Road. 6
ゲルデが傭兵達を軽く退けた後、アインの馬車をユートの能力で修理して、2人は彼の目的地まで同乗していくことになった。
「勇者様! もうすぐ村に着きますよ!」
「お、見えてきたか。ここに来るのも久しぶりだな。皆 元気にしてればいいけど……」
「……それは良いが、本当にここなのか? 我には只のだだっ広い平原にしか見えんのじゃが」
ゲルデの言葉から間もなく、馬車は平原のど真ん中で停止した。
「む? この気配は……結界か。随分と緻密に組まれておるな。近付くまで気配がせんかった」
「入口はこっちだ。ここからじゃないと村には入れないようになってる」
ユートに手招きされて、ゲルデも村へと入っていった。
◇◇◇
「勇者様、ゲルデ様、改めまして、私達の村へようこそ」
アインが帰ってきたことで、村人達も次々と集まってきた。必然、彼らは2人の客人の存在にも気付くのだった。
「勇者様、お久しぶりです!」
「ええ、お待ちしておりましたよ!」
「ユートお兄ちゃん、お帰り!」
老若男女、口々にユートを歓迎する言葉を口にする。そんな彼らを見て、ゲルデが思わずといった具合で疑問を口にした。
「なんじゃこの村……。人間と魔族が……共存している、というのか?」
「ああ、見ての通りだ」
そう話すユートは、左肩にはハーピーの子を載せ、右腕には人間の子をぶら下げて、といった格好になっていた。
「色々とあってな。その辺も含めて詳しく話もしたいし、一旦どこかで……」
ユートの言葉を遮るように新たな人物が現れた。
「騒がしいですね。何かあったのですか?」
その魔族の女性は、服を着ていても分かる程、全身に包帯が巻かれていた。魔族であることも、目に見える重傷を負っていることも、この村では然程 珍しいことではない。しかし、彼女を見たゲルデの反応は、他の村人を見たときと明らかに異なっていた。
「……いや、そんな。……クリル、か?」
「え? って……ゲルデ様、なのですか……?」
2人はしばらく呆然としていたが、我に返った途端、どちらからともなく駆け出すと、互いに抱きしめ合う。
「良かった。無事じゃったんじゃな……」
「はい、なんとか……。ですが………申し訳ありません。我々は、命を掛けてでもゲルデ様をお守りせねばならなかったのに……」
「なに……生きていてくれただけで十分じゃ」
この場において、2人の会話を正しく理解できているのはユートのみ。しかし、他の村人達も、彼女らによっぽどの事情があるということは感じられた。
「クリルにゲルデ……。勇者様と一緒だから別人かとは思ったけど。あの方ってやっぱり……」
村人の内、魔族の者の間で、そんな話が交わされた。2人の素性に何となく辿り着いたようだ。
「ま、おそらくは想像の通りだ。俺が勝手に話していいことでもないし、詮索は無しで頼むよ」
「はい。元々そういった者の集まりですし、その辺りは大丈夫でしょう」
ゲルデとクリルが落ち着くのを待って、その場は解散する運びとなった。