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転生先は灰かぶり  作者: 紗吽猫
イベント~春・クラス分けと模擬試験~
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第二夜 ④



「エラ、貴女も同じクラスで嬉しいわ。一緒に頑張りましょう」


そう笑顔で手を握ってきたのはリチア。隣にはキースが微笑ましそうにこちらを見ながら立っている。

エラも勝利を勝ち取ったこと、そして瞬発的に魔法を発動し、尚且つ的確に三つの風船を割った精密さが評価され落ちこぼれの落第生から一転、リチア達と並ぶ魔法学クラストップのSクラスへと昇格したのだ。


「え、ええ…頑張りましょう…」


…いや…全然嬉しくないんだけど…。Aクラスでも良かったのに…何もリチア達と同じクラスじゃなくても…。


エラは満面の笑みでこちらを見てくるリチアに対して少々顔をピクつかせながら作り笑顔でそう返した。


「ふぅ。今日は色々あったわ…。何だかとっても疲れたし…帰りましょう」


その日の授業が終わり、虐めっ子達が早々に帰路に着くのを見届けてから寮へ帰ろうと誰もいない教室を出たときだった。まるで待ち伏せしていたかのように廊下に立っている男がいた。


ズン…ッ!と立ち塞がるようにしてそこに立っていたのは…。


…漆黒の髪…だけど…肌は褐色の…この男!!!!


リチアやイオニコフ、キースよりも背の高い褐色の肌を持つ男。仏頂面でこちらを見下ろしてくるのは…。


…イドラ・ハンニバル!!!?


エラは驚くよりも先に後ろに飛び退いた。そうして距離を取ったのだ。

イドラ・ハンニバルは砂漠の国の出身で第二王子。留学生という身分でこの聖クリスタル学園に在籍している生徒でエラこと沙夜が最も苦手とした攻略キャラだった男。何せ口数も少なく、表情筋が死んでいるかのようにほとんど仏頂面で表情が変わらない。お陰で恋愛ENDを終えるまでに何度分岐をやり直したことか。


…何でこいつがここに?!てゆーか、確か、エラとイドラは相性がめちゃくちゃ悪かったはず!!!リチアの近くにいたがるエラをそれとなく遠ざけようとしたり、監視するような描写があったりとなんかとにかく扱い悪かった!!!


そんな奴とここで鉢合わせするとは思っても見なかった。もしかしたらシナリオにないところではこんな出会い方があったのかもしれないが…。


「…そこ、退いていただけませんか?寮へ帰りたいのですけれど」


エラは深呼吸をして彼に警戒していることがバレないように至って冷静に、普通を装ってそう言った。だが、彼からの返事はない。

思いきって彼の前にズイッと踏み込んで下から見上げてみたが、何の動揺も見られない。ただこちらを睨むように見てくるだけだ。

エラは小さくため息をついて彼の脇をすり抜けて教室を出て廊下の階段へと歩を進めた。幸い、無理矢理にでも足止めするかと思ったが彼はそこまでする気ではなかったようだ。

階段を降りようと一歩目を階段に置いた時、ふと背後に掛かる声が聞こえた。


「お前、何者だ?」


エラはそのままの状態で後ろを振り返る。そこにはバックの夕日に照らされてシルエットのようにも見えるイドラ・ハンニバルが腕を組みながら立っている。

彼は何か感じているらしい。この“エラ・エーデルワイス”に。だが、今の沙夜の記憶上、エラが警戒される程のポジションのキャラクターであったとは思えない。もしかしたら作中でイドラがエラに対して風当たりがキツかったのは彼女に感じる何かを彼が読み取っていたからかもしれない。

だとしても、今、ここで必要以上に警戒される覚えはないし変に攻略キャラと関わるべきではないだろう。それなら…。


「…何者だ、などととは失礼ではありませんか?しかも、レディに対してお前だなんて…。仮にも貴方は一国を担う王族の方。民にも尊敬されるべき振る舞いというものがありましょう。恥ずべき乱暴な振る舞いは慎むべきですわ」


…真っ向から受けてたってやる!!!!変に動揺すべきではない。堂々としているべき!!いっそ、笑うのよ!!


エラは背筋を伸ばして手を前で軽く重ねる。そして凛とした立ち姿で真っ直ぐにイドラの目を見つめ返した。




それからしばらくは両者睨み会いのような沈黙が続いたが、イドラはそれ以上何も言わずにその場を立ち去った。


「…厄介なのに目をつけられたわね…」


エラも寮への帰路につきながらそんなことをポツリと呟いた。




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