Road. 7
「ふう……。スマン。みっともないところを見せたな」
「いや、あれが普通だろ。特に今回なんて」
ユート達が居るのは、クリルが宿として使っている空き家の一室だった。
「それにしても……ゲルデ様が、勇者と共に行動しているとは思いませんでした。……大丈夫なのですよね?」
「ユートなら信用できる。根拠はないがな。そもそも、魔族というだけで襲ってくる男なら、頻繁にこの村に来るなんてことはあるまい?」
ゲルデの弁護もあり、クリルもユートのことは味方だと、一応は認めることにした。
「改めまして勇者殿。私はクリル。ゲルデ様の下で四天王を務めています」
「四天王……ってことは、魔王に次ぐ実力者……って認識でいいのか?」
ユートの認識は、この世界の人間と大体同じようなものである。
「あながち間違いでもないですが……私は強さで選ばれたわけではないので」
「力だけのバカばかり集めても立ち行かんからな。クリルは頭脳労働担当じゃ。とはいえ、並の兵なら軽くあしらえる程度の実力はあるぞ」
四天王の地位は伊達じゃない、というわけだ。
「で、クリルは何故この村に居たんじゃ? 城が落ちたときはブラナークで落ち合う予定だったはず。まあ、我も向かうことが出来なかったのは確かじゃが」
「はい。すぐに向かったのですが、途中で追撃を受けてしまって。応戦はしたものの、数の差もあってどうにもならず……。辛うじて撒いたところで意識を失い、次に気が付いたときには、この村で介抱されていた……といった具合です」
治療を受けてなお今の様子ということなら、彼女はかなりの深手を負っていたと考えられる。この村に辿り着いたのは不幸中の幸いといったところだろう。
「この村は近くに居る怪我人や病人なんかを引き寄せるらしいんだ。結界を張ったヤツ、アリアっていうんだけど、ソイツがいうには『誰も彼もを入れるわけにはいかないけど、近くの困っている人くらいは見つけやすいようにしてもいいよね』だとさ」
「面白いヤツじゃな。少し会ってみたくなったぞ」
「アイツはいつも忙しくしてるからな。今どうしていることやら」
よくよく考えると、人間側で追われているのがユートだけとは限らない。アリアもまた追われている可能性はあった。
「(ま、流石にないだろ。仮にも『聖女』なんだしな)」
そうして互いの状況を確認していると、慌てた様子のアインが3人の下にやってきた。
「ゆっ、勇者様! ちょっと来て頂いてよろしいですか!?」
「どうした!?」
「あの、畑が……」
「畑……? あ゛っ!」
2人のただならぬ様子に、ゲルデとクリルも身構えた。
「勇者に魔王に四天王だからな……。うっわ、想定しとくべきだったわ」
2人はその言葉に疑問を覚えたが、ひとまず飛び出したユートを追って問題の現場へと急ぐことにした。