Road. 8
「勇者様! こちらです」
案内された畑で3人が見た物は━━━
「イビルプラントか! 中々デカいな!」
「違う! アイン、植えたのは何だ!?」
「トマトです!」
「なるほど、トマトじゃな! …………トマト? トマトって、あのトマトか?」
━━━村の一画が巨大な植物に占領され、小規模なジャングルと化した光景だった。
「クリル、この村はこんなものを育ててたのか……?」
「いえ、私も初めて見ましたよ。なんですかコレ……」
物が物だけに気勢を削がれたゲルデとクリル。そんな2人にユートの忠告が飛んだ。
「呆れてる場合じゃねぇ! 早く対応しないと、村全体が飲み込まれるぞ!」
「なんじゃそれは! もはやトマトじゃなくて魔物じゃろ!?」
ゲルデの突っ込みは無視し、ユートはアインの方を向いて叫んだ。
「コイツは俺が伐る! 早くリミッターを掛けろ!」
「それが、魔法陣もアレに飲まれてしまって……」
アインの返答にユートは思わず頭を抱えた。しかし、状況を嘆いている暇は無い。クリルの声がユートの意識を引き戻した。
「……動いて、いや、成長している!?」
「……しゃあない。2人共、悪いけど手伝ってくれ! 手分けして地面に描かれた魔法陣を探すんだ!」
「お、おう。探せばいいんじゃな!?」
「分かりました! 微力ながら、お手伝い致します!」
◇◇◇
突発的に始まったトマト攻略戦。予想外の相手ではあったが、所詮は只の野菜である。特にアクシデントが起こることもなく、作業は進んでいった。
「不動の太刀・弐の型……『村時雨』!」
ユートが腰に提げた剣の柄を掴む。次の瞬間、抜刀する動作もないのに、幾重にも絡みあった蔦が切り刻まれて新たな道が拓かれた。
「……ったく、下手な魔物より質が悪いぜ」
◇◇◇
「流石に面倒じゃのう……。まてよ、別に魔法陣さえ見つければいいのではないか? ならば……『モード・レイス』」
ゲルデの体が、白い肌……を通り越し、背後が透けて見える程になる。
「うむ、やはりこっちの方が楽じゃのう」
フワリと浮き上がり、蔦をすり抜けて先へと進んでいくのであった。
◇◇◇
「そう言えば、これだって植物なのですよね。なら……通じるでしょうか」
クリルが呪文を唱える。彼女の足下が光りだし、その光はトマトの蔦へと移っていった。
「……!」
そしてクリルが静かに手を薙ぐと、蔦は独りでに動き、先に進むための道を作りだした。
「一部分で精一杯ですか。本調子には程遠いですね……」
◇◇◇
それぞれの方法で奥へと進み、3人はとある地点で合流した。
「あった! この魔法陣じゃな!?」
「このサイズでなんと複雑な……。まるで芸術作品ですね」
そんな2人には目もくれず、ユートは魔法陣の操作を始めた。
「アブゾーブリミッター、レベル6で十分か? 下げ過ぎてもアレだけど……ええい、レベル9だ! これで止まる、はずっ!」
魔法陣が効果を発揮するのに、大した時間は掛からなかった。