表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

Road. 9

 結論から言うと、トマトの成長はちゃんと停止した。そして、実は収穫され、その他の部分は小さく切り分けられた後で焼却処分となった。


「……で? 何がどうなったのか説明してもらえるんか?」


「分かってる。まず、この村の畑についての話だが、この畑は『村に居る者の魔力を吸収して作物の成長を促進する』効果があるんだ。吸収といっても、全体量の数%以下、ごく微量だけどな」


「なるほど、我らの魔力でその効果が過剰に発揮された、ということじゃな」


「……私達が居ると、村の方々に迷惑が掛かるのでしょうか」


 馬鹿馬鹿しい騒ぎであっても、村が危なかったことに変わりはない。2人は━━特にクリルは、心にトゲが刺さったような気分になっていた。


「それ自体は否定できないけど、直接の原因はそこじゃない。畑にあったリミッター。本当なら予めレベルを上げておくべきだったんだ」


 ユートが常連だったように、この村に来る人には魔力の高い者が少なくない。そういった来客があったときのために、魔力の吸収や作物の成長を抑える安全装置も備えられてあった。


「2人が高い魔力を持っていることを伝えてなかったんだ。普段なら俺が居る時点で相応のリミッターが掛かるはずだったんだけど、今日は色々と予定もあったとかで設定も変えてなかったらしい」


 だから2人は悪くない、とユートは続けた。


「この話はここまで。俺らの歓迎会してくれるそうだから、今日はもうそっちに集中するぞ!」


「歓迎会か……。そう、か。せっかくのことだし、楽しまんと損じゃな!」


「私も……よろしいのでしょうか」


「良いって良いって。みんな待ってるだろうし、さっさと行って楽しんでやろうぜ」


◇◇◇


「……あ! 勇者様、お待ちしておりました!」


 いつの間にかすっかり日は落ちていて、村の広場には少しばかり過剰なほどのかがり火が焚かれていた。


「歓迎会は嬉しいけど……ちょっと盛大過ぎない?」


 テーブルには料理や飲物が、これでもかと言わんばかりに並んでいた。その質も、大きな街の祭で振る舞われるものと変わりない。


「いえいえ、これでも足りないぐらいですよ!」

「おれたちも手伝ったんだぜー!」

「こっちは私が作ったんだよ!」


 どうも村の規模とは釣り合わないような代物に見える。しかし、それに疑問を覚えているのはゲルデとクリルだけのようだ。村人の様子を見ても“勇者の為に無理をして準備した”感じではない。


「ずいぶん……豪勢、じゃな?」


「量はともかく、豪華さでは城での宴会を超えているかもしれませんね……。人間領では、この村ぐらい豊かなのが普通なのでしょうか?」


 クリルが思わず漏らした疑問に、近くに居た村人が答えた。


「そんなことはありませんよ。ここは本当に特別です。勇者様から教わった技術と、聖女様が掛けてくださった魔術。この村はその2つによって成り立っているんです」


 3人が話している間に、歓迎会は始まろうとしていた。村人達も、それぞれが木製のジョッキを手に取っている。ゲルデ達にもジョッキが渡され、ゲルデはエール、クリルはハーブティーをそれぞれ注いでもらった。


「それでは! 勇者様と2人のお客人に……乾杯!」

「乾杯!」「乾杯っ!」「かんぱーい!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ