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転生先は灰かぶり  作者: 紗吽猫
番外編 サブイベント~百年前のその日~
162/166

第二十夜 ①

クリスタル学園。

将来、魔法使いになるために実力ある若者が集う名門中の名門校。


光の世界領内に位置するこの学園は、闇の世界側が侵攻してきた場合に最前線で戦うことも視野に入れてあり、その為、実践を交えた授業を行う魔法士養成学校とも言える。闇の世界との抗争はもう何百年と長きに渡り続いており、今、この時代にも大なり小なりの衝突は存在し、実際、境界線付近の魔物による被害や、魔女による被害があった場合、実力のある生徒が狩り出されることはしばしばある、そんな時代に、イオニコフ・メルエム=オーデルセン、ボクは生きていた。



☆★☆★



「はい、じゃあ今日はここまでー」


間延びした終業の合図とも言える教師の声と、学内に響くチャイムを皮切りに、生徒達がガタガタと椅子の音を立てて席を立ち始める。

ここ数年間、小競り合いのようなものは頻発していたが、大きな武力衝突のような闇の世界との衝突は起きておらず、学園内でも、少々平和な時間が続いていた。

休み時間となった教室では、様々な会話が繰り広げられていく。席に座ったままのボクは、適当に本を開いて読んでいる振りをしつつ、その会話に耳を傾ける。これも、ボクにとっては日課のようなものだった。


「おい聞いたか、また南部で魔女の被害あったらしいぜ」


「聞いた聞いた!結構な被害だったって」


「魔女かー……。同情しないでもないんだけどなぁ」


『魔女』が、元が人間の赤ん坊であることは、ほとんどの人間が知っている事実だ。そして、その赤ん坊が成長し闇堕ちした姿が『魔女』だということも、周知の事実。その救う方法も。


「それはさ、そうだけど、やっぱ許せないよね。殺していい理由なんかないじゃん?」


「そうそう。てかさ、さっきも授業で話あったけどさ、魔女を救う方法ってやつ」


「ああ、あれな。けどさ、無理じゃね?」


数人の男女が輪になってケラケラと喋っている。感情のない、消化するためだけのやり取りは日常の中でさほど珍しくもないわけだが、口をついて出る言葉も、その威力とは名ばかりと言わんばかりに時に、強烈な言葉を放つ。


「魔女なんか、愛せるわけないだろ!」


ガハハと大笑いしながら、彼らはそんなことを言っていた。


魔女は、元が捨てられた命。それ故に、人間自体を憎んでいる為、魔王から得た闇の力で人間を、光の世界に住む全てを襲う。

これは、復讐だ。傲慢な人間に対する制裁なのかもしれない、魔女にとっては。


確かに、そんな彼女達を愛することは、簡単ではないのかもしれない、とは思う。それでも、救う方法を知っているなら、それを使うべきだ、だってそうすれば一番平和的に解決していけるじゃないか、そう、思っていた。この時までは。



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