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第3話 ギルド加入

 スーーーハーー


 深呼吸をする。


『常に冷静であれ』


 師匠である拳聖トン・デ・ボンの言葉だ。


 こういう時こそ冷静であらねば、正しい判断を見誤る。


 絶対許さないと激昂したが、今から殴りに行ってどうにかなるわけでもない。


 はぁアホくさ。なんかあんな連中に早く会いたいとか思ってた俺アホくさ。


 こんなことで腹を立てるとか俺もまだまだということか……


 まあ気を取り直してスローライフ♪ってとこに行ってみよ。合わなけりゃ断ればいいしな。


 世界樹の活動履歴を受付のお姉さんに返却をしギルド管理組合の建物を後にする。


 ――暫く歩いた後


 ここ……だよな?


 貰った紙に書かれた住所の先にある建物、古い……いや年季の入った木製の2階建て一軒家。


 しかし窓の全ては暗幕で覆われ中を窺うことができない。


 その古い建物とあいまって異様で近寄りがたい雰囲気を醸し出している。


 建物の前にはスローライフ♪と書かれた表札もある。


 あの募集文とはかけ離れた感じなんだが……間違えでは無さそうだし……


 コンコンと扉をノックするが何の返答もない。


 扉を押してみると鍵もなにも掛かっていないようでスーッと開く。


 中も真っ暗だが奥に揺れるロウソクのような揺れる灯りが見える。


 人は居る。


 そう確信した俺は真っ直ぐに灯りの所に向かうと……


 黒装束を纏った人間を固唾を飲んで見守る2人の人間……


 黒装束の人間は女性が出せる目一杯の低い声のような感じで2人にこう言った。

「ほぅらぁあなたの後ろに今も立ってますよ……」


「あのう……」

 ちょうど黒装束の女性が話し終わったタイミングで話しかけてしまい……


「ぎゃああああああああぁぁぁ!!! 出たぁぁぁぁ!!!」

 1人の女性が振り返るやいなや大声で叫ぶ。


 それに隣いた女性が冷静に話しかける。


「シェリル君。あれはどう見てもヒト科のオスだが?」


「え?え?」

 シェリルと話しかけられた女性はきょとんした様子で俺を見てちょこんと会釈をし話しかけてくる。


「どういったご用件で?」


「あ、加入希望です」


「え? うちのギルドに?」

 暗幕がかけられた部屋の中は薄暗く、表情は読めないが、その声色から驚いているのが分かる。


「シェリルくんとりあえず暗幕を外そう」

 シェリルと呼ばれる女性の隣いる女性がそう言うと「そうですね!」と言って窓の方に向かう。


「手伝います」

 そう言って俺も一緒に暗幕を外す。


「何してたんですか? これ」


「本当にあったかもしれない怖い話大会です」

 シェリルと呼ばれる女性はそう答える。



 暗幕が取り払われたギルドハウスの中は、その外観とは違い、綺麗に掃除や修繕がなされており、建物の古さを感じさせない。


 シェリルと呼ばれる女性の姿もはっきりと見える。ブラウンの長い髪に大きな青い瞳のなかなかの美人。


 長い黒髪を一つに編み込み眼鏡をかけ脇に分厚い本を抱えている少女と、黒装束の帽子を外した銀髪の少女の姿もある。


 眼鏡の少女がこう言った。


「うちのギルドに加入希望など奇特な人間もいたものだ」


「何言ってるんですか教授さん! せっかくうちのギルドに入ってくれるって言ってるんですよ? 入ってくれなくなったらどうするんですか!」


「そうなれば、それまでの人間だったということ。別に問題はなかろうて」


「もう!」

 シェリルという女性は頬を膨らませる。


 とりあえず謝っとこ……

「なんかすいません……」


「いえいえ、謝るの私達の方です。すいません、失礼なこと言っちゃって……」

 とシェリルと話しかられた女性が俺の顔を見る。


「あ、俺、アイゼンっていいます」


「アイゼンさんですね。私、シェリルといいます。ギルドの一応リーダーかな」

 そう言って2人を見る。


 2人はコクリと頷く。


「私のジョブは精霊巫女です。ヒーラーですね」


「自分のジョブは格闘士です」


「おお!! 強そうです!」


 俺が答えるやいなやお下げの女性は俺に近寄りじーと眺めると……


「モミモミ」


 と俺の身体を触りながら口を開く。


「ふむ。いい筋肉のつき方をしておるの」

 と頷いている。


 シェリルさんがそれを見て呆れた声を出す。

「教授さん失礼ですよ!」


「なーにが失礼だ。こうやってうら若き女子に身体を触られて嬉しくない男がいるものか! な?」


「は、はあ……」


「ほらアイゼンさんが困ってますよ! 教授さん離れて下さい」


「わかったわかった」

 そういってひとしきり俺の体を触ると教授?と呼ばれる眼鏡の少女は離れる。


 するとシェリルさんはその教授と呼ばれる少女を指してこう言った。

「この人はメイ教授さんです」


「教授? 学校の先生かなにかされてるんですか?」

 俺がそう尋ねるとシェリルさんが耳打ちをしてくる。


「学校の先生とかじゃないんですけど、メイさんは教授って呼ばないと機嫌が悪くなるんですよ」


「な、なるほど……」


「シェリルくん、君はなにひそひそと話をしてるのかね?」


「教授さんの功績をアイゼンさんにお伝えしていただけです」


 そういうとニコッと笑って俺の方をむいてメイ教授は口を開いた。


「よろしくー君も吾輩のことは教授と呼びたまえ。ちなみにジョブは見ての通り学者さんだぞ」


 学者というジョブ確か味方にバフを撒くバッファーのはず。


 えっととりあえず教授って言わないと機嫌悪くなるって

「は、はい。よろしくお願いします。教授」


「うむ。それでよろしい」


 シェリルさんは俺とメイ教授との会話が終わるの見計らって黒装束を脱いだ銀髪のショートヘアの少女を指す。

「こっちがニーナちゃん」


 ニーナちゃんはさっきの怖い話しとは一転してか細く消えいりそうな声を出す。

「……よろしく……」


「よろしくお願いします」


 シェリルさんが口を挟む。

「ニーナちゃんは恥ずかしがり屋さんだからちなみにジョブは呪術師さんですね」


 呪術師はたしかデバフを敵につかうデバッファーだったはず。


「ニーナちゃんの怖い話は恐怖談話家のイナガーさん並みに怖いんですよ」


「あーだから……」


「ですです。夜やるとめちゃくちゃ怖いから昼間にやろうってなってですね」


 シェリルさんはそういうとシャキッとして俺の顔を見ると

「こんなギルドですけど、よろしくお願いしますアイゼンさん!」


「は、はい……よろしくお願いします」


 加入しちゃったみたいだな俺……




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