるクエストなんていつもないじゃないですか」
「それは頭脳労働のクエストを集めないギルド管理組合の所為だなうんうん」
「とにかく次のクエストを頑張ってクリアしたら報酬で歓迎会ですね!」
ということで朝食を終え俺たちはギルド管理組合に向かった。
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