第十四夜 ②ー2
結末を知る二人はすっきりした顔をしているがリチアとキースは頭の上にハテナが飛んでいる。それにまだ疑問が残っていて、
「確かにそれは考えられることだが、それではどうやって学園に入学したと言うんだ?魔力持ちでも闇属性と知られれば拘束されるはずだ」
と、キースが投げ掛ける。一瞬、しんと静まり返った空間にふと声が宙から降ってきた。
『封印していたのさ、魔力をね』
ハッとした一同は部屋中を見渡して声の主を探す。キョロキョロと辺りを見渡すエラの背後からにゅっと手が伸びてきて抱きしめられる。当然、驚いてエラは振り向く。そこに居たのは…
「イオ様!?」
驚きすぎて声がひっくり返った。紛れもなくエラを背後から抱きしめるのはイオニコフだ。リチア達も驚いて声がひっくり返りそうになる。
「あんた…何でここに…!?」
絶句する面々の中でアイザックが絞り出すように叫んだ。
「イオニコフ様、一体どこから入られたのですか!?爺やは何も…」
キースが慌てた様子で廊下に出て確かめるが人払いをしておいた為誰もいない。正面から訪問してきたのなら爺やかメイドが耳打ちに来るはずだ。
「なに、転送魔法を使っただけさ」
サラリと言ってのけるイオニコフにキースはサーっと青ざめる。
「そんな馬鹿な…。この家の周囲には結界魔法が…」
「ああ、それなら大したこと無かったさ。それより、キミの言う結界は主に魔族に対する強化をしてあるんじゃないかい?人間に対する効果が薄いようだ。キミの家は重要な資料を保管しているんだし対策は万全に期すべきじゃないかい?」
エラを背後から抱きしめたままイオニコフはそう指摘した。その指摘に「人間に対しても効力はあるはずなんだが…」と呟いたキースは首を横に振って頭を切り替えて背筋をビシッと伸ばし応える。憧れの英雄イオニコフからの助言に喜ぶ反面、王国騎士団の家系として恥ずかしくもあった。
「はっ!!今夜にも対応致します!」
ビッ!と敬礼をしてキースは応えた。イオニコフはそれを見て満足そうに頷く。
「それで、イオ様はどうしてここにいらっしゃったんです?」
未だ抱きしめてきたままのイオニコフの腕から抜けるとエラは彼の方に体を向けてそう尋ねた。イオニコフは彼女が自分の腕の中から離れてしまったので少し寂しい顔をしたがアイザックのじとーっとした呆れた視線に気がついて肩をすくめた後、すぐに不敵な笑みに戻って答えてくれた。
「ギーウィがね、キミ達が集まっているようだと教えてくれたんだ。それで来てみたってわけさ。…ダメだったかな?」
「そんなことありませんよ!ねぇ、キース。イオ様もいらっしゃる方が話がまとまりやすいでしょうし」
ニコニコと話すリチアに呆気に取られた。まぁ実際のところ彼が現れたことは問題ではないし困ることでも無い。むしろ彼の持つ記憶や知識はあると嬉しいものだ。
この場の誰も異論を唱えることはなく、イオニコフも交えて話すことになった。