御社ちゃんはガードが固い
御社ちゃんはとってもガードが固い。
「好きです。付き合って(内定)ください!!」
「ふーん、そうなの。じゃあ、その前に私の説明会に参加しなさい」
地方住みの僕は、東京の御社ちゃんのために夜行バスに乗った。
御社ちゃんは説明会に参加しないと選考に進ませてくれないんだ。
「説明会聞いてきたよ。話を聞いて御社ちゃんのことが好きになった!」
「なら、私への想いをESに書いてきてくれる。あと学生時代に力を入れたこと、自己PRもよろしく」
僕は何百文字にも及ぶESを書いて、郵送で送った。郵送代は意外とかさむ。
「ふむふむ、文法よし、内容よし。合格よ!」
「やった! じゃあ」
「あっ、その前に。このテストを受けてもらうわ」
御社ちゃんからSPIというテストをするように言われた。
問題を解いてる時には何の意味があるのか分からないけど、やらないと。
「お疲れさま。問題なさそうだし、合格」
「よ、よし。なら」
「合格したあなたには私の下僕(人事)の面接を受けてもらうわ!」
「ええっ。交通費とかは……」
「出さないに決まってるでしょ。私のことが好きなんでしょ?」
こうして僕は再び高い交通費を使って御社ちゃんの元に。
費やしたお金、これが他のことに使えたらなぁ。考えるだけ無益だけど。
「この下僕は通しても良いって言ってるわね。合格よ!」
「そ、そうなんだ。じゃあ」
「次はもうちょっと偉い下僕(人事&現場)部長との面接ね。頑張ってね」
「また!? も、もうお金が厳しくて……」
「しょうがないわね。今回は交通費くらいなら出してあげるわ」
もう一度、御社ちゃんに会いに行く。今度はお金の心配はなかったけど。
何度も何時間も東京に行くのは精神的に辛い。夜行バスだから背中も痛くなるし。
「お、終わった……おじさん相手だけど上手く話せてよかった」
「あら、この下僕も認めたのね。なら今回も合格よ!」
「良かったぁ。こ、今度こそ」
「じゃあ、最後に私のパパ(社長)と親戚(役員)との面接ね!」
明らかにボスキャラみたいなおじさんと、他数人の役員との面接。
今までとは一風変わった雰囲気で、どうも僕はこの人と気が合わなかった。
「ごめんね、私のパパが認めてくれなかった。今後のご活躍をお祈りするわ」
「…………」