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日常から非日常へ
私が、今から長きにわたって話す出来事の結末は、皆さんにとって奇妙で納得のいかないものとなるかもしれない。
話の始まりは、いつものように大熊と私が公共事業の件で、島をまわっている時であった。
いつもならば、気にしていなかったことであったが、私は妙に気になったのである。
それは、廃墟となった小屋の扉が開いていたからである。
いつもならば、扉に釘を打ち付けてがっしりとしており開いていないのに、その日は開いていた。
目の前の奇妙な出来事を大熊にきいた。
すると、意外な返答が返ってきたのである。
「その廃墟ならば、解体が決まっているから、業者でも扉の釘を抜いたのであろう」
大熊は、このように答えたが、私は全く納得がいかなかった。
確かに、業者が扉の釘を抜いたのであるならば分かる。
しかし、この島で働く全ての工事の作業員であるならば、中途半端に現場をそのままにしていくだろうか。
私の疑問というモヤモヤは業務の終了時刻まで続いた。
それから、退社時間になり、私は例の廃墟へと向かったのであった。